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「自分の中にないものはない」と考えるようになったら楽になった【瀧内公美】

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売れない女優マチ子の眼差しを通して、“女”であること、“女優”であることは何か? を問いかける4人の監督による連作長編『蒲田前奏曲』が公開中です。

そのうちの一作、安川有果監督が手がけた「行き止まりの人々」に出演した瀧内公美(たきうち・くみ)さん。とある作品のオーディションでセクハラの実体験を話す女優・黒川を演じています。

瀧内さんと言えば、ドラマ『凪のお暇』で主人公を追い詰める“イヤな同僚”を演じたと思ったら、『恋はつづくよどこまでも』では主人公の頼れる先輩を演じ、作品によって見せる表情がガラリ。直近では、2019年に公開された映画『火口のふたり』での演技が評価され、第93回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞を受賞するなどその演技が高く評価されています。

「女を演じるなんて、くだらない」というコピーが印象的な本作。瀧内さんに映画や女優という職業についてお話を伺いました。

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演じたのはセクハラ体験を告白する女優

——「行き止まりの人々」で瀧内さんが演じた黒川はオーディションで自身のセクハラ体験について赤裸々に告白します。黒川を演じるにあたり意識したことはありますか?

瀧内公美さん(以下、瀧内):正直、セクハラや#MeTooについて積極的に自分が興味を持っていたわけではないので、そんな人間がこの題材に関わっていいのかと思い、悩みました。「私にできるのだろうか?」と不安だったのですが、マチ子を演じたプロデューサーの松林うららさんが「この映画で描かれたことの中に実体験がある」と明かしてくださり、この映画が「女性の置かれている立場や生きづらい部分を女性目線と男性目線を交え、1人の女性が環境によって多面的な姿が見えてくるのがテーマ」というお話を伺って、監督と作品を信じてやってみようと思いました。

『蒲田前奏曲』の1シーン

『蒲田前奏曲』の1シーン

「ないものはない」と思ったら楽になった

——「女を演じるなんて、くだらない」というのがこの映画のコピーです。女性は身体を持っている存在であり見られる存在と考えたときに、女優という職業は女を演じる、見られる究極の職業だと思うのですが、瀧内さんはどうお考えですか?

瀧内:確かに、舞台あいさつで人様の前に立ったり、カメラの前に立ったりするときに「見られる」ことを意識しますが、「自分自身を演じているか?」については正直分からないですね。ただ、この質問の答えになるかどうかは分からないのですが、私自身「ないものはない」と思っています。

——ないものはない?

瀧内:演技でも何でも自分の中にあるものしか出せないので、逆にどんな私演じている姿も自分なんだろうなと思います。人間は多面的なものだし、関わったすべての皆さんからいろいろな自分を引き出してもらっている。質問とズレるかもしれないですが、私にとって女優は「あ、こんな自分がいるんだ」「私にはこんな感情があるんだ」と気付かされる職業でもあるのかなと。

——そんなふうに考えるようになったのは何かきっかけがあったのでしょうか?

瀧内:ある作品をやっていたときにあるスタッフの方が助手の方にその話をしていたんです。「嘘をつくな。ないものはないんだから」と話しているのを近くで聞いていて「あ!」と思いました。生き方にも通じるなと。それ以来、そんなふうに考えるようになったら、生きるのが楽になりました。

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一人でやっている意識はない

——女優は評価される職業でもあると思います。瀧内さんはこれまでの出演作でも数々の映画賞を受賞されていますが、評価されることに怖い気持ちや恐れなどの感情はありますか?

瀧内:評価されることが怖いという気持ちはないですね。単純にうれしいです。そもそも自分が何かをしたと思っていないからかもしれません。

『火口のふたり』ではキネマ旬報ベスト・テン主演女優賞いただきましたが、あの作品は秋田の地元の皆さんと協力して作った映画で、スタッフにも支えられました。賞をいただいたことで皆さんへの恩返しになると思ったし、受賞を機にたくさんの人に見ていただけるかもしれないと思ったら、うれしかったですね。ちょうどDVDの発売時期とも重なりましたし(笑)。

——期待されることにプレッシャーを感じたりすることは?

瀧内:期待も感じたことがないんです。作品が目の前にあるのは単純にうれしいですし、一緒にお仕事した人からまた呼んでいただいたときは、より一層気合いが入るタイプですね。やっぱり、映像作品はキャストの皆さんやスタッフの皆さんと作るので一人じゃないんですよね。カメラの演出、照明の演出、役音の演出、空間の演出などすべてに演出が入っているものなので、「みんながいれば大丈夫でしょう」という安心感があります。(プレッシャーを感じないのは)自分一人でやっているとは思ってないからでしょうね。

■映画情報
『蒲田前奏曲』

【クレジット】 (C)2020 Kamata Prelude Film Partners
【配給】和エンタテインメント、MOTION GALLRY STUDIO

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘、メイクアップアーティスト:藤原玲子
ヘアスタイリスト:YAMA、衣装協力:Ray BEAMS)

情報元リンク: ウートピ
「自分の中にないものはない」と考えるようになったら楽になった【瀧内公美】

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