仕事やプライベートで行き詰まったり、失敗したりすることは誰にでもあること。壁にぶつかるのは仕方ないと思っていても、ふとしたときに弱気になって「転ぶ」ことさえ怖くなってしまうことも……。
日本テレビの解説委員・キャスターで、現在は夕方の報道番組『news every.』(月~金曜午後3時50分~)に出演中の小西美穂さんが『小西美穂の七転び八起き デコボコ人生が教えてくれた笑って前を向く歩き方』(日経BP)をこのほど上梓しました。
同書は「日経ウーマンオンライン」の人気コラム連載を書籍化。仕事や恋愛、友情、家族……思い通りにならなくても、失敗して転んでも、そのたびに起き上がってきたという小西さんのエピソードがてんこ盛りにつづられており、働く女性にエールを送っています。
こんなキラッキラのキャスターがどうやって転んできたの? 私、30代になっても相変わらず転んでるけど大丈夫? そもそも、どうやって起き上がるんだっけ?
自らを「逆境のベテラン」と称する小西さんに4回にわたってお話を聞きました。
「私にしかできない仕事」を残したかった
——32歳のときに3年間のロンドン赴任が決定したものの、なかなか活躍できる出番が回ってこず、悔しい思いをしていた、というエピソードが印象的でした。「出番が回ってこない」というのは働く女性なら思い当たるというか、今まさに悩んでいる人も少なくないと思います。
小西:順番が回ってこない、というのは、単に自分の経験が浅かったことに尽きるんですね。経験が浅いというのは、自分の知識や力量不足からくる順番の低さなので、なかなか克服するのは大変なこと。3年という赴任期間も決まっている。だったら、赴任期間中に私しかできない仕事を残したいなと思いました。
——それで当時(2002年)、まだ日本でそれほど有名ではなかったベッカム選手に注目して日本に紹介したんですね。ベッカムブームの火付け役と言っても過言ではないですね。
小西:ベッカム選手は「この人面白いな。これイケるんじゃないかな?」という自分の好奇心から始まり、絶対に日本人にウケるだろうし、何が何でも伝えたいと思いました。
当時、日韓ワールドカップの前はサッカー人気にそれほど火が付いていなかった。でも、どうしても伝えたいという気持ちがあったんです「私が住んでいるロンドンにはこんな人気者がいて面白いことになっているけれど、どうしても日本の人にも知ってほしい! 伝えたい」という気持ちがあったんです。
「その時」のために準備をしておく
——熱量があったんですね。ただ、情熱に燃えているだけではなくて、いつでも日本にニュースとして紹介できるようにきちんと用意していたというのがすごいなと思いました。上の許可が出てから、素材を用意して取材をするのではなくて、すぐに出せるようにしていたというのが……。
小西:仕事するときには、「準備をしておく」というのがとても大事だなと思っていて。例えば、ベッカムが注目されたときにみんな「取材したいです。私が行きたいです」って言うんですよね。
行きたい人っていくらでもいると思うんだけれど、では、どんな人が取材に行けるかと言うと、やっぱり準備している人が行くんだと思うのね。「私、行けます。もう準備しています。すぐにニュースが出せます」という人が、チャンスをつかめる。
だから、一般企業でも、例えば海外赴任のチャンスがあって、みんな行きたかったりするよね? 「行きたいです」という人がいくらでもいる中で「私、行けます。英語も勉強して、こういう本も読んでいるし、ビジネス英会話はある程度できるように鍛えています」と言えるかどうか。「行きたい」人はいっぱいいるから。
仕事を任せたくなる人はどんな人?
——逆の立場で考えたとき、例えば自分が上司だったら「すぐに仕事ができる状態です」という人に仕事を振りたいですもんね。
小西:そうそう。何か火が付いたときに「はい。用意しています」とバッと出せるって大事だと思うんですよね。出された側も、「これとこれがあるから、じゃあ小西でいいよな。何かモノになるよね」って、具体的なものがあれば完成形のイメージが湧きますよね?
「その人に仕事をさせたときに、どんな成果物があるのかな?」というのは、判断する人にとってはすごく重要なポイントだと思う。
特派員の仕事でいうとね、モスクワでテロがあって取材するとなったときにロシアはビザが必要なんですが、「私、ビザ持ってます」と言うと「すぐ行って」となりますよね。ビザを持ってなかったとしても「こういう手続きをしたらすぐにビザを取れますし、ビザを取ったら何時何分発のモスクワ行きの飛行機に乗れます」と答えられる、とか。
備えがある人にはそういうときにチャンスが回ってくる。そこが分かれ道になるんですね。「行きたい」「やりたい」という人は、いくらでもいるんだと思ったほうがいいと思う。
たとえ“今”が出番じゃなくても…
——その後の展開を読んで、先回りして準備しておくということですね。最初の質問に戻れば、たとえ“今”が出番じゃなかったとしても、準備期間と捉えるということですか?
小西:そうです。例えば、自分がやりたいこととは違う仕事に就いている人がいて「あんな花形のプロジェクトチームの担当になりたいな」と思っていたとするじゃない? でも、そんなふうに思っている人っていっぱいいるんだよね。そこで、自分は何をぶら下げてプレゼンできるか? を考える。
A4の1枚でいいから「こういうふうにしたい。こうすればこうなると思う」という企画書を出してみるとか、現場に足を運んでみるとか、つながる人脈を培っているとか、できることを探しつつチャンスがきそうなときに、サッと手を挙げる。それが、チャンスのつかみ方と言うと大げさだけれど大事かなと思います。
※次回は11月19日(月)公開です。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)
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情報元リンク: ウートピ
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