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それでもアマゾンでポチってしまう私たち…映画『家族を想うとき』が突きつけるもの

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ライターの武田砂鉄さんと放送作家の町山広美さんが11月28日、都内で行われた映画『家族を想うとき』(12月13日公開)トークイベントに登場しました。トークイベントの模様を前後編にわたってお届けします。

イベントに登壇した町山広美さん(左)と武田砂鉄さん

イベントに登壇した町山広美さん(左)と武田砂鉄さん

『家族を想うとき』ってどんな映画?

『家族を想うとき』は、『わたしは、ダニエル・ブレイク』などで知られるイギリスのケン・ローチ監督の最新作。主人公のリッキーは、マイホーム購入の夢をかなえるために、フランチャイズの宅配ドライバーとして独立。妻のアビーはパートタイムの介護士として、時間外まで1日中働く日々を送っています。家族を幸せにするはずの仕事が、家族との時間を奪っていき、高校生の長男セブと小学生の娘のライザ・ジェーンは寂しい思いを募らせていく……というストーリー。

なぜ、83歳や76歳をここまで怒らせないといけないのか?

——83歳でこの映画を撮ったケン・ローチ監督の印象からお聞かせください。

武田砂鉄さん(以下、武田):早速、違う映画の話なのですが、次の土曜日(11月30日)に元「ピンク・フロイド」のロジャー・ウォーターズのコンサート映画『Roger Waters Us + Them』が一夜限定で開催されるんです。彼は76歳。ライブでトランプ大統領を批判する演出をしている。なんで83歳や76歳をここまで怒らせないといけないのかというのを感じましたね。

ケン・ローチ監督は前作(『わたしは、ダニエル・ブレイク』)を最後に引退を表明していたけれど、それを撤回してまでこの映画を作ったんですよね。

町山広美さん(以下、町田):今は70歳、80歳の監督が珍しくないですよね。ローチ監督も『わたしは、ダニエル・ブレイク』を撮った後に引退すると言っていたけれど、世界中の反響がすごかった。それで次のこの作品を撮ったんだなと。

同年代のダルデンヌ兄弟も『サンドラの週末』という労働問題がテーマの映画を撮った。「今撮らなきゃ」という気持ちなんだなと。

今、観客の皆さんはこの映画を見終わった後でいろいろなことを思っていると思います。行動したくなるような終わり方だったし、そういうふうに終わらせているんだなあと思いました。監督の意志がはっきりとしている。

武田:意地悪なことを言うと『家族を想うとき』っていう邦題はどうなんだ? という突っ込みがあったりなかったり……。邦題だけ見るとポカポカした映画に思えるので、そういう方に来ていただいて、今置かれている社会の現状を突かれるような鑑賞体験をしていただけるといいなと思うんですけれども。すみません、勝手に問題提起して勝手に答えて(笑)。

町山:原題は「Sorry We Missed You」で、「不在につき失礼」という不在配達票の言葉なんですよね。Weが誰で、Youが誰なのか、いろいろな意味で解釈できるタイトルではあるんですけれど、日本語にしたときに伝わるかどうかというのはありますよね。

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町山:私はこの映画を見たときにヤクザ映画みたいだなあと思ったんです。絶対勝てない相手の組の事務所に一人で行くような終わり方じゃないですか。そういうふうに終わらせている終わり方が面白いなって。

武田:ヤクザ映画と違うのは、(主人公のリッキーの上司の)強面(こわもて)のおじさんも誰かに雇われていて、休もうと思ったら誰かに連絡しないといけないんですよね。

町山:普通に仕事をして生活をしていこうという人がヤクザ映画の世界に放り込まれるというのが問題なんですよね。この個人事業システムというのは、権利を与えるフリをして奪っているんですよね。フランチャイズシステムで見事に奪われていくんですよね。

武田:そして、明確に悪いことをしているわけじゃなくて、日々をこなす中できしみが積もっていったときに家族の形が壊れていく。

町山:ちょっとずつ奪われていくんですよね。よかれと思ってやっていくことがどんどん自分の権利や可能性を減らしていくっていう……。

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それでもアマゾンでポチってしまう私たち

武田:最近出たノンフィクションで、横田増生さんの『潜入ルポamazon帝国』(小学館)という本があるんですが、この映画の構図と似ているなあと思いました。アマゾンの何秒に1個をピッキングしなければいけないピッキング作業や、体調が悪くなったときは上の人に連絡して、上の人もさらに上の人に連絡して救急車を呼ぶのに1時間かかって亡くなってしまった話が出てきます。

この映画にも(トイレの時間を節約するための)尿瓶(しびん)が出てきますが、アマゾンのトイレに行くと「オムツはここに捨ててください」という注意書きがある。それは、オムツを必要とするくらいの年配の人が働いている可能性もあるし、休むと給料が減るからトイレの時間も節約しようということなのかもしれないし、同じようなシステムなんだなと思いましたね。

町山:この映画を見たあとに「ポチっていいのだろうか?」と思うんですよ。でも、忘れてしまう私たちなんですが……。

武田:「あー、荷物午前指定だったじゃん」ってやってるわけですよね。そのたびにドライバーが再配達しなければいけなくて……。

町山:私たちが時間指定をするたびにこの人たちの労働環境を悪くしているんだなって。でも、みんなも頼んでるじゃんってつい思ってしまう。

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普通の人が普通の生活をするだけで「落ちていく」社会

武田:前にホリエモンこと堀江貴文さんが「なんで保育士の給料は低いと思う?」という質問に「誰でもできる仕事だからです」と答えて炎上しましたが、僕はものすごく腹が立ったんです。彼らは、「自分たちにしかできない保育士のモデルができれば稼げる」という言い方をするんですよね。

町山:ホリエモン流のね。

武田:この映画でもそうですが、その考え方が社会にイヤーな感じで染み渡っている。

町山:彼らはルールを変えればいいという考え方だから。ルールを変えない理由については考えないで、ルールを変えろと言い続けるのがネットの人気者の特徴ですよね。

武田:他人が「落ちていく」姿を見ることによって、自分の高さを肯定するやり方をしている人たちだし、それにはうなずきたくないですね。

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町山:アビーが仕事で介護に行って、介護先の女性が「私も役に立つのかしら?」とつぶやくシーンがあります。「自分は役に立てない」という気持ちが積もっていくと、自分に価値を見いだせないから次第に自分が権利を奪われていることに気付きにくくなる。

武田:今年の初めでしたかね、社会学者の古市憲寿さんとメディアアーティストの落合陽一さんとの対談(「『平成』が終わり、『魔法元年』が始まる」)で古市さんが「お金がかかっているのは終末期医療、特に最後の1カ月」だから「延命治療をやめればいい」と発言して問題になりましたけど……。

町山:「みんなが言わないことを言っている俺たちって頭がいいだろ」ですね。

武田:それで新聞を開いてみれば、「後期高齢者の窓口負担を巡り、現在の原則一割から二割に引き上げる方向で本格的な検討に入った」とある。なかなか生活が厳しい人たちに「もうちょっと払えるんじゃないの?」「払えないならお疲れさまでした」という社会と、こういう労働のあり方がリンクしているし、そんな社会のあり方が怖いなと思いました。

町山:主人公の夫婦はレイブパーティーで会って、家族で歌う曲もおそらく二人が出会ったときに聞いていたであろう一発屋の曲なんですね。普通の人が普通の生活をするだけで「落ちていく」のが怖いですね。

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■映画情報
『家族を想うとき』公式サイト
12/13(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
【配 給】ロングライド
【写真コピーライト】photo: Joss Barratt, Sixteen Films 2019

情報元リンク: ウートピ
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