風邪やインフルエンザで激しくのどが痛む、またイガイガして唾(だ)液を飲み込むことすらつらいときがあります。そんな痛みは少しでも早く緩和したいものです。
そこで、耳鼻咽喉科専門医でとおやま耳鼻咽喉科(大阪市都島区)の遠山祐司院長に尋ねたところ、「のどの痛みは、細菌やウイルスの感染のほか、乾燥や大声、声の出しすぎなど多様な原因で生じます。初期ならセルフケアで改善することもあるので、そのために適切な方法を知っておくとよいでしょう」ということです。
詳しいお話を聞いてみました。
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のどの痛みは粘膜の炎症。乾燥で悪化する
はじめに遠山医師は、のどの痛みの原因についてこう説明をします。
「まず理解しておくとセルフケアに役立つと思われるのは、のどの痛みの正体は粘膜の炎症だということです。細菌やウイルスの感染が原因となることは間違いありませんが、大声で長時間話す、歌うなど発声の過多や、お酒やタバコ、香辛料のとりすぎによってのどの粘膜がダメージを受ける場合も多いのです。そして、何よりも注意したいのはのどの乾燥です」
のどの乾燥が痛みにつながるとは、気になります。遠山医師は次のように説明を続けます。
「のどの粘膜には、線毛と呼ばれる細かい毛がすきまなく生えています。線毛は、のどに侵入した異物をキャッチしてたんとともに体の外へ排出する「線毛運動」をくり返しています。
線毛の動きは乾燥すると鈍くなり、ほこりや細菌、ウイルスなどが体内に入りやすくなって炎症やイガイガした不快感を引き起こします。すでに炎症を起こしている状態でさらに乾燥すると、痛みは悪化します。とくに、冬は空気が乾燥していて風邪の流行シーズンでもあるので、適切なケアを行いましょう」
お酒、熱い飲み物→NG、お茶でうがいはOK
ここで、のどの痛みによいと世間でうわさされる方法について、はたして効果はあるのかを遠山医師に聞いてみました。
「患者さんから自分でしていると聞く方法は効果がない場合も多いです。かえって痛みを助長することがあるので注意してください」と話す遠山医師は、次のポイントについて指摘をします。
(1)ネギを首に巻く→×
民間伝承として実践している人もいるようですが、その理由は、ネギに含まれるアリシンという成分が血流や胃腸の働きを促し、殺菌作用もあるとされるからでしょう。
ただし、首にネギを巻いてもアリシンが皮膚から吸収されるわけではないため、その効用でのどの痛みが改善することはありません。むしろ、ネギを巻くと首が冷えて血流が悪化し、のどの炎症が治りにくくなる可能性が高くなります。
ネギは首に巻くのではなく、食事に少量を取り入れるとよいでしょう。大量だと刺激が強くて胃腸に悪影響を及ぼすことがあるのでこれも注意をしてください。
(2)アルコール度の高いお酒を飲む→×
ウイスキーやウォッカなど度数の高いお酒はのどの消毒になるという話しを耳にしますが、間違いです。むしろ、アルコールがのどを刺激して痛みが悪化することがあります。
また、アルコールは体内の水分の排出を促すので脱水症状を起こしやすく、のどが乾燥して炎症がひどくなる可能性もあります。のどが痛むときは、度数の低いお酒も避けてください。
(3)熱い飲み物でのどを温める→×
熱い飲み物を飲むと一時的にのどが温かくなりますが、温度が下がると血管が収縮して血流が悪くなる、のどに負担がかかるなどで炎症が悪化します。のどが痛むときは、ひと肌程度の温度の飲み物がよいでしょう。
(4)お茶でのうがい→〇
お茶に含まれるカテキンという成分には殺菌作用があります。お茶でのどを潤すと風邪をひきにくいと言えるでしょう。とくにカテキンが多く含まれている「緑茶」でうがいをするとよいでしょう。
声を出さない、鼻呼吸で保湿、保温を
のどの痛みを和らげる方法として、遠山医師はこうアドバイスを加えます。
「大声を出さない、声を出すのを控えて、のどの保湿、保温を第一に心がけましょう。のどが潤うと、先ほどお話しした線毛の運動が活発になり、また、のどを温めると傷ついた粘膜の血流が良くなって炎症が緩和されます」
そのためにどうすればいいかについて遠山医師は、次のように具体例を挙げます。
「のどを保湿するには、のどが乾く口呼吸よりも、口を閉じて鼻呼吸を増やすように意識をしましょう。そして、十分に水分をとってください。空気が乾燥しやすい冬は、室内では加湿器を使用し、マスクも着用するとよいでしょう。マスクをすると自分の呼吸でのどを潤すことができます。
また、のどがイガイガするときには、飴やガムを口にして唾液の分泌を促しましょう。口の中やのどが乾いたと思っても、デスクワーク中などで飴や飲み物をとれない状況のときは、次のことを試みてください。唾液が出やすくなるでしょう。
・舌の先で、歯ぐきの裏と表をぐるぐるとなぞる。
・指先でそっと、耳の下からあごまでのフェイスラインをなでることを3~5回くり返す。
・梅干しやレモンなど酸っぱいものを食べることを想像する。
保温法としては、のどは直接温めることはできないので、首が冷えないようにタートルネックやスカーフ、首ウォーマーを着用し、外出時にはマフラーをしましょう。また、屋内でも屋外でもマスクは必須です。さらに、夏も冷房の冷えには注意して、羽織物を持ち歩くといいでしょう」
最後に、受診のタイミングについて、
「のどのつらい痛みが3日以上続く、痛みが徐々に増してきた、声が出ない、水分や唾液が飲み込めない、のどに妙な違和感がある、発熱や痰をともなう場合は、急性咽頭(いんとう)炎や扁桃(へんとう)炎、また何らかの感染症の場合もあります。がまんをせずに早めに耳鼻咽喉科か内科を受診しましょう」と遠山医師。
のどの痛みを和らげるポイントは保湿と保温であり、よく耳にする伝承のケア法には間違っていることが多いということです。これらの情報を知っておき、唾液の分泌を意識しながら、つらいのどの痛みを早めにケアしたいものです。
(取材・文 成田亜希子・藤井 空/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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