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一つの場所に依存するのはリスク?「嫌われる勇気」より「嫌われてもいい環境」を作ろう

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論理的に話したつもりなのに相手の反応はイマイチ、感じよく話しているのになかなか相手の懐に入っていけない、適当でめちゃくちゃなことを言っている同僚のほうがなぜか人望が厚い気がする……

仕事でもプライベートでもコミュニケーション能力(コミュ力)が大事と言われているけれど、結局コミュ力って何のこと?

そんなコミュニケーションをめぐる疑問に応えたのが蔭山洋介(かげやま・ようすけ)さんの『なぜ、あなたの話は響かないのか』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)です。蔭山さんによると「こいつ何言ってるかわからないけど、協力しよう」と相手に思わせる力が「コミュ力2.0」と言います。

蔭山さんにコミュ力をテーマに4回にわたってお話を聞きました。

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「嫌われてもいい環境」を作ろう

——これまでは「コミュ力2.0」に必要な自分の価値となる土台をしっかり作りましょうというお話でした。そもそも自分が言いたいことを伝えるのは勇気がいると思うんです。まわりの目が気になって、嫌われるのが怖くて本音が言えないという人は多いと思います。

蔭山:嫌われるのもリスクです。ただ、本にも書いた通りこれを続けていると相手の言いなりにしかなれず、価値をやりとりするコミュニケーションは生まれないわけです。だから「嫌われてもいい環境を作ろう」ということですね。コミュニティをたくさん持つとか友だちがたくさんいるとか恋人も複数人いるとか……。

——一つの場所に依存しないほうがいいということですね。たとえ職場にわかってくれる人がいなくても、趣味の集まりに行けば自分の居場所があるよ……のような。

蔭山:「自立とは何か?」という話になったときに「自立というのは頼れる場所が一つだけじゃなくて、複数あることだよ」とよく言いますが、まさにそういうことですね。「嫌われてもいい」「首を切られてもいい」という状況がそうかもしれない。

だから、副業解禁というのはすごく重要で、月10万円でも本業とは別に収入が安定して入ってくるという状況はすごくその人の助けになるんですね。一か所だけで完全依存するというのは、「嫌われる勇気」は持てても、嫌われたらマズい環境なわけですね。だから「嫌われる勇気」より、「嫌われてもいい環境」のほうが重要です。

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——なるほど。よく自然の中に行くと、自分の悩みがちっぽけに見えるって言うじゃないですか。私も山に登るのでわかるのですが、自然の中に行くよりもいろいろところに場所を持っていたほうがいいのですか?

蔭山:それはまた別の話なんですが、鋭い指摘です。なぜ私たちは自然を見ると元気が湧くのか? なぜ自然を見ると自分の悩みがちっぽけに感じて、あいつが言っていることはショボいなと思うのか? 

もう少し言うと、9・11と3・11は、多くの経営者に大きな影響を与えているんです。いろいろなリーダーを作り出したと言ってもいい。例えば、うちのお客さんで、ニューヨークで9・11を体験して社長になった人がいます。大学生だったらしいのですが、こんなことをしていても仕方がないと思って辞めちゃったんですって。

——へえー。東日本大震災をきっかけにライフスタイルが変わったという話はよく聞きます。

蔭山:社会の枠組みの中にいると、社会の枠組みの中で一生懸命仕事を回すことを考えちゃうんです。社会の歯車のイメージです。歯車を一生懸命やっていると、小さなトラブルがすごく大きなことのように思える。でも、社会の外側に立って、自分を見つめると、そのトラブルがすごく小さなことだったことに気が付きます。

自然は、社会の外側に存在しているものなので、そういう物に触れると自分の問題が相対的に小さく感じられるはずです。だから、3・11のような、社会が織り込んでいない大きな出来事に触れた人も、「この社会の枠組みからいつでも出ていいんだ」と悟って、生き方が根本的から変わってしまうことがあるんだと思います。

——社会の枠組みか……。

蔭山:うん。前々回、元気な人が魅力的だという話をしましたが、本当は我慢できなくて暴れまわりたい気持ちで仕事をしているやつが強いんですよ。だって、どんなことが起こるのか分かりきっている社会の中で、原稿を書いていてもつまらないじゃないですか。もっとわけわからないことをやりたくないですか?

——それはちょっとわかります。時代の枠組みを超えてめちゃくちゃなことをやっちゃっているような人に憧れます。伊藤野枝とか……。

蔭山:でしょ? 社会の枠組みに飼われている自分、鳥かごの中にいる自分ってやっぱりしょぼいんですよね。経営者とかアーティストって、大概そうで、我慢できないからやっているだけですよ。

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「好き」というよりも我慢できないからやっちゃう

——好きだからじゃなくて?

蔭山:好きっていうか、我慢できないに近いんですよ。好きでやっているっていうふうに転換して僕は時々しゃべるんですが、本音で言うと、好きなんて強度が弱すぎてやってられないですよね。「好き」なんか続くわけないじゃないですか。それは嫌いでやっているより、好きでやっているほうが続きますよ。でも、本当はやらざるを得ないからやっているっていう。

——もう止めなさいって言われても、親に隠れてゲームとかやっちゃう感じですか?

蔭山:そうです。「そんなことやって何になるの?」って言われても、「知らないよ、やるんだから」っていうだけの衝動のほうが強くて、大概のことはそれで動いています。だから衝動がある人は、それに従っていればいいんじゃないですか? と。

あと、社会的にやらざるを得ないっていう人もいますよね。例えば、親が歌舞伎役者だったら生まれながらに歌舞伎役者をやらなきゃいけないわけで、好きとか嫌いとかじゃないですよね。

——同級生にも家が医者だから何が何でも医者にならなければいけないという子が結構いましたね。

蔭山:その場合は、自分を変えて好きになるしかない。だから「好き」というのは、続けていく上でストレスを免除していくための装置なんですけれど、ないよりはあったほうが有利なんですね。

しかし、本音を言うと、好き程度ではまったく太刀打ちができない。それくらいしんどいことをやらないと、成功なんてしないから。でも、それを言うと結構過酷なので、表面上のところは「好き」が大切ですよといつも言っています。

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ちょっと話すとみんな変

——やっちゃう衝動って、みなさんどこかに絶対あるものなのでしょうか? それとも、ある人もいるし、ない人もいるんですか?

蔭山:「ひょっとしたら、ない人もいるかもね」というくらい、みんな何かは持っていると思います。だいたいどの人も、男の人も女の人も、ちょっと話すと頭がおかしいと思うわけですよ。変だなって。その変な部分を伏せて、社会の中でうまく使える部分だけを使って生きているわけですが、変なほうを武器にしたらいいんじゃないの? とは思いますけどね。

——自分の中の変なところやどうしてもこだわちゃう部分を認めてそれを出せるようになるといいですね。みんな抑えちゃうじゃないですか。

蔭山:抑えないと生きられないからね。社会はそういうのをはじく仕組みを持っているから、それを表に出してくるやつをはじいちゃうんですけれど、でも今の時代、そっちで生きてもある程度生きられますよね。

今後50年かけて、確実にそっちが強くなりますよ。組織に馴染んで順応していく生き方しか許されなかった時代から、許される時代に。だから、Windows95のインターネットが登場してから、個人が解放されてきているじゃないですか。

その手前の世界だって1950年、1960年からの全体主義的な社会から、個人主義的な社会にずっと向かってきていて。だから、旧来の個人に対して抑圧的な文化に反発する形で、例えば「#MeToo」がぶつけられたり、ボクシング協会や体操協会の告発のような形がどんどん社会に溢(あふ)れてくるんですよ。多分、この流れのまま進んでいって、巨大なもので押さえつけるというのは衰退していくでしょうね。個人が活躍する時代が来るはずです。

——そんな時代を生きるための「コミュ力2.0」ってことですね。ありがとうございました。

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(取材・文:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)

情報元リンク: ウートピ
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