季節の変わりめや冷え込む時期になるとよく、鼻がムズムズし、鼻水に悩まされるという声を耳にします。
漢方専門医で臨床内科専門医でもある吉田裕彦医師は、「鼻水が出る原因や状態は、体質や環境、病気によって異なります。鼻炎やアレルギーで悩む場合は、体質からケアする漢方薬を試すという方法があります。まず、鼻をかんだ後のティッシュペーパーを広げて鼻水の状態をチェックしてください」と話します。
その理由や選び方を詳しく聞いてみました。
さらさらと透明な鼻水が続くときはアレルギー性鼻炎
まず、鼻水が出る仕組みや原因と、鼻炎の症状について、吉田医師はこう話します。
「鼻水は、鼻からホコリや花粉、ウイルスなどの異物が入ると、これらを排除しようとして分泌されます。
風邪のウイルスが侵入して鼻の粘膜を刺激すると、一般に鼻風邪と呼ぶ鼻水がずるずると出る『急性鼻炎』を引き起こします。急性鼻炎がくり返す、長引くと、鼻の中の粘膜が赤くはれて炎症が起こり、鼻水や鼻づまりが長期間続く『慢性鼻炎』になる場合もあります。
また、花粉、ダニやホコリといったハウスダストなど、アレルギーの原因物質によって引き起こされるのが『アレルギー性鼻炎』です。
さらに、鼻のまわりの骨にある副鼻腔(ふくびくう)という空洞部分の粘膜に細菌やウイルスが感染して炎症が起こり、鼻づまりや鼻水、頭痛などの症状が現れるのが『副鼻腔炎(ふくびくうえん。ちくのう症)』という病気です。鼻づまりが強く、においがわかりにくい、鼻汁がのどにまわってせきが出ることがあります。
これらの原因によって鼻水の色などは変わります。どれかわからないときは、鼻水をチェックすると、自分で状態を把握する助けになるでしょう」
それが最初のお話しの「鼻をかんだ後のティッシュペーパーを広げて鼻水をチェックをする」ということにつながるそうです。具体的に、どう違うのでしょうか。
「風邪による鼻水の場合は、ひき始めはさらさらとした透明で、数日すると黄色や黄緑色のねっとりした粘り気のある鼻水に変わってきます。発熱や頭痛、せき、のどの痛みなどの症状を併発することもよくあり、およそ1週間で治まるでしょう。
また、変色した粘り気がある鼻水が続く場合は、副鼻腔炎(ふくびくうえん。ちくのう症)の可能性があります。
一方、アレルギー性鼻炎は、さらさらとした透明な鼻水が変化せずに続いて、鼻づまりやくしゃみ、目のかゆみなどもひき起こすことが特徴です。花粉症のような『季節性アレルギー性鼻炎』は花粉が飛散している時期に起こり、ハウスダストが原因の『通年性アレルギー性鼻炎』は一年中、季節に関係なく起こります」(吉田医師)
さらさらと透明な鼻水には小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
次に、鼻炎をセルフケアするときの市販薬の選び方について、吉田医師は説明を続けます。
「西洋薬の場合、風邪による鼻水には風邪薬を選ぶでしょう。アレルギー性鼻炎の場合は、鼻炎用の内服薬や速効性のあるスプレータイプなどがあります。
しかし、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の場合は慢性的な症状になるため、漢方薬で対処する方法もあります。
東洋医学では、鼻炎の原因のひとつは『体内に余分な水(すい)がある』からと考えます。『水(すい)』とは血液以外の水分や胃液、涙などの体液全般を指します。何らかの原因で循環に支障が生じて十分に発散できないとき、体内で増えた水分が鼻の中にたまって詰まり、鼻水として出てくるようになる、ととらえます。つまり漢方薬は、水分の代謝を改善することで鼻炎に対処していきます。
漢方薬を選ぶ場合は、鼻水の状態とともに、自分の体格や体質、ほかに現れている症状を考え合わせましょう」
ここで吉田医師に、「鼻炎に対応する漢方薬」を教えてもらいましょう。
●小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
体力は中等度、もしくはやや虚弱で、鼻風邪の初期やアレルギー性鼻炎の透明でさらさらとした鼻水に用います。せきや鼻づまりを伴うときに向きます。また、眠くなる成分が入っていないので、運転する人や仕事中にも適しています。
●麻黄湯(まおうとう)
体力があり、寒気、発熱、頭痛、せき、関節痛など風邪のひき始めで、鼻水や鼻づまりなどの症状がある場合に向きます。
●葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
比較的体力があり、風邪の鼻水が粘り気のある状態に変わってきたときや、アレルギー性鼻炎で鼻づまりが強いときに向きます。
●荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
体力が中等度以上で、慢性的な鼻炎や鼻づまり、副鼻腔炎に用います。また、首から上の炎症に働きかけるので、扁桃炎(へんとうえん)やにきびなどの改善も期待できます。
●辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)
体力が中等度以上で、粘り気のある鼻水に向きます。慢性的な鼻炎や、風邪でもたんのからんだせきやのどの痛みがある場合や、副鼻腔炎の改善に用います。
最後に吉田医師は、漢方薬を用いる際のアドバイスを加えます。
「ここに挙げた漢方薬はひとつの目安です。迷った際は薬局に常駐する薬剤師に相談しましょう。また、2週間ほど服用しても改善が見られない場合は、必ず内科か耳鼻咽喉科を受診してください」
鼻炎に働きかける漢方薬は、体内にたまった水分を調整して対処するということがポイントだということです。まずは自分の鼻水の状態をチェックして、合う漢方薬を選びたいものです。
(取材・文 岩田なつき/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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