マンガ家で俳優、タレントとしても活躍中の蛭子能収(えびす・よしかず)(72)さんの新刊『死にたくない 一億総終活時代の人生観』(角川新書)が10月10日に発売されました。
“人生100年時代”を念頭に、蛭子さんが「老い」「家族」「死」に真面目に向き合ってみた内容です。
「余計なことはしない」をモットーとする蛭子さん流の人付き合いのコツは?
【前編】生きてれば、楽しいことのほうがちょっと多い。蛭子さんが「死にたくない!」と思う理由
もめそうになったらとにかく先に謝る
——蛭子さんの人付き合いのコツも筋が通っていてすごいなあと思いました。「自分が時間とお金を奪われたくないから、他人の時間とお金も奪わない」だから「余計なことはしない」。確かにそうですね。
蛭子能収さん(以下、蛭子):ちょっと消極的な理由ですけれどね。昔、人間関係ですごく面倒くさいことがあったんです。だから、なるべく争いをしない生き方をしようって心に決めました。ケンカしそうになったり、もめそうになったりしたら、とにかく先に謝る。
例えば、街で肩と肩がぶつかったとしても、向こうからぶつかってきたとしても、自分から謝れば絶対にケンカになりません。無意味な争いはしないって決めています。
——こちらが悪くなくても謝るんですか? 悔しい気持ちはないですか?
蛭子:そんなの全く思わない。あとでボコボコにされるよりはいいかなって。僕、ケンカになったらすごく弱いと思っているんです。だからなるべくケンカをしないように生きているつもりです。「ちょっと情けないんじゃない?」と思われるかもしれないけれど、別に死ななきゃいいやって。生きている人のほうが勝ちって思っているんです。
——やっぱり根本に「死にたくない」というのがあるんですね。
蛭子:それはすごくありますね。だって、死んだら楽しいことは何もない気がするから。
苦手な人には元気にあいさつをする
——読者には働いている人も多いのですが、やっぱり職場や仕事での人間関係に悩んでいる人が多い印象です。
蛭子:僕がアドバイスするとしたら、本にも書いた通り、苦手な人にも取りあえずあいさつだけはするということかな。“嫌な人”って言っても一年、一生、ずっと嫌なわけではないし、嫌な人にもニコニコあいさつをしているうちにその人のことを分かってくるかもしれない。元気にあいさつしていれば、周りのみんなからは好かれるし、自分の信用は守られると思います。
——それは芸能界で培った人間関係のコツなんですか?
蛭子:そうですね、おそらく芸能界で培った部分は大きいのかな。知らない芸能人と廊下で会っても、「こんにちは」とあいさつだけはするようにしています。
——でも、「余計なこと」はしないんですよね?
蛭子:余計なことはしないです。そういうことをしだすと面倒くさくなるから。例えば、差し入れをしたら相手もお返しを買わないといけないですよね?
——他人の時間とお金を奪うことになる。
蛭子:そうです。みんな勘違いをしているなあと思うのは、嫌いな人と仲良くなろうとしちゃうんですよね。そうすると、相手をどんどん嫌いになっちゃう。僕は、自分からは嫌な人に近寄らないし、間違っても自分から「ご飯に行きましょうよ」なんて絶対言いません。なるべく自分の存在を消して、出しゃばらない。それは僕の鉄則です。
自分を低く見積もったほうが人生は楽
——「年上だからって偉そうにしない」というのも「なるほどなあ」と思いました。蛭子さんから見たら、20代、30代の人たちはまだまだ若造かもしれませんが、それでも経験を積んで中堅といわれる年代になるとだんだん傲慢になってくる部分も出てくると思います。あとは、年上の人たちが偉そうに武勇伝を語ったり、年下の人たちに説教したりしているのを見ると「ああはなりたくない」と思います。
蛭子:僕は常に低姿勢を心掛けています。年下の人にも低姿勢で敬語で接する。どんな現場でも自分が一番下くらいの気持ちでいる。それだけで、不快なトラブルを避けることができるし、人間関係が円滑になるんです。何より、僕自身が一番楽しい。結果的に自分の身を守ることにもつながります。
そして、普段から自分のことを低く見積もっておく。今はやっている「自己肯定感」の考え方からはかけ離れていますが、下手に自己肯定にこだわって自分の力を見誤ったり、周りの反感を買ったりするよりは、つまらないプライドを捨てて自分のことを低く見積もっておいたほうが人生は楽だなと思います。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)
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情報元リンク: ウートピ
「苦手な人には元気にあいさつをする」蛭子さんに聞いた人付き合いのコツ