好きな相手に「貢ぐ」という言葉を聞くと、どのようなイメージをもつでしょうか。
恋人の生活費を丸っと負担してしまったり、高価なブランドものを贈ったり、もしくはホストに何千万とお金をかけてしまう、そんなちょっと「非日常」的な行為を想像するかもしれません。
9月21日21時から放送のAbemaTV「Wの悲喜劇 〜日本一過激なオンナのニュース〜」では、「私“ヒモ男養成”ギプスです」と題して、貢いだ経験のある女性をゲストに呼び、そのエピソードが語られます。そのゲストのひとり、作家の森美樹さんはちょっと特殊な「貢ぎ」の経験の持ち主。
実は貢ぐ行為は私たちの日常の地続きのところにあるかもしれない……。そう感じてしまうお話を森さんに伺いました。
貢いだお金は2万円
——まず、貢いだ総額について聞かせてください。
森美樹さん(以下、森):2万円です。もう10年以上前の話なんですけど、私が30代後半で、彼がたしか28歳くらいでした。1年近く付き合っていた彼とある日電話がつながらなくなって理由を聞いたら「携帯代を払ってなくて止められている」と。それで私が「これで払いなさい」と彼に2万円を渡しました。でも、そのお金を渡した瞬間に気持ちがなくなってしまって、翌日には一方的に電話でお別れをしました。
——え、2万円……?
森:「貢ぐ」と聞くと、大金をイメージしますよね。私も番組出演のオファーが来たとき、私でいいのかなと思いました。でも、番組のプロデューサーいわく「いかにもな貢ぎ方じゃないのがいい」と。
——「いかにもな貢ぎ方じゃない」というのは、総額が2万円である、という点ですよね。
森:はい。他のゲストの方々は、まさに大金を貢いでいる女性だったので、ちょっと次元が違うよな、と感じましたね。
——それくらい貢ぐ女性のお話を聞いて、どう感じましたか。
森:素直に、潔くて格好いいな、と思いました。私、別れたあともずっと「2万円しか貢げなかったのか」とモヤモヤした気持ちを抱えていたんです。もし思い切りお金を貢ぐことができていたら、もっとさっぱりした気分になれたかもしれない。
大金を貢げるというのは、それが返ってこないことも承知で、かつ自分自身の稼ぎがあるから出来るわけじゃないですか。他人に迷惑のかからない範囲なら、好きなだけ貢いでいいと思うし、そういう人の器の大きさを羨ましく感じてしまいます。
「付き合おう」の直後に「バス代がない」
——ちなみに、森さんとその男性はどのように出会ったのですか。
森:SNSの地域コミュニティで知り合って、その後ふたりで二回ほど飲みに行って付き合うことになりました。ただ、告白された日の夜、帰りのバスに乗ろうとしたら「バス代がない」って言うんです。私はまだ告白の返事をしていない段階で、「付き合おう」と言った舌の根が乾かないうちに、はっきりとは口にしないけどお金を求めてきた。210円を渡したけど、後日返ってくることも、それに触れることもありませんでした。
——それでも彼と付き合うことにしたんですね。
森:違和感はありました。ただ、相手と8歳も年齢が離れているから、ジェネレーションギャップなのかな、という気もして。私がケチなだけなのかな、とか。容姿も好みだったし、年下と付き合ったこともなかったから、半ば冒険のような気持ちですね。
——付き合ったあと、相手の言動に違和感を抱くことは他にもありましたか。
森:たくさんありました。たとえば、相手は絶対に私を家に入れてくれないんです。彼はバツイチで奥さんとお子さんに出て行かれたことがあり、「君を家に入れたら帰したくなくなって辛い」と言われていました。だから基本は私の家。
私の家に来ると料理は作ってくれるんですけど、材料代はすべて私が出すんですね。ふたりでスーパーに買いに行っても、お会計のときにはいなくなってしまう。袋詰めのときに戻ってきて、値段は聞くけど「意外と安かったね」で終わり。
——それは天然なのでしょうか、わざとなのでしょうか……。
森:それは最後までわかりませんでした。ただ、そういうのが許されていると思っている態度は、ずるいなあと思いましたね。私は年上だったこともあり、なんだか自信もなかったんですよ。若い女の子じゃなくてごめんね、みたいな謎の申し訳なさがあったから、つい相手の言うことばかり聞いてしまっていた。
携帯代を渡したとき「この人は変わらない」と思った
——何かおかしいなと思いながらも、自信がないからハッキリ言えない。その状態で付き合っていた森さんは、でも2万円という額で相手との縁を切ることができたんですよね。その心境の変化は何があったんですか。
森:いまの主人とすでに出会っていた、というのは大きいです。それまでは、恋愛経験も多くはなかったし、この人と別れたらもう次はいないとまで思っていました。でも、いまの主人と知り合って話をしていくうちに、自分が当たり前だと思って我慢していたことが当たり前じゃないと知った。目から鱗がポロポロと落ちていく感じがしたんです。
それまでは「私がこの人をなんとかしないと」と思っていたし、変わってくれるかもと期待していた部分もあるけど、携帯代を払うときに「この人はずっとこのままなんだな」と思ったら冷めてしまって別れに踏み切ることができました。
——視野が広がったことで決断に踏み切れたんですね。
森:彼との1年は楽しいこともあったんです。ただ、そうやって自分を納得させようとしているところもありました。楽しい一方で、小骨のようなものがずっと喉に刺さっている。その状態で付き合い続けるって、やっぱり苦しいです。
——彼との付き合っていた時期は、あまり思い出したくない記憶ですか?
森:いや、むしろ勉強になったなとポジティブに捉えています。結婚前に世間を知れてよかったし、むしろ彼には感謝していますね。いい思い出もありますし。それまではヒモ男と暮らすとか、ホストに貢ぐとか、結婚詐欺とか、自分とは全く縁のない話だと思っていたんです。
でもいざ自分の身にこういうことが起きると、この関係性の延長線上にあるのかもしれないと思えるようになりました。たった2万かもしれないけど、そこから歯止めがきかなくなって、何十万、何百万と貢ぐハメになっていたかもしれない。貢ぐという行為はけっこう日常に潜む落とし穴のようなもので、決して遠い世界のものではないと思うようになりました。さらに、だれかのためにお金を使うって、気持ちがいいんですよ。
■番組情報
男子は見なくて結構!男子禁制・日本一過激なオンナのニュース番組がこの「Wの悲喜劇」。さまざまな体験をしたオンナたちを都内某所の「とある部屋」に呼び、MC・SHELLYとさまざまなゲストたちが毎回毎回「その時どうしたのか?オンナたちのリアルな行動とその本音」を徹底的に聴きだします。
#79「私“ヒモ男養成”ギプスです」
視聴予約
(取材・文:園田菜々、撮影:青木勇太、編集:安次富陽子)
- ママ活が成立する“性秩序なき”時代背景…だと!?
- ハマると地獄のセフレ沼…なぜ苦しいの?【桃山商事・紫原明子】
- 恋愛の「おいしいとこどり」がしたい。紫原明子と桃山商事がNEO恋バナ
- 元カレがくれたもの、今どうしてますか? 働き女子に聞いてみた
- モラルから外れてしまうこともある。窪美澄さんに聞く「人を好きになること」
- オトナ女子のリアルな恋愛。「今なら笑える報われなかった努力の数々」
情報元リンク: ウートピ
アラフォー時代「2万円」を貢いだ私が気づいた、日常に潜む落とし穴