シニア層と聞くと、巣鴨のとげぬき地蔵に集まっているとか、縁側で背中を丸めてお茶をすする「かわいいおばあちゃん」のイメージが浮かんできませんか? けれど、そのイメージはどこからくるのでしょうか。
このたび、世界最大級のデジタルコンテンツカンパニーであるゲッティイメージズは、シニア層の無個性なイメージをアップデートする「The Disrupt Aging®Collection」を展開しています。ゲッティイメージズ ジャパンの島本久美子社長にコレクションの目的について伺いました。
ステレオタイプなイメージに集約されがちなシニア層
——“Disrupt Aging”コレクションとはどのようなコレクションでしょうか。
島本久美子さん(以下、島本):広告やメディアにおいて、50代以上の人々は「シニア層」という単一でステレオタイプなイメージに集約される傾向があります。実際には熟年層が充実した多様な生活を送るようになっているにもかかわらず、ビジュアル表現の世界で描かれるのは「孤独」や「養護が必要」な存在であることが多いのです。また、家族以外の別世代と交流するイメージを見かけることは稀です。ある調査では、50歳以上の方の80%が、広告での高齢の表現が固定されていると感じていました。
今回、ゲッティイメージズでは、米国の非営利団体「AARP*」と共に、新たに写真コレクションとして、実際の現実に則した歳の重ね方を提示していく試みをはじめました。本コレクションには、職場やコミュニティ、旅行などの様々なシーンにおいて、50代から80代以上のさまざまな年代で1000枚を超えるビジュアルを用意しています。
*高齢化社会問題に関する全米最大の非営利団体。会員数は3800万人以上
——従来の“老い”のイメージが根強いのはなぜでしょうか?
島本:メディアにおいての高齢者の描写の仕方が固定化していたことや、そもそもメディアに登場することが少ないことがあげられると思います。日本においては急速な高齢化が進んでいるため、高齢者の市場としては他国より注目しはじめたのは早いほうだと思いますが、依然として従来の“老い”のイメージの更新はできていないと感じますね。
イメージが変わると社会はどう変わる?
——従来のイメージが変わることで、社会にどのようなポジティブな影響があるとお考えになりますか?
島本:前出の「AARP」が行なった調査では、米国成人の3分の2がメディアや広告における50歳以上の表現が年齢差別であると感じていることがわかっています。また、50歳以上の51%の女性は、メディアや広告に「(自分自身や世代が)見当たらない」と感じていました。
日本に目を向けると、2023年に国民の半分が50代以上になり、2025年には、3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という「超・高齢者社会」がやってきます。私自身は新たなビジネスを創出するチャンスであると思っています。みずほコーポレート銀行の調査*によると、2025年の高齢者向け市場規模は高齢者人口の増加を背景に100兆円規模に拡大する見通しとなっています。
※2018 年 みずほコーポレート銀行 産業調査部 Ⅲ‐3 高齢者向け市場
高齢者が消費者として注目されるなかで、ターゲットの年齢やコミュニティにアピールするために「高齢者を細分化し、バリエーションを増やしたビジュアル」は重要な役割を担います。今後企業やブランドは、50歳以上が半数以上を占める「超・高齢者社会」の日本社会において、広告で「(自分自身や世代が)見当たらない」という声には敏感となる必要があるでしょう。
また、ポジティブに生活しているビジュアルを通じて、高齢であっても、夢を持ったり、新しいことに挑戦することをもっと受け入れやすい社会になってほしいと私は思います。25歳の方には夢を持って挑戦することを社会は応援しますよね。
今、50歳の方でもまだこれから25年以上元気に生活できる方は多くなってくるので、これから新しいことに挑戦することは可能ですし、周りにも元気を与えることができるのではないでしょうか。
アップデートされたシニアのビジュアル
——コレクションの中から気になったイメージをピックアップしました。最後に、これらの写真についての見解をお聞かせください。
広告で採用されるモデルは典型的な美人だけではなくなってきたように、50歳以上のモデルにおいても多様化しています。このように多様な価値観の時代においても自分らしく生きている人は輝いているように思います。
年齢は関係なく、鍛えられた体の美しさを表している写真。自然体として捉えているのがポイントです。
人生経験を多く重ねている方が職場に与える安心感と安らぎを素敵に捉えた写真だと思います。
自分の関心がしっかりと分かった年代にこそ持てる強い志で学業に専念することがどれだけ清々しいことかが伝わる一枚です。20代の大学生活でキャリアを決めてしまうのは確かにもったいないですよね。
(構成:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
いつまでも“かわいいおばあちゃん”のままじゃない。変わるシニアのイメージ