「昼スナブーム」の火付け役としても知られている木下紫乃さんによる『45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気』(日経BP)が2020年11月に発売されました。
2016年に「40代、50代のミドルシニア向けキャリア支援」を掲げて「ヒキダシ」という会社を設立。会社以外の場所で気軽に本音で話せる場所が必要との思いから、昼間だけのスナックをオープンした“紫乃ママ”こと木下さん。
同書には、「自分の存在価値が見いだせない女性」や「アピール下手でつい被害者意識にとらわれてしまう真面目な女性」「出世コースから外れて呆然(ぼうぜん)とする女性」などさまざまな悩みを抱える女性が登場。そんな彼女たちに「どこに出しても恥ずかしい人生でいい」と言い切る“紫乃ママ”にお話を伺いました。全3回。
コロナ禍の今、できること
——コロナ禍で働き方や社会状況も変わりました。アフターコロナの働き方を見据えて、今のうちにやっておいたほうがいいことはありますか?
木下紫乃さん(以下、紫乃ママ):周りを見ていると、もちろんコロナ禍で大変な思いをされている方も沢山いらっしゃると思いますが、一方で働き方の選択肢がぐっと増えた人も多いのかなと思います。だっていくら「働き方改革」で「リモート」って言っても全然進まなかったのに、コロナ禍で一気にリモートワークが進みましたよね。
コロナ前の社会にはもう戻れないので、ある意味、そんな状況を利用するというか、自分がどんなときに一番ご機嫌でいられるかを探る時期なんじゃないかと思います。選択肢が増えたら当然選ぶことも必要になってくる。
会社側もそういうふうに考えていかないと、働く人に選んでもらえなくなる。ある意味、一晩にして世の中がこんなに変わっちゃうことをみんな経験したんだから、自分がどうしたいのか、自分はどんな働き方が合っているのかを明確にしてどんどん試していけばいいと思います。現状では国や会社の指示は全部後手後手で、自分が自分のことをちゃんと決めなければいけない時代になってしまったので、これを機会にどんどん自分で決めていけばいいと思います。
——気楽にいろいろ試してみるってことでしょうか。
紫乃ママ:そうね、いろいろチャレンジしてみたらいいじゃない。私が去年の10月、わざわざコロナ禍真っただ中にそれまでの間借りスナックから自分のお店を出そうと思ったのも混沌とした時代だからこそ。何をやっても何をやめても「まあコロナだからね」ってある意味言い訳になるでしょ。そんな感じでそれに乗じて今までやりたかったことに気軽に挑戦してみたらどう? こういうときこそ、他人の真似をするのではなくて、自分がこうだって思ったことを一回やってみる。違ったらすぐにやめたり変えればいい。フットワークをつける練習をすればいいんじゃないかなって思いますね。
迷ったらまずはやってみる
——実は私も副業をやってみようかなと思うのですが、本業もそれなりに大変だし自分にできるだろうか? と迷っているんです。
紫乃ママ:具体的にどんな副業をやるか決まっているんですか?
——いえ、まだです。
紫乃ママ:では何に迷っているの?
——副業を始めたとしてやっぱり自分の仕事の品質が低くて、相手の期待を裏切ってしまったら嫌だなとか。
紫乃ママ:もしそうなったらその会社や相手とは縁がなかったと思えば。だって仕事ってクオリティだけではなくて相性もあるから。自分に置き換えてみても「あの人には、もう少しこうしてほしいなってところは正直あるけれど、仕事相手として好きだし相性もいいからやっている」という人もいますよね。マシンじゃないんだから「まあこの人とは相性が合わなかったな」というのは出てくると思う。もちろん言われたことは真摯に受け止める必要があるけれど、ダメならダメで「じゃあまた次にいってみよう」でいいんじゃないですか? 恋愛と一緒で合わなかったら次に行くでいいと思うし、そういう発想にしないと何も始まらないんじゃないかな。
——それこそ本にあった「来世持ち越し案件」になっちゃいますよね。
紫乃ママ:それに今の話もまだ具体的じゃないんですよね? それでも相手の期待を裏切ることで、自分が傷つきそうだと思うのならもっとうんとハードル下げたところからやってみるとかね。始める前にぐにゃぐにゃ考えていることは「悩み」じゃない、それは単なる「妄想」。まず小さく踏み出して、相手からのレスポンスがきたらそこで初めて悩めばいい。脳内シミュレーションの段階で悩んでいても一生結果は分からないし、やってみて評価が低かったらやり方を変えればいいし、意外に良かったらもっとレベルを上げていく。ただそれだけじゃないかしら。
——やってみて先方に迷惑かけちゃったら申し訳ないなって。
紫乃ママ:迷惑かけるっていったって、相手だって1回は承諾をして一緒に仕事をしてるわけでしょ? それはそっちにも責任があるわけだから。
——そうですよね。私を選んだ責任がありますもんね。
紫乃ママ:交通事故と一緒で、どっちが100%悪いっていうことはない。私、仕事を受けるときに躊躇(ちゅうちょ)をしている人にいつも言ってることがあって「最後は他責」でってメッセージ。この人と仕事をしようって「決めた」のはお互いさま。こちらが押し付けて無理やりやらせてるわけじゃないし、決めたほうにも責任があるんだと思わないと何もできない。やる前から、迷惑かけるだの何だの心配している暇があったら、まずは「やりたい」「やってください」っていうところまでもっていくことのほうがよっぽど大事よ。そしてやれる限りの努力はする、そこからです。
——分かりました! まずはやってみます。
紫乃ママ:自分が生かされる受け入れ先なんて実はいっぱいあるんです。ここじゃなかったら違う場所を探せばいい。どこまで粘って自分に合う場所を探せるかが勝負。粘り勝ちを目指しましょうよ。小さなプライドにこだわらず、前後つながってなくても「コロナで副業始めたんだよね」って。「新しい働き方を模索してるんだよね」って言っちゃえばいいんです。
みんな“自分のプロ”だから…
——「始める勇気」ですね。そういえばこの本は「やめる勇気」というタイトルですが、このタイトルにしたのは?
紫乃ママ:よく世の中では「やりたいことをやろう」と言われますが、いざ「やりたいことは?」と聞かれると困る人が少なくない。私だってはっきり答えられない。そして「そう言えばやりたいことは何だろう?」と考えているうちに時間がたってしまうものだから、取りあえず今やっていることの中でやりたくないことをやめるのが手っ取り早いなって。
だって、すでに今やっていることはたくさんあるから選べますよね。そっちのほうがハードルが低いし、どんどんやめていけば時間もできる。それで残ったことが自分がやりたいこと、少なくともやってもいいかなと思っていることなのでそれを続ければいいと思うんです。
——すでにやっていることがあるわけですもんね。
紫乃ママ:そう、余計なことをいっぱいやってるから。
——中にはやりたくないことも……。
紫乃ママ:多くの人はやりたくないこともたくさんやっていると思いますよ。
——でも、続けることは善と教育されているから「やめる」って罪悪感があります。
紫乃ママ:「やり始めるからには、石の上にも三年」みたいな。そういうのがいっぱいありますけど、人生はそんなに長くないし、残された時間の中で自分のやりたいことが増えていくほうがいいでしょう。そのためにはやりたくないことをやめないとやりたいことをやる余白を増やせない。
——「やりたくないこと」は自分の感覚を信じてとっとと決めてっていいのでしょうか?
紫乃ママ:自分以外、誰が決められるの? 自分を生きてきたのは自分だけ、みんな“自分のプロ”なんですよ。だから自分の感覚はそんなに捨てたもんじゃない。もっと自分の感覚を信じてあげてよね。
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情報元リンク: ウートピ
みんな“自分のプロ”だから…「やりたくないこと」をやめる勇気を持とう