新年度前からリモートワークになり、仕事の内容は新しくなってとまどうことが多い中、外出も自粛でリフレッシュができないという声を耳にします。臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長によると、「憂うつ感が続いて食欲がない、胃が重苦しい、下痢と便秘をくり返す人が増えています。ストレスが原因でこうした不調が現れることはよくあります」ということです。
そこでこの機会に、ストレスの実態や原因、症状、セルフケアや予防法について考えようと、連載にて詳しく聞いてみました。
ストレスで自律神経のバランスが乱れて心身に不調が現れる
ストレスの実態とはいったいどういうものなのでしょうか。正木医師ははじめにこう説明をします。
「天候や環境、また不安や心配ごとなど、我々が受けるさまざまな刺激をストレッサーと呼びます。プレッシャーとも言えるでしょう。そうした刺激を強く受ける、あるいは持続的に受けると、ヒトの心身には何らかのゆがみが生じます。これがストレスです。実態がなく感情的、感覚的なもののように思うかもしれませんが、自分にとってのストレッサーと心身のゆがみである不調を具体的に見つめると、正体がわかってくるでしょう」
ストレスを受けると精神や体に不調が現れるのはどうしでしょうか。
「自律神経のバランスが乱れるからです。ヒトの呼吸や体温、心拍、血圧など、呼吸器、消化器、循環器の活動は、自律神経がつかさどっています。この神経は自分の意思ではコントロールできず、眠っている間も24時間働き続けています。
自律神経には運動時や緊張時など体が活発に動いているときに働く交感神経と、安静時やリラックスしているときに働く副交感神経の2つがあり、この2つがバランスを保つことでヒトは健康に過ごすことができます。
ところが、この2つの神経のバランスが乱れると、体に多くの不調があらわれます。とくに、ストレスがあると緊張が増し、交感神経が刺激される時間が長くなってリラックスできなくなります」(正木医師)
ストレスは体、精神、行動に影響が出る
具体的には、どのような症状があらわれるのでしょうか。正木医師はこう説明を続けます。
「ストレスは、体、精神、行動に影響します。交感神経が優位になり続けると、心拍数が上がって心臓がどきどきする、血圧が上昇する、また消化は抑えられるので胃痛や胃重感、便秘、下痢、吐き気を引き起こします。
また、自律神経のバランスが乱れると、肩こりや頭痛、腰痛、めまいや立ちくらみ、ふらつき、耳鳴りなどが現れることがあります。
それに、交感神経が刺激され続けていると、うまく副交感神経に切り替えることができなくなり、緊張や興奮でなかなか寝つけない、夜中や朝早くに目が覚める、眠気がとれないなどの睡眠障害を引き起こします。
精神面での症状では、自律神経の乱れによって、気分が落ち込んだ状態が続く、憂うつ感、不安感、緊張感、焦燥感などが現れます」
症状が多岐に及んでいて、とてもつらいと思います。行動にはどう影響するのでしょうか。
「症状は個人差が大きいのですが、日ごろから弱いところが悪化する傾向もあります。こうした不調があると、仕事や日常生活にも影響が及びます。しんどくて注意力が低下する、集中力が続かない、普段はしないミスをくり返すなどです」と正木医師。
有事に普段と違う生活を送ることは大きなストレス
では、どのようなことがストレスの原因になるのでしょうか。正木医師はこう指摘をします。
「最初にお話ししたように、ストレッサーとは、まずは天候や環境です。猛暑、極寒、寒暖差や、いまのご時勢のように感染症の流行、地震や水害などの天災が挙げられます。すべての人が不安や緊張を感じるでしょう。
また、何らかの病気、過労、職場が変わったなど環境の変化、人間関係の悩み、仕事でプレッシャーを抱えているなど、心配ごとが続く場合の精神的な負担は、多くの人が体験しているのではないでしょうか。
さらに、いまのように有事で普段とは違う生活を送る、外出ができない、リフレッシュが難しいなどの環境下では、睡眠不足や食生活の乱れ、昼夜逆転など生活リズムの乱れが続くこともあるでしょう。大きなストレスとなります」
体調不良が続く場合について、正木医師は次のアドバイスを加えます。
「お話した症状に思いあたる場合は、ストレスによる不調かもしれません。自分の生活や悩みごとの有無などを見つめ直してみましょう。もし不調が2週間以上も続く場合は、早めに状態に適した医療機関、例えば、内科や精神科、心療内科を受診しましょう。かかりつけ医がいる場合は、いま電話やオンライン診療を実施している場合がありますから、遠慮なく問い合わせてください。当院も、電話診療を実施しております。
有事のいま、期間限定ですが、初診でも電話診療が可能な医療機関もあります。ホームページで探しましょう」
【リンク】厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について
憂うつが続き何やら体調が悪い場合は、ストレスがたまっている可能性があるということです。普段通りの自分ではなく、どうもおかしいなと感じた場合は、ストレスがあるかどうか、またストレッサーは何かを考え、不調の原因を明確にする機会としたいものです。
次回は、ストレスを予防、対策する方法を紹介します。
(構成・取材・文 藤原 椋/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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