10月7日、国際NGOプラン・インターナショナル主催による無観客トークイベント、「THINK FOR GIRLS/コロナ禍の女の子たちのために私たちができること」がTwitterとInstagramでライブ配信されました。
本イベントにゲストで登壇したのは、スプツニ子!さん(アーティスト・東京藝術大学デザイン科准教授)と大崎麻子さん(国際協力・ジェンダー専門家)です。
新型コロナ感染症という世界共通の課題に直面し、国や地域の枠を超えて大きなターニングポイントとなった2020年の国際ガールズ・デーを目前に、コロナ禍における女性の現状やアフターコロナの時代における女性の可能性、私たちができるアクションについてトークを展開しました。
ジェンダー専門家が「デジタル」に感じる可能性
大崎:10月11日は国際ガールズ・デーです。今年はコロナ禍の影響を抜きに語ることはできず、現状とともにアフターコロナを考えていく上では「デジタル」は必要不可欠なテーマだと思っています。このテーマにこれ以上ふさわしいゲストはいらっしゃらないのではないでしょうか。スプツニ子!さんです。
スプツニ子!:ありがとうございます。私は個人的に国際NGOプラン・インターナショナルも応援しているので、(過去に理事を務めた)大崎さんとお話できるのが光栄で、今日はとても楽しみです。
大崎:いま日本国内はもちろん、世界中でコロナ禍における影響の様々な調査が行われています。その中で、女性や女の子に対する負の影響が大変大きいことが明らかになってきているんです。
私はジェンダーを専門に扱っているので、それらの調査レポートを読むわけですが、気が重たくなります。その一方で、デジタルという新たな技術が女性の将来設計やエンパワメントに貢献していく可能性を秘めているような気もしていて。
今日はそういう点でスプツニ子!さんにいろいろとお話を伺いたい。今回はイベントのハッシュタグ「#女の子だから」で事前に意見を集めているのですが、印象的なコメントなどはありましたか?
スプツニ子!:見ていて悲しくなるようなコメントがたくさんありましたね。「女の子だから大学に行かなくていい」とか、「大学院はもってのほか」「女の子だから数学はいらないと言われた」とか。
興味深いなと思ったのは、「女の子だからおしゃれが楽しめる」とか「女の子だから一家の大黒柱にならなくて済む」とか「女の子だから自由にいろんなことができる」という一見ポジティブに見えるコメントです。
これって、結局はジェンダーロールの裏返しなんですよね。男の子だってオシャレをしたい子はいるだろうし、男の子だって一家の大黒柱にならないといけないみたいなプレッシャーがあるだろうし。
私自身は、「女の子だからこうあるべき」とか「男の子だからこうあるべき」みたいなものにとらわれずに平等にチャンスがある世界が理想だと思っているので、これらの意見を見て、ちょっと考えてしまいました。
「女性だから…」社会の声は無視していいんだよ
大崎:スプツニ子!さんは大学で理系専攻でいらっしゃいました。進路でご両親に何か言われたことはありましたか。
スプツニ子!:一切ありませんでした。私の母は高校生の頃に大学で数学を専攻しようとして先生に「女性に数学は向いていない」と言われて、そういう悔しい思いがあったからこそ数学部を首席で卒業して、研究者になり大学の教授になったような女性です。
なので、母は私に「女性だからできないみたいなことを社会に言われるかもしれないけど、ぜんぶ無視していいんだよ」と言ってくれました。そういう意味ではすごくラッキーだったと思います。
大崎:私の両親もリベラルな考え方をする人たちでした。大学を卒業したら結婚すると言った私に対して、母は「昔は大卒女性は就職できなかったが、今は男女雇用機会均等法もできて可能性が広がった。それを自分で潰すのか」とすごく反対したくらいです。
圧倒的に女性が少ないコンピューターサイエンスの領域
大崎:スプツニ子!さんは、ご家庭ではジェンダー・バイアスが壁になることはなかったそうですが、実際に大学に入ってみて男女比率などはどうでしたか。
スプツニ子!:圧倒的に女性が少なかったですね。イギリスの大学に通っていたのですが、コンピューターサイエンスのクラスは100人中9人しか女の子がいない状態。当時はグーグルやフェイスブックなどいろんなサービスが世界を大きく変えていて、プログラミングや人工知能は重要な位置を占め始めていました。
そこに関わる人はこれから世界を変えていく上で非常に重要なのに、これだけ女性が少ないのってヤバいんじゃないか、というのは大学1年生のときに感じていました。そこで抱いた危機感を原動力に、アートや音楽を作り始めたという経緯があります。
大崎:在学当時はそういう比率だったということですが、今はどうなんでしょう。
スプツニ子!:入学当時と比較すると増えているみたいです。それでも比率としては男性が多く、女性はまだまだ少ないな、という印象ではありますが。
大崎:そこへの問題意識は持たないといけないですね。かつては女性が直面する問題は、「女性問題」として捉えられていたので、「女子教育」や「女性の起業支援」など、解決策も女性に特化した形で考えられていたのですが、それでは未来永劫格差は縮まらない。
男女間の力関係や性別役割分業を含め、ジェンダーに着目すべきなんだということが国際社会の共通認識となり、1995年に「ジェンダー平等」が国際社会共通の目標となりました。その25周年が今年なんです。
スプツニ子!:そうなんですね。
大崎:今年はこのイベントも史上初のオンライン会議となりました。このように様々なプラットフォームもオンライン化しているという現状があるので、今のお話を聞きながら、やはりサイエンスやテクノロジーの分野に多くの女性も参入していくことは重要だと感じますね。
(構成:園田もなか、編集:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
コロナ禍の女の子たちのために私たちができることって?【国際ガールズ・デー2020】