ヌード写真がメインなのに女性から熱烈な支持を得る写真家、相澤義和さんへのインタビュー。普通の女の子たちの自然な姿を記録し続けた、相澤さんのInstagramのアカウントは、10万人以上のフォロワーを持ちながらも幾度となく凍結されてしまいます。
その一方で、Instagramの作品群から厳選した写真で構成した写真集『愛情観察』(百万年書房)が話題を呼んでいます。相澤さんの目には、女性という存在がどのように映っているのでしょうか。3回にわたってお届けします。
すべての女性はもともと美しい
——誰しも、自分の体のどこかには自分が「好き」と言える箇所があると思います。でも、「そう感じているのは自分だけかも」と思うと、自信が持てなかったりしますよね。それが、こうやって相澤さんに撮っていただくことで、「やっぱり好き!」「自信を持ってもいいんだ」と励まされたんじゃないかと、『愛情観察』を拝見して感じたのですが……。
相澤義和さん(以下、相澤):そういうふうに見ていただけるのは、モデルに「やらされてる感」がないからじゃないかと僕は自己分析しています。グラビアだとどうしても女性が男性の理想像を投影するオブジェになってしまいます。もちろんそれはそれで美しいこともありますが……。それに対して僕は、女性が自由にいてくれる姿っていうのを残していきたいと思っているんです。
——自由にしている女性のほうがいいというのは、相澤さんのなかに「女性はもともと美しい」という一本の芯みたいなものがあるからなのでしょうか。
相澤:その「芯」も、やっとできてきた感じなんです。若いころはそんなものはなかった。いろんな人と恋愛したり傷つけ傷つけられしていくうちに、「すべての女性はもともと美しい」という芯ができてきたんでしょうね。年齢も関係ないですし。最近、母親が歳をとってきて、何となくリアルに先が見えるようになった今、74歳の母とモデルの子たちを重ねてみたりするんですよ。
——えっ? どうやって重ねるんですか?
相澤:「この子たちもいずれ息子を持ったりするのかなぁ」とか、いろんなことを考えるんです。逆に、「うちの母親がこの子たちと同じ年代だったら、どんな感じだったんだろう」とか。センチメンタルになりながら母親の写真を撮ったりしてるんですよ。
「今が一番きれいな私」だから
——ちなみに、お母さまが被写体の場合、どういう写真を撮るんですか?
相澤:被写体という感じで撮ってるわけじゃないんです。実家に帰ると、料理をつくってくれたりするじゃないですか。その後ろ姿を撮ったりしています。母は、根本的にカメラを向けられるのが死ぬほど嫌いなんです。いろいろ患って「汚いから撮らないでくれ」って言うんですよ。
——「汚いから撮らないでくれ」という気持ちもわかります。せっかく写真に残すなら、ちゃんときれいにおめかししてから撮りたい。でも、その一方で『愛情観察』には、からだの切り傷をあえて写した写真もありましたね。印象的でした。
相澤:この子は病気で何度もからだにメスを入れていて、今後も切り傷が増えていくことがわかっているらしいんです。それで、「今が一番きれいだから、それを残してくれないか」とメッセージをくれたんです。
——なるほど……「今が一番きれいな私」……。
相澤:その言葉は、結構響いちゃいましたね。
——撮影時はどんな感じでした?
相澤:めちゃくちゃテンション上がってましたね。キャッキャキャッキャ言ってて、かわいかったです(笑)。この写真、傷だけでなく、お肉のしわも写ってるじゃないですか。僕はこれがかわいいと思っているのですが、彼女も「Photoshopですぐ消せるのに、消さないということは、これを認めてくれてるんですね」というようなことを言っていました。
——修正されると、その部分を否定されたような気になると思います。そのまま写してもらったことで「認められた」と思えるってすばらしい。
相澤:僕は単に、これがかわいいと思って撮ってるだけなんですけどね(笑)。
自分の存在を示したい
——このモデルさんもそうですが、「顔は出したくないけれど、からだは撮ってもらいたい」という方は多いそうですね。身元がバレるとか、ネットに出回るとか、そういう不安もあると思うんですよ。でもそれと相反して、今のきれいな状態を残したいというアンビバレントな感じ……。
相澤:「私は女として魅力があるんだ」ということを感じたいんじゃないのかな? ツイッターを見ていると、肌を露出する子が増えてきていると感じます。お金などの対価を受け取るなどの商業的な側面だけではなく、自分の存在を示すためにヌードを残す子も増えているのかなと思います。
——存在を示す。なるほど。
相澤:僕は、この本が出版されてすごく感謝しているんですよ。普通に生きていたら確実にこの子たちより僕が先に死にますよね。でも、死んだときに、この子たちが僕の存在を残してくれるじゃないですか。これ、すごく幸せだと思うんです。
——彼女たちの存在を残すと同時に、自分の存在も残しているんですね。
相澤:この彼女たちの一瞬に僕は重なってるんですよ。表面上の作風とか、そういうもので残さなくても、残っている。それで十分じゃないかなと思ったりします。
(取材・文:須田奈津妃、撮影:青木勇太、編集:ウートピ編集部 安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
ある女性は傷跡の残るお腹を見せて…「今が一番きれいだから」