冬の乾燥の季節、オフィスでは、「エアコンの風があたって肌がかさかさになる、のども目も乾いて痛い、風邪をひく、コンタクトレンズがはずれそう」といった悩みはつきません。
気温の情報は節電の影響でよく知られていますが、湿度については気候やエアコンの関係もあって調節が難しいことも多いようです。
そこで、20~40代の女性の健康トラブルに詳しい内科医の成田亜希子医師に、乾燥がもたらすのどや鼻、肌の健康への具体的な影響と、オフィスでのセルフケアについて詳しく聞いてみました。以下は、成田医師によるお話です。
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屋内で適切な湿度は50~60%。40%以下は不調のもと
乾燥による健康被害は、実は自覚がないうちから起こっています。ヒトが快適に感じる湿度は、屋内では50~60%と言われています。湿度が40%を下回ると乾燥を実感し、風邪やインフルエンザなどに感染しやすくなります。また、70%を超えると汗が乾きにくくなって不快感を覚え、カビが繁殖しやすくなるでしょう。
とくに乾燥では、誰しも覚えがあるように、「皮膚の乾燥・かゆみ」、「のどの痛み・乾燥」、「くしゃみ」、「せき」、「鼻水、鼻づまり」の一因となっている、冬季では「手や足の冷え」があるという調査報告もあります。肌や髪、ツメがかさかさするだけでなく、のどや鼻が痛んで風邪をひきやすいなどと、多様な不調の原因になると言えるのです。
また、オフィスでの乾燥の問題は秋から冬にかけて注目されがちですが、春や夏も空調によって乾燥を引き起こすことがあるため、一年を通しての対策が重要です。
のどの奥の「線毛」が乾燥すると病原体が入りやすい
乾燥が原因の不調として、まず、のどや鼻の粘膜へのダメージについて考えましょう。のどや鼻から続く気道の粘膜には、「線毛」と呼ばれる1000分の1ミリほどの微細な毛がすき間なく生えています。この線毛には、細菌やウイルスなどの異物をキャッチし、咳(せき)や痰(たん)とともに体外へ排出する働きがあります。
線毛の表面は粘液で潤っていますが、寒さや乾燥には弱く、乾燥するとイガイガした違和感や痛みが生じ、さらに動きが悪くなるので風邪を引きやすくなるのです。冬はインフルエンザなどの感染症にかかる機会が増えるので、のどと鼻の乾燥対策を行って病原体が入ってくるのを抑えたいものです。
乾燥で肌の角質層のバリア機能が低下、シワになる
次に、肌の乾燥がもたらすダメージについて具体的に知っておきましょう。
ヒトの皮膚はいくつかの層で形成されていて、もっとも上には「角質層」と呼ばれる層があります。角質層は、いわゆる垢(あか)のもととなる硬い細胞が積み重なった構造をしていて、皮膚の内部に水分を抑え込む、また紫外線や外からの力の刺激から皮膚の深層を守るバリアとしての働きがあります。
空気が乾燥すると、肌はガサガサした感覚になるでしょう。それは角質層の構造が乱れてバリア機能が低下しているサインです。内部の水分が失われつつある状態で、肌の弾力が低下して表面が滑らかではない、化粧のりが悪い肌になります。
そうなると皮膚の深部に刺激が伝わりやすくなり、洋服の摩擦など些細な力にもかゆみや痛みを起こす「敏感肌」になる可能性もあります。さらに、肌の張りが失われるため、目じりや口元、首などのシワが目立ちやすくなってきます。
目や髪、唇、ツメなども乾燥によって水分が失われます。目や唇がかゆい・痛い、髪がゴワゴワ・パサパサに、ツメが割れることは自覚できるでしょう。さらに、加齢も大きく影響し、乾燥は、目には見えない体内の筋肉や脂肪組織、関節、骨といった内臓、器官、組織の細胞にダメージを与えます。
マストアイテムは、加湿器・マスク・尿素配合のクリーム
乾燥による不調は、当然ではありますが、乾燥を防ぐことで予防や改善が可能です。ここで私が実践する、オフィスでの乾燥対策を挙げておきましょう。
(1)卓上型加湿器を使う
エアコンの作用で乾燥しがちなオフィスでは、USB電源でデスク上に設置できる小型の加湿器を利用しています。
(2)小型霧吹きボトルを使う
水入りのミニスプレーボトルを常備して、数十分ごとに周囲の迷惑にならないように水を霧状にスプレーしています。
(3)タオルハンガーで濡れたタオルをかける
デスク周囲や下に、タオルハンガーを設置して濡れたタオルをかけています。
(4)温かいドリンクをデスクに置く
これだけでも加湿には有用です。
(5)マスクを着用する
マスクは風邪やインフルエンザの感染予防だけではなく、自分の呼吸による蒸気で、ほおや唇、のど、鼻が潤いやすくなります。勤務時や外出時だけではなく、自宅でも着用しています。オフィスでは忘れずに着用しましょう。
(6)スカーフやタートルネックでのどを暖かく保つ
のどを冷やすと、先ほど述べたように、線毛の活動が弱まって風邪を引きやすくなります。首を暖めるとのどの乾燥を防ぐことができます。
(7)こまめに白湯や水を飲む
のどの奥の乾燥を予防します。
(8)トイレタイムに顔や唇、手に保湿を
乳液やクリームを持参しておき、顔の乾燥を感じる部分に塗る、唇はリップクリームを、手にはハンドクリームで保湿をしましょう。手の甲やかかとなどの乾燥がひどくて傷になる、痛みや出血を伴うときには、尿素が配合されたクリームを使います。尿素は、乾燥によって硬くなった角質膚を柔らかく滑らかに潤す作用があります。
(9)足やおなかを冷やさない
暖房が効いていても、デスクワークでは活動量が少ないため、足元やおなかは冷えます。衣服、レッグウオーマーや靴下、腹巻き、温熱マットや座布団で保温しています。
(10)エアコンの風を避ける
エアコンの風が直接あたると、全身から水分がどんどん奪われるとイメージしましょう。風があたらないように常に意識をしています。
もし、皮膚のトラブルで市販のクリームを1週間ほど使っても症状が改善しない場合は、早めに皮膚科や内科を受診して医師に相談してください。
面倒と思われるかもしれませんが、こうしたこまめなケアを、できるだけ乾燥を感じる前から冬の日課として実践しておくと、大きなトラブルやダメージを予防することができるでしょう。
(構成:藤井 空 / ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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