性交経験のないまま結婚し、“性交渉をしない妊活”をはじめた主婦のうなぎさん。その日々のことを綴ったブログをまとめたコミックエッセイ『奥さまは処女』(光文社)が2月25日(木)に発売されました。
「なんで私は“普通”のことができないの?」と葛藤を抱えていたうなぎさん。でも、“普通の妊娠”って何だ? “普通”じゃなくちゃいけないの?
そんな疑問を携えて、生殖心理カウンセラーの平山史朗さんと、妊活のモヤモヤについて語り合っていただきました。全4回の連載の第2回です。
シリンジ法キットの情報が少なくて…
——うなぎさんは、シリンジ法の妊活を始めたときに、何か参考にされたりしたんでしょうか?
うなぎさん(以下、うなぎ):それが、ブログやSNSでも「シリンジ法で授かりました!」って大々的に発信している人がいなくて。シリンジ法について書かれた本もありませんでしたし、自分が実験台みたいな気持ちでやっていました。
——シリンジ法キットを選ぶ際は、大きさとかも考慮して?
うなぎ:私が探したときは、Amazonで売ってる20本入りの商品しかなかったんです。それがすごいご立派なやつで……。
平山史朗さん(以下、平山):うなぎさんからすると、ちょっと怖いですよね。膣の緊張が高い方を指導するときには綿棒のような非常に細いものから入れられるように練習する場合もあるくらいですから。
「ひとりで」性液を採取とは?
——シリンジ法キットを実際に使ってみて、不安に思ったことや疑問に思ったことはありましたか?
うなぎ:説明書には「精子が液状化すると(スポイト状の器具に)吸い込みやすくなるので、10分くらい置いておいてください」と書かれていたんですが、一方で精子って乾燥に弱いじゃないですか。どのタイミングがベストなのか迷いました。採取してすぐがいいのか、液状化してからのほうがいいのか。
平山:人工授精するときって、性液を液状化させるために30分から1時間程度は置くんですよ。
うなぎ:そうなんですね。あと、シリンジ法キットの説明書や、医師がすすめるシリンジ法のホームページとかに、「男性がひとりで精液を採取し……」みたいなことが書かれていたんですが、「ひとりで」って重要なんでしょうか? パートナーがお手伝いをしてしまうと、他人の汗とか異物が混入するとか、そういうことでしょうか?
平山:「ひとりで」というのは「マスターベーションで」という意味かと思います。感染症にさえ気をつければ、パートナーのお手伝いがあっても、もちろんいいと思います。ふたりで子づくりのために努力してるという実感も持てますしね。
うなぎ:そうだったんですね。気になっていたので、スッキリしました!
婦人科やカウンセリングに行くハードル
——シリンジ法は、何回くらい試したんですか?
うなぎ:妊活期間1年10カ月のうち、1年1ヵ月がシリンジ法にチャレンジした期間で、計30回くらいですね。月に2、3回のペースです。
平山:排卵予測日は、クリニックで診てもらっていたんですか?
うなぎ:1回だけ診てもらったんですが、それ以外はアプリで記録したものを参考にしていました。
——クリニックで排卵予測日を調べてもらうには、注射したりホルモンチェックとかしてもらったりと負担が大きいですよね。
うなぎ:そうなんです。だから私はあまりクリニックに行ってなくて。
平山:日本の女性にとって、婦人科に行くこと自体がものすごくハードルが高い現状をどうにかしたほうがいいですよね。
うなぎ:カウンセリングもそうだと思います。私はたぶん、悩んでいる当時にカウンセラーさんの存在を知っていたとしても行けなかったと思います。初めて会う人と性の話をするなんて無理です……。
平山:性の話ってかなりプライベートなことなので、なかなか難しいとは思います。日本の性教育が遅れていることも大きくかかわってきますしね。本当に難しいところです。
タイミングは人それぞれ
——言い方がぶしつけで申し訳ないのですが、「道具で妊娠していいのだろうか」みたいな気持ちはあったりしましたか?
うなぎ:それはまったくなかったです。私が始めた時点では、「もうこれしかない! なんてすばらしい道具なんだ!」って思っていました。実は、シリンジ法自体はブログを始めた当初から知っていたのですが、そのときはまだ「性行為の経験不足をなんとかしないと……」という思いのほうが先にあり、シリンジ法について詳しく調べることはなかったんです。“シリンジ”って、名前もなんか実験器具みたいで怖そうですし(笑)。
でも、うまくいかないことが続き、改めてシリンジ法を調べたら、本当にすばらしい道具だと思えたんです。自分の経験から、「やりどき」「(心に)刺さるとき」っていうのが人それぞれあると思うので、そのときにやるのが一番いいかなって思います。
最終回は2月28日(日)公開予定です。
■TENGAヘルスケアのシリンジパック「Seed in」発売記念で、平山先生が妊活コミュニケーションについて語った記事はこちら(外部リンク)
(構成:須田奈津妃、編集:安次富陽子、取材協力:TENGAヘルスケア)
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情報元リンク: ウートピ
シリンジ法は怖くなかったですか? 『奥さまは処女』の著者の場合