女性誌やウェブメディアなどで数々の美容記事を手がけるライターの長田杏奈さん。ツイッターでは「おさ旦那/長田杏奈」として、美容のこと以外にも私たちを刺激してくれるメッセージを発信しています。
長田さんの初の著書『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン)が6月に出版され、その発売記念トークイベントが2019年6月25日に TSUTAYA TOKYO ROPPONGI(東京都港区)で行われました。ゲストは、劇団雌猫のひらりささんと、She is編集長の野村由芽さん。
出版記念イベントは初めてという長田さんの、記念すべきイベントの様子を全4回にわたってリポートします。
自尊心ブートってどういう意味?
長田杏奈さん(以下、長田):私の初めてのイベントにお越しくださりありがとうございます。ゲストには劇団雌猫のひらりささんと、女性向けコミュニティメディア「She is(シーイズ)」編集長の野村由芽さんをお迎えしています。今日はぜひ「#自尊心ブート」でSNSに投稿をして自尊心を上げちゃってください!
野村由芽さん(以下、野村):「#自尊心ブート」ってどういう意味ですか?
長田:私がイメージしたのは、昔流行したエクササイズプログラムの『ビリーズブートキャンプ』。ビリー隊長が「がっつりいくぞー!!」って熱血指導していましたよね。あれの自尊心版をやりたい!という気持ちで来ました。
ひらりささん(以下、ひらりさ):なるほど。そういうイメージで自尊心をブート(起動、立ち上げる)する。
長田:そう。ゲスト2人との関係を紹介すると、ひらりささんとは、昨年、ひらりささんが所属する劇団雌猫が出した『だから私はメイクする』(柏書房)という本でインタビューしてもらったのがきっかけで出会いました。どうして私に声をかけてくれたの?
ひらりさ:ツイッターを見ていて「おさ旦那」さんが気になっていたんですよね。私以外の3人*はその時点であまり長田さんのことを知らなかったけど、私は「彼女に取材する!」と言い張って。大成功でした!
*劇団雌猫は平成元年生まれのオタク女子4人組。メンバーは、ひらりさ、カン、ユッケ、もぐもぐ。
She isで伝えたいこと
長田:ありがとう。由芽ちゃんも自己紹介をお願いします。
野村:She isという場所を運営している野村と申します。She isは、「自分らしく生きる女性を祝福するライフ&カルチャーコミュニティ」。2017年に私と竹中(万季)という女性の2人で立ち上げました。ウェブマガジンやギフト、イベントなどを魅力的な女性たちと一緒につくっています。
長田:何がきっかけでスタートしたの?
野村:20代から30代になるタイミングで、「こうあるべき」という世の中の声に違和感を覚えるようになって。例えば、結婚していなければ「結婚は?」と聞かれて、結婚が決まると「子どもは?」って聞かれて……というような。
でも、私は「もっと個人は個人のままでいい」と思っていたんです。変化しないことをよしとするという意味ではなくて、ありのままでいることも、なりたい自分になることも含めて、自分で自分の人生を肯定できるようになるって証明できたらいい。そういう場所を運営するために、She isを立ち上げました。そこで、杏奈さんのインタビューや連載も掲載しています。
長田:She isの連載『PUNK THE BEAUTY!越境するコスメティック』では、こんな条文を考えたんだよね。
【顔面における自己表現・容姿選択の自由、美容幸福追求権】
すべての人間は、顔面における自己表現・容姿選択の自由、及びそれぞれ多様な美を養い幸福を追求する権利を尊重される。ジェンダーや年齢、〇〇(好きな言葉を入れてね♡)その他を問わず、好きなメイクをし、またはしない生来の自由を持つものであり、何者もこれを侵害できない。
タイトルは絶対に譲れなかった
長田:ということで、やっと本題!(笑)。トークテーマ「どうしても、『美容は自尊心の筋トレ』をタイトルにしたかった件」に入りましょう。実はこれまでも「うちから本を出しませんか」というお誘いはあったのですが、タイトルが分かりにくくてダメだと却下されることもあって……。
ひらりさ:美容、自尊心、筋トレというワーディングが「概念」すぎると?
長田:そう。版元のPヴァインさんも最初はタイトルに難色を示していたけれど、話し合いの末にムリを言って通してもらいました。
野村:どうしてこのタイトルにしたかったんですか?
長田:話せば長いのですが、私が自分の本を書こうと決意するに至ったのは、友人の雨宮まみさんがいなくなってしまったことが大きくて。というのも、私は普段、美容の記事を書くときや人に取材をするときは、黒子に徹して極力自分を出さないようにしてきたんです。
まみさんが亡くなったとき、まみさんみたいなことを書いてくれる人はもういないんだという喪失感がすごくて。でも、自分だって文章を書く仕事なのに、ただただ「あんな人もういない」と悲しむだけで、職人ぶって”自分を出さない”文章でお茶を濁し続けるのが、ひどく無責任なことに思えてきたんです。
そんなある日、ツイッターの投稿を読んだ、まみさんの担当編集だった方から「美容は自尊心の筋トレという言葉に共感しました。長田さんの思う美容の話を書いてみませんか」というオファーを頂いたんです。「自尊心の筋トレ」というワードに反応してもらえたのが、嬉しかったし、センスが信頼できるなと。
この人の胸を借りたら、自分を出して書くのも怖くない!と思えたんです。自分の意見を書くきっかけになったのが、「美容は自尊心の筋トレ」だったので、本を出すならそこから始めたかった。
ひとくちに美容と言っても、いろんな考え方があるけれど、私が自分の名の下で発信するときは、「自分を大切にする美容」を伝えていきたいなと。だけど、ただ甘やかすんじゃなくて、プランク(体幹トレーニングの基本のひとつ)とか腕立てみたいな。少し負荷はかかるけれど、続けるうちに「ちょっと平気になったかも」みたいな美容の話がしたいと思って、どうしてもこのタイトルにしたかったんだ。
ワーカホリック気味な時にふと気づいたこと
ひらりさ:長田さん、一時期ものすごくワーカホリックでしたよね。その頃の生活もこの本には反映されている?
長田:はい。私は結構「自分追い込み型」なところがあって。受験や就活を乗り越えた人って、なんか社会に適応する過程で、自分追い込み型になりますよね。
「やればできる。やらねばならぬ」みたいな。本当は心の底からそう思っているわけではないのに、社会に適応するために、自分で自分を追い込む。MAX追い込んでた時期は、『平家物語』を読んでいたんですよ。
ひらりさ:諸行無常のやつね。
長田:そう。『平家物語』の中には、人の死に方の話が出てくるのね。「人は必ず死ぬ。せめて散り際は美しく」みたいな。そういうなすべきことをなして死ぬ話を毎日インプットしながら、仕事をガーッとして、気づいたら机の上に突っ伏して気絶するように寝る。
でもそんな殺伐とした時期に、美容に救われていたところもあって。美容って、キレイな色、うっとりするテクスチャー、素敵な香り、心ときめく世界観みたいなものがあるんですよ。そういうものに仕事で触れているうちに、「ねばならぬ」みたいなものから少しずつ自由になれた気がします。
スキンケアとかメイクを、自己表現や自分をいたわるためにすることで「社会の歯車として立派に死にます!」みたいな感覚から、本来の自分に少し戻れるような気がしたんですよね。……って、私の例え話わかるかな? 大丈夫かな? 話すのが苦手なんです私(苦笑)。
ひらりさ:大丈夫。長田さんらしさが伝わってますよ!
第2回は9月19日(木)公開予定です。
(構成:安次富陽子)
- 「女子の人間関係=モヤモヤ」はもう古い ストレスフリーな“ごきげん”生活のススメ
- 「毒のある言葉」は受取拒否してOK! 今、人間関係に悩む貴女に伝えたいこと
- 「人は人、自分は自分」で生きるために 私がやめた3つのこと
- 恋愛とエロを深掘りするメディアの編集長の私が、90歳のセックスセラピストに感じたこと
- 人生の後半戦で活躍。こんなに夢のある話ってある?【ドクタールース】
- ハイヒール、婚活、家計簿…。ひらりさ・岡田育の「やめる基準」って?
情報元リンク: ウートピ
「自尊心がっつり上げて行くぞー!」長田杏奈さんが初イベントに込めた思い