「三軒茶屋」を「三茶」と略す資格がない、「ポスト出川」から舵(かじ)を切った瞬間、人付き合いについての考察――。
お笑いタレントや司会者として活躍するふかわりょうさんによるエッセイ『世の中と足並みがそろわない』(新潮社)が11月17日に発売されました。
どこにもなじめない、何にも染まれないふかわさんのいびつな日常を書き下ろした同書について、今年で芸歴26年目を迎えるふかわさんにお話を伺いました。前後編。
“銀河系”を作れるかどうかが大人の証し
——「拝啓 実篤様」でつづられていた「私が望むのは、友達の数が尺度にならず、孤独や孤立が弱者として奇異な目を向けられない世の中です」という箇所がすごく響きました。やはり「友達100人できるかな」に縛られて、嫌いな人がいることに罪悪感を感じたり、人間関係に悩んでいる人は多いと思います。
ふかわりょうさん(以下、ふかわ):まず大前提として、「仲良くないといけない」というのが大きな誤解であり、「別に仲悪くていいんだ」からスタートしないとダメだと大人になって気づきました。人との付き合い方も銀河系、惑星のようで、毎日会う人もいれば月1回の人もいれば年に1回の人もいる。すごく好意を抱いている人もいれば関心を持ってない人、ちょっと苦手だと思う人もいる。でもそれが一つの自分の銀河系。嫌なものの存在を否定すると苦しいんですよ。
——何かを嫌うってすごくエネルギーがいりますよね。
ふかわ:そうそう、それをすごく感じます。逆もしかりで、好きだからといってつい近づきすぎるとアラが見えてくる。無理に距離を詰めようとするとたちまち嫌悪感が相手にも自分にも生まれる。それぞれにほどほどの距離感で接する、銀河系を作れるかどうかが大人の証しだと個人的に思います。
LINEを交換しない距離感でいることも大事
——そう思うようになったきっかけはあったんですか?
ふかわ:いろいろ失敗を経験して、ですね。仲が良い人も油断すると近づきすぎてパーンとなることがあるから、加減というか距離感を大事にするようになりました。
誰かを手助けするときも、手を差し伸べてはいけないわけではないのですが、何でも優しくするのではなく、ある程度ドライな関係性、距離感を保つのもすごく必要だなと感じます。
——見守るということなのでしょうか? 仕事の関係においてもそうですか?
ふかわ:「仕事でも」と言うか、まさに仕事での関係がそうですね。「意気投合したからLINEを交換しましょう!」と交換したとして、LINEのメッセージや返信がなかなかこないときに「何でこないんだろう?」と悶々(もんもん)としてしまうし、「やっぱりその場のノリだったのかな?」「社交辞令だったのかな?」とか考えたくないじゃないですか。だったらLINEを交換しない距離感でいることも大事だと思うんです。
この人はLINEでやり取りをする人、あの人はメールだけの人、といろいろな距離感の人がいていいと思います。
——すごく分かります。SNSだけの人とか。別に仲が悪いとかではなくてそういう距離感の人なんですよね。
距離感を無視してくる人は隕石だと思う
ふかわ:でもたまにその距離感を急に飛び越えてくる人もいますよね。
——います!!
ふかわ:僕は隕石と呼んでいます。「隕石が来たぞ!」って(笑)。でもその隕石はしょうがいないんですよね。こっちは気にしている軌道があるからその軌道に沿って距離感だ銀河系だとか言っているけれど、隕石はそういうのないから。ただ落下するだけなので。
みんなに「軌道を守って!」「距離感を守って!」と求めるのはダメなんですよね。距離感を気にする人もいればまったく気にしない人もいる。たまたま僕は気にするタイプだったというだけです。
——そういう意味で敬語ってすばらしいなと思います。距離感がきちんと守れるから、距離を詰めたくない人にはひたすら敬語で接すればいい感じで距離感を保てますよね。
ふかわ:僕もそう思います。特に呼び方は距離を表しますしね。僕は、距離感とかそういうのを大切に丁寧にしている人のほうが個人的には好きなのですが、意外と結婚相手は隕石のほうがいいのかなと思うこともあります。パートナーとして全部ひっくり返してくるのもアリなのかなと思います。
ただ、繰り返しになりますが「その人を理解しよう」とか「この人との関係を良くしよう」と思うのは本当にもう苦しみの始まりというのは確か。理解できないことを理解し合ったほうがいいんじゃないかなと思います。
【前編】ふかわりょう「人生は音楽。一人一人の音色を大事にして」
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘)
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情報元リンク: ウートピ
「距離感を無視してくる人は“隕石”だと思え」ふかわりょうに聞く人付き合いのコツ