飲み会で調子に乗ってお酒を飲みすぎ、翌朝二日酔いで辛い思いをしたことはありませんか。
臨床内科専門医で女性外来もある正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長は、「一般に女性は男性よりアルコールには弱い傾向にあります。自分はお酒にどう反応する体質なのか、自覚しておくようにしましょう」と話します。
そこで、お酒に弱い人の特徴、お酒に強いか弱いかのチェック方法について聞いてみました。
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女性は男性よりお酒に弱い
周囲の人と比べて自分はお酒の量は多くないのに、なぜか飲みすぎたような感覚になったことがあります。正木医師ははじめに、お酒に強いか弱いかの個人差がある理由について、こう説明をします。
「お酒に含まれるアルコールが体内で分解される分量が多いと『強い』、少ないと『弱い』と言えます。女性が男性に比べてお酒に弱い理由を知るにはまず、飲んだお酒は体内でどう処理されるかを理解するとよいでしょう。
アルコールは胃腸から吸収されたあと、血液によって肝臓に運ばれます。次に肝臓で酵素(ADH2)によって分解されて、アセトアルデヒドという毒性がある物質になります。その後、別の酵素(ALDH2)で分解されて無毒な酢酸となり、最終的には水と炭酸ガスとして主に尿や汗、呼気から排出されます。
女性は男性より体重が軽く、肝臓が小さいためにアルコールを分解する力も小さいこと、また、アルコールの分解には水分が必要ですが、女性は男性より体内の水分量が少ないため、血液中のアルコールの濃度が上昇しやすいのです」
男性と同じぐらいの量を飲んでいると、女性が先に酔いやすいということですか。
「そうです。さらに、体格でも差があります。体格が大きくて体脂肪率が少ない人の方が、肝臓が大きく水分量が多いため、アルコールの処理能力が高くなります。
アルコールの分解に要する時間は体質と体格で大きく異なりますが、お酒が強くて体重が60 ~70 キログラムの男性でビール中ビン1本、日本酒1合ほどには約4時間かかるという試算があります」と正木医師。
お酒を飲む練習をしても強くならない
「お酒は年齢とともに弱くなる」とも言われますが、正木医師はこう説明を続けます。
「年齢とともに体脂肪が増えて体内の水分量が減るため、アルコールの分解能力は低下します。よって、年齢とともにお酒には弱くなります」
「遺伝による」とも聞きますが、どうなのでしょうか。
「遺伝はお酒に強いか弱いかを判断するにあたって、決定的な要因になります。肝臓でアルコールを分解する酵素(ALDH2)には3つの型があり、『酵素の活性が強い人(活性型)』と、『活性が弱い人(低活性型)』、そして『活性がまったくない人(非活性型)』がいます。低活性型と非活性型はお酒に弱いことがわかっています。
どの酵素の型を持っているかは、親から受け継ぐ遺伝子の組み合わせで決定されて、後天的に変わることはありません。両親や祖父母がお酒に強いか弱いかを聞いてみてください」と正木医師。
そうすると、「お酒を飲む練習をすると強くなる」と言われるのは、間違いでしょうか。
「『活性型だけれど、自分は弱いと思い込んでいた』という人なら、飲み慣れるにしたがって強くなる可能性はあるでしょう。しかし、低活性型、非活性型の人は、いくら飲んでも強くなることはありません。健康にとって悪影響になるだけです」
「酔う」とは、アルコールで脳が麻痺して理性が低下すること
そうすると、自分がお酒に強いか弱いかを認識しておくことは生涯にわたって重要となりそうです。正木医師は、お酒による健康被害についてこう警告をします。
「アルコールが血液に乗って脳に届くと脳が麻痺しはじめますが、それが『酔った』状態です。血液中のアルコールの濃度が高まると、徐々に理性をつかさどる大脳新皮質の活動が低下し、抑えられていた感情や本能をつかさどる部分が活発になります。酩酊して言動に失敗する原因はここにあります。
また、本来お酒に弱い体質ということを知らずに飲んで、また飲まされて、『急性アルコール中毒』になったというケースはとても多くあります。これは酩酊から昏睡、呼吸困難、ときに死亡にいたる怖い病気です。若い人に多い理由は、お酒に対する限界を本人も周囲の人も認識していなかった、あるいはこういった体のしくみを知らなかったなどが考えられます」
顔が赤くなればお酒に弱い
ではここで正木医師に、自分がお酒に強いか弱いかを確認する方法を教えてもらいましょう。
「まず、『ビールをコップ1杯程度で、顔が赤くなる』場合は、『お酒に弱い』タイプです。
また、『お酒を飲み始めた頃の1・2年間はビールをコップ1杯程度で顔が赤くなっていたか』を思い出してください。該当する場合は、『お酒に弱いタイプ』です。
少量のお酒で顔が赤くなる、吐き気や動悸(き)、眠気、頭痛があることをフラッシング反応といい、この体質の人をフラッシャーと呼びます。先にお話しした、酵素の『低活性型』と『非活性型』の人であり、顔が赤くなるのは特徴のひとつです。それ以上は飲まない、また、周囲の人も止めるようにしましょう。
もうひとつ、いわゆる『お酒臭い』という口臭がする人がいます。これも酵素の『低活性型』と『非活性型』の特徴です。最初にお話ししたアセトアルデヒドには臭いがあり、血液中に残ると吐く息から臭うようになります」
お酒に強いか弱いかがわかるパッチテスト
ここで正木医師は、酵素の型を手軽に知ることができる「エタノールパッチテスト」について、次のように説明します。
【方法】
(1)少量のガーゼ(化粧用コットンの半分ぐらいの大きさ)にテープやばんそうこうを貼る。
(2)市販の手指の消毒用アルコール(70%のエタノール)を2~3滴、(1)のガーゼにしみこませる。
(3)上腕の内側の、皮膚の柔らかいところに貼る。
(4)7分放置してからガーゼをはがし、皮膚の色を見る。
(5)さらに10分経過後(つまり、最初に貼ってから17分後)に、皮膚の色を見る。
【結果】
(4)の「7分後」に、貼った部分の皮膚に赤みが出た人→お酒を飲めない体質
(5)の「17分後」に、貼った部分の皮膚に赤みが出た人→お酒に弱い体質
どちらも変化がなかった人→お酒は普通に飲める体質
(久里浜医療センター 樋口進医師)
さらに正木医師は、「日本人の4割は、酵素が『低活性型』と『非活性型』と言われます。女性のはお酒に弱い確率の方が高いことを知っておきましょう」とアドバイスをします。
男性と同じだけ飲むと自分のほうが酔いやすいこと、酔うと脳が麻痺すること、急性アルコール中毒はじめ、飲みすぎは健康被害をまねくだけということについて、おとなの認識として理解を深めておきたいものです。
(取材・文 品川緑/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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