臨床心理士のみたらし加奈さんによる初の書籍『マインドトーク』(ハガツサブックス)が6月30日に発売されました。“自分との対話”を意識したエッセイで、自身の生い立ちや家族、パートナーとの関係、“顔出し”する臨床心理士としてSNSを中心に発信する理由などをつづっています。
第1回目では、初の著書を執筆した経緯について伺いました。第2回目の今回は最近は日常会話にも登場することが多い「自己肯定感」について伺いました。
「私は自己肯定感が低いからダメ」って思っていない?
——前回「心理学の用語は注目度が高くて手に届きやすい分、間違った解釈をされやすい」というお話がありました。「自己肯定感」が一例として挙げられましたが、ウートピでも「自己肯定感」を見出しに持ってくるとアクセスがぐんと伸びるんです。たくさんの人が関心を持っているのだなと思うと同時に、間違った解釈を広めないよう使い方に気をつけないとと思いました。
みたらし加奈さん(以下、みたらし):メディアやSNSでの使われ方を見渡すと、「自分を無理やりポジティブに上げていく」という意味で使われることが多いですね。外側だけをポジティブにして、少しでも自分を否定する感情が入ると、「私は自己肯定感が低いからダメ」みたいな感じで、落ちていっちゃう人は少なくないです。
インスタグラムでいただくコメントやDMでも「私は本当に自己肯定感が低いんです」とか「自己肯定感を高くする方法は何かありますか?」というメッセージをいただきます。間違った知識が広がったことによって強迫的になっているのを感じます。「強迫的」というのは、その言葉にこだわりを持ってしまったり、切羽詰まった状態で向き合おうと頑張り過ぎちゃったりという状態を指すのですが、この前もタクシーに乗っていたら「自己肯定感を上げる方法とは?」という広告が出ていてついにここまで来たかと思いました。
「自己肯定感」の本来の意味
——元々の「自己肯定感」の意味について詳しくお聞かせください。
みたらし:『マインドトーク』の「自分らしく」という項でも触れたのですが、私はいつも「自分にはプラス3の自分とマイナス3の自分がある」と説明しています。人ってコンディションが日々移り変わるものですよね。でも、どうしても自己認識として「これが私らしい」「これが自分だ」と思うのって「プラス3」のときが多いんです。
例えば「今日は仕事がうまくいった」と思ったとして、その状態を自分の「0(ゼロ)」ベースにしがちなんです。本当は調子が良くてプラス3の自分なのに、なぜかゼロを置いてしまう。逆に、プラス3をゼロに置いていることによって、「今日はやる気出ない」「何をやってもうまくいかない」というマイナス3の自分をマイナス6に感じてしまうんです。そうなるとなかなか戻ってこれないし、自分を受け入れられないですよね。
「自己肯定感」とは、プラス3の自分もマイナス3の自分もその間のゼロの自分も、全部自分自身だと受け入れて手綱を持ってあげることなんです。「今日はちょっとやる気が出ないな」と思ったとしても、自分の本当のゼロ地点を分かっていれば「ちょっと休めばゼロに戻れるかな」という按配(あんばい)が分かるようになるし、「今日はすごく調子がいい」というときは「これはプラス3の自分だから下がるときがくるかもしれない。それに備えよう」という感じで自分のアップダウンを把握できる。それが自己肯定感につながっていくと考えています。
——プラス3の自分とマイナス3の自分を把握することが大事なんですね。
みたらし:そのためにはプラス3とマイナス3の自分を書き出してみることをおすすめしています。人それぞれ調子が悪いときに出ちゃう無意識のクセがあると思うんですよ。例えば、「ベッドの中でダラダラ携帯をいじっちゃって15分くらいオーバーしちゃう」とか。
心と体はつながっているので、サインみたいなものが小さくても必ず出ているはずです。それを細かく日々の日記なり、SNSでもいいんですけど、書き出してあげる。サインに気づいてあげることで、自分でも知らなかったクセを知ることができます。
——自分を知る作業でもあるんですね。
みたらし:まさに。自己肯定感は、あるがままの自分を受け止める感覚なので、無意識の部分まで根を伸ばしてあげる。意識的にメモしたり記録したりするのが適切な自己肯定感を持つためには大事だと思います。
※次回は9月22日(火)公開です。みたらしさんに「自分を大事にすること」をテーマにお話を伺います。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)
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情報元リンク: ウートピ
「自己肯定感が低いからダメ」って思っていない? 自己肯定感の本当の意味【みたらし加奈】