「推しを愛する気持ちに共感1000%!」と、話題の漫画『おじさん、ドル活はじめました!』。K-POPアイドルにハマった46歳のおじさん・裕美智(ひろみち)が、先輩ファンのギャル・マミコに弟子入りし、すばらしき“推し活”をはじめていく物語です。
推し活…コンサートやイベントに行ったり、コンテンツを視聴したり、とにかく愛でたり、推しのために活動すること全般
好きだと思ったものを素直に追いかけ、その世界に敬意を持ちながら興味を深堀していくおじさんも最高。後輩ファンに優しく熱く、心得や知識を伝授してくれるギャルも最高……。
作者のシバタヒカリさんも、BTSの推し活中。推しがいる暮らしのよいところを語っていただきました。
推し活は日常だった
——『おじさん、ドル活はじめました!』(以下、おじドル)、登場人物が楽しく推し活する様子に、とっても明るい気持ちになりました。シバタさんも、昔から推し活をされているのだとか……?
シバタヒカリさん(以下、シバタ):親が洋楽好きで、子どものころからよくコンサートに連れて行ってもらいました。私たち家族にとって、趣味や好きなものを追いかけて活動することは、日常の一部だったんです。そんななかで、家族の影響なくはじめて自分から好きになったのが、韓国男性アーティストグループのBIGBANGでした。大学3年のときです。
——推し活の下地がばっちりできているところに、K-POPとの出会い! BIGBANGを好きになったのは、どんな経緯だったのでしょうか。
シバタ:BIGBANGが「ミュージックステーション」に出ていたのを、たまたま見かけたんです。でも、それまで洋楽が好きだった私は「かっこつけてるなぁ」とか「軟派だ!」と思ったりして……サングラスをとるパフォーマンスに黄色い声が飛ぶ、みたいな光景にもなじみがなかったし(笑)。そうやって最初は斜めから見ていたのに、気づいたらYouTubeでめっちゃBIGBANGを観ている自分がいたんです。
——沼に落ちてる……!
シバタ:自分の気持ちを認めるのにちょっと時間はかかりましたが、YouTubeを観ているうちに「かっこいいって思ったんなら、それでよくない?」と思えて。それからはしばらく、BIGBANGの推し活に熱中しました。だけど、メンバーの兵役でグループが活動休止することになり、自分の中心に据えていた推しが、いきなりいなくなっちゃったんですよ。
それがさみしくて、別の推しを探そうと、いろんなグループを見ていたとき。友達が紹介してくれたのが、今回『おじドル』を描くきっかけにもなったBTSでした。すすめられたMVを観たら、映像もダンスも見た目もうるわしくて……すっかりハマりました。
——BTSでのシバタさんの推しは?
シバタ:最初はVくんから入りました! でも、メンバーを知ると甲乙つけられないくらい好きになって、いまはオルペン(K-POP用語で「メンバー全員のファン」の意味)です。『おじドル』でも、グループ内の推しを決められないおじさんが「推しのメリーゴーラウンド」と言っていますが、まさにそれなんですよね。私にBTSを教えてくれた友達がそう言っていて、これは絶対に漫画の台詞で使いたいと思い、許諾をもらいました(笑)。
K-POPアイドルのプロ意識に、勇気をもらう
——洋楽よりもファンとの距離が近いK-POP。そこに推しができて、シバタさんの日常はなにか変わりましたか?
シバタ:K-POPって、舞台裏をコンテンツにして見せてくれるんですよね。BTSの華やかなパフォーマンスの裏には、ひとつの身体の動きに対してもこれだけ練習する時間があって、こんな過程を踏んでいるんだ、というのがわかる。すごくかっこよくて才能もある男の子たちが、泥臭く頑張っている姿を見ると、自分がものをつくるときにも心の支えになるんです。
BTSに出会ったとき、私はすでに漫画家デビューしていました。だから、仕事中に苦しいことがあると、彼らのことを思い出すんですよね。あの子たちはあんなに頑張っているんだから、私もこの一コマをもっとよくできるように粘ってみよう、と。彼らのプロ意識に、勇気をもらっているんです。
——お仕事にいい影響が出ているわけですね。プライベートはいかがでしょうか。
シバタ:独学で韓国語をはじめました! 動機は、作中のキャラクターと同じで、推しが韓国語で生配信している内容をリアルタイムで理解したいからです。字幕を待たなきゃいけないのって、すごくもどかしいんですよね。いまはTOPIKという韓国語検定を受けるために、勉強をしています。
——語学を学ぶのは、推しが外国人だったりワールドワイドに活動しているからこその楽しみですね。
シバタ:そうなんです! 私は普段すごく出不精なんですけど、数年前にはBTSが好きな友達と一緒に、韓国へ「推しの聖地巡礼」に行きました。ロケに使われた歩道橋を歩いたりするだけのことが、めちゃくちゃ楽しかったですね。「好きな男が住む国に、飛行機乗っていこうぜ!」っていうのが、まず最高じゃないですか?
——最高です!
好きなものがあると、人生に「幸せのピン」を打てる
——シバタ先生は、2019年出版の『だから私はメイクする』で、メイクが大好きな人たちの姿をまっすぐに描かれていました。前作ではメイク、今作ではアイドル。そんなふうに好きなものがあるということは、私たちの人生をどう変えてくれると思いますか?
シバタ:好きなものがあると、人生に「幸せのピン」を打つような感覚になれるんです。たとえばメイクをするのが好きだったら、毎朝の身支度に、かならず楽しい時間がありますよね。私はそのほかに食べることも好きだから、一日3回、かならず自分を幸せにできる時間があるんです。
ただ漫然と過ぎていきそうになる日常に、自分なりの「幸せのピン」を打っていくと、その時間でひと息ついてみたり、好きなものに浸ってエネルギーをチャージしたりできます。いまは推しが使っているのと同じリップクリームを買ったので、唇が乾燥するだけで「うふふ」ってなるんですよ(笑)。
——素敵です! ちょっといいなと思うものを見つけたとき、まずは何から推し活をはじめてみればいいでしょう?
シバタ:いきなりお金をかけなくても、いまはまずネットで検索するだけで充分楽しめます! アイドルだったら公式YouTubeを探してみたり、SNSでハッシュタグを検索してみたりするだけでもOK。コンテンツもたくさんあるだろうし、そこで同じものを好きだと言っている人の言葉にふれると、さらに愛が深まると思いますよ。
(取材・文:菅原さくら、編集:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
『おじさん、ドル活はじめました!』作者が語る「推しは、日常を彩る“幸せのアクセント」