「性の話を、もっと気軽にオープンに」をスローガンに掲げ、「性教育YouTuber」として活動を行なっているシオリーヌこと大貫詩織さん。
彼女が危惧しているのが、性について触れることがタブー視される風潮です。さらには、「大人が隠せば隠すほど、子どもが性による被害を被りやすくなる」と警鐘を鳴らします。連載第2回では、私たち大人が性と向き合う際に知っておきたい情報について詳しく伺いました。
必要となる性への知識は年代ごとに変化する
——YouTubeを主戦場として活動されていることもあり、シオリーヌさんの性教育動画に関心を持つのは10代や20代の若年層が中心なのかな、と想像しているのですが、実際にはいかがですか?
シオリーヌさん(以下、シオリーヌ):メインの視聴者は10代から20代前半の方が多いですが、意外と幅広い年代の方が見にきてくれるんですよ。男女比も半々。10代、20代はまさに性教育を受ける当事者として、30代以降の方は、もちろん当事者として学ぶこともあるでしょうし、子どもに性教育を伝える側の立場として視聴してくれているように感じます。私が伝える事実は一つですが、世代によってその知識がなぜ必要になるのか、立場が異なっているという感じですね。
——性教育というと、思春期の子どもたちに向けられるものというイメージが根強いですが、確かにすべての世代が男女問わず学ぶ必要がある分野ですよね。
シオリーヌ:そうですね。私としても、全世代に向けた発信を意識しています。世代ごとの性への関わりについて段階を追って説明すると、まずは「性教育を受ける立場にある子ども世代」。第二次性徴期で体が大きく変化し、女子は生理、男子は射精を通して自分たちが生殖可能にあることを知り、その意味を考える年代です。身体や性行為などについて、具体的な知識を身につける必要がある年代でもあります。
そして20代〜30代の「性が日常にあり、妊娠・出産が自分ごとになる若者世代」。10代で身につけた基礎知識をもとに、パートナーシップやライフプランにどう生かしていくか考え始める年齢です。性感染症や子宮ガン検診など、自分の身体にまつわるさまざまな対応が必要になる年代でもありますよね。あと、性行為や妊娠に関する問題を、パートナーに委ねることなく自己決定していいんだと、エンパワメントが、さらに必要になる年代だとも私は思っています。
そして最後が、「子どもたちの性教育を支援する側にある大人世代」。自分の性に対する価値観が子どもに与える影響に気づき、子どもから悩み事を受け取った際に、どう対応するかが問われる世代です。
綺麗事でごまかさない。大切なのは、必要な情報を包み隠さずに伝えること
——改めて、どの世代にも必要な知識ですね。それなのに、いまだに性についての話題はタブー視され、恥ずかしいこととして刷り込まれていることに我ながら違和感をおぼえます。自分の中でも、性についての情報がほとんどアップデートされていないですし……。
シオリーヌ:アップデートが必要だと気づけている人なら、意識的に情報を取りに行くこともできるはず。問題なのは、性について触れることをタブーだとする世間の風潮です。大人の中にその価値観が固定され続ける限り、不利益を被るのはいつでも子どもの側なんですよ。
どんなに大人が制限をかけたところで、子どもがアダルトコンテンツにたどり着く可能性はある。子どもが自分で探しにいかなくても、ネット広告などで容易に目に触れてしまう環境にあることも課題だと感じています。
——PCで子どもの検索履歴を見てショックを受ける大人世代の話は、よく耳にします。
シオリーヌ:最近では、「親がスマホのアプリに制限をかけてしまった」という若い人の悩みもよく耳にします。でもそうやって大人が隠せば隠すほど、適切な情報を得てもらう機会を逃しているように思うんですよね。
関心が高まっているのであれば、その機会に正しい性教育を提供することでより深く知識が定着するかもしれませんよね。
——そうですね、ハッとしました。ただそれも、大人が正確な知識を身につけていることが前提になってきますよね。シオリーヌさんが若い子たちに性の話をする上で、一番気をつけているのはどんなことなのでしょうか?
シオリーヌ:あまり抽象的・道徳的観点から話をしないことは大事にしています。よく、「誰もが愛されながら生まれてきた、唯一無二の大切な存在」「だから自分自身のことを愛してあげましょう」みたいなキレイな表現、目にしますよね。でも悲しいことに、その言葉は誰にでも当てはまるわけではないと思うんです。「自分は例外なんだ」と、疎外感を強めてしまう子どももいる。もちろん誰一人として傷つけないことは難しいですが、私のスタンスは「あなたに悲しい思いをして欲しくないから、いざ困った時に必要となる情報を隠さず教えます」というものです。そのスタンスを通して、私が「あなたたちを大切に思っている」ということが伝わればいいなと思っています。
(文:波多野友子、聞き手、編集:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
「誰もが愛されて産まれてきた」とは言わない。性教育YouTuberシオリーヌが心がけていること