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「聞き上手」それってホメられてるの? 【パックンに聞いてみた】

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『ツカむ!話術』『大統領の演説』に続いて『ハーバード流「聞く」技術』(すべて角川新書)を上梓した、お笑いコンビ「パックンマックン」のパックンことパトリック・ハーランさん。

「実は、聞くことに力点を置いたコミュニケーションが持つ可能性はとても大きい」と話すパックンに、3回にわたってお話をうかがいます。

自分を変え、相手との関係性を変える可能性を持つ「聞く力」。普段何気なくしている「聞く」という行為を、今一度振り返ってみませんか。

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聞きたいものだけ聞いてしまう私たち

——本書の前には話術や伝え方についての本を出されていますが、なぜ今、「聞く」にフォーカスしたのでしょうか。

パトリック・ハーランさん(以下パックン):聞いていないことや聞こえていないことがあると、もったいないと気づいたからです。実際の生活でも聞き方によって情報量に差が出るし、自分の評価が変わってしまうという経験があります。

僕たちは、つい話すことにフォーカスしがちですが、本当にコミュニケーション能力を高めたいのなら、何をどう発信すればいいのかを、ヒアリングして、核心をつかんでから決めたほうが実は手っ取り早いんです。

コミュニケーションについて書いた、このシリーズは3冊目になるのですが、もしかしたらこの本が一番重要かもしれないと感じています。結局は「聞く」に落ち着くんだなと。

——そう思うようになったきっかけが?

パックン:自分のマインドが少し大人になったというのもあるし、聞くことの大切さを痛感、実感する日々がこの数年で続いているというのもあります。僕、「ちゃんと聞いてなかったな」と思うシーンが結構あったんですよ。特に妻やマネージャーに対して「ハイハイ」と生返事することも増えてきて、コミュニケーションにイヤな空気が漂うことも……。だから、改めて聞くことの大切さを考えようと。この本は、そういう自分に向けた、文字通りの“自己啓発本”でもあるんですよ。

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——これは、私が気をつけなきゃと思うことでもあるのですが、歳を重ねると、人の話を聞けなくなってきたりしませんか?

パックン:そうなんですよ。モスキート音と同じですね。そこに音はあるのに“聞こえていない”っていう。

——自分なりの価値観なりが定まってきちゃって、「これは聞いても意味ないな」と勝手に判断しちゃう。「聞く」という行為には何らかのバイアス(偏り)があるということを、この本を読んで改めて気づかされました。

パックン:バイアス、かかってますよ〜。たとえば、スーパーマーケットに行ったときに、ちょっと意識してまわりを見てほしい。きっと、買ったことのない商品がたくさんあることに気づくはずです。調味料やソースやドレッシング、パスタ……いつもの定番にしか目がいかなくても、そのまわりにはいろんなものがある。意識して見てみれば「これも面白そう」「冒険しようかな」と思うようになります。

いつも同じ売り場に行って、同じ商品を買って、急いで帰ろうとする。この買い物の動作と一緒で、会話からも聞きたいことだけ聞いて、持ち帰りたいものだけ得て、帰ろうとしがちです。この習慣が怖いなと思うんですよ。

——「自分に関係ないから」「興味ないから」と即判断するのは、実はすごくもったいないことをしているのかもしれない……。

パックン:僕は最近、子どもが観る動画を一緒に観るようにしてるんですよ。小中学生の間で流行っているアイドルのダンス動画とかオモシロ動画とか。普段の僕はそこに時間を割かないけど、観てみると「あら? 案外面白い」と思うし、「これ、もしかしたら僕にとって何かヒントになるかも?」とも思います。

忙しいから、そんなことに時間を割くより(経済新聞の)『ウォール・ストリート・ジャーナル』読まなきゃ、みたいな固定観念や自己意識はあるけど、ジャーナルに書いてあることって毎日ものすごく変化するわけじゃない。でもあのオモシロ動画は、流行が次々と変わり「今まで観たことがない」という点で得るものがあります。

——聞きたいことだけを聞いているだけでは、得るものも少ない。

パックン:僕たちは受信機みたいなもので、いつも決まった周波数のものにしかダイヤルを合わせない。でも、もっと適当にダイヤルを回して、幅を広げてキャッチしてみるといいかもしれないですよね。あ、もうみんなデジタル世代でしょう? ダイヤルを回すなんて、たぶん僕の世代じゃないとわからないね。あぁ。

「聞き上手」と言われてモヤモヤ

——私の世代もわかりますよ! 話は変わって、「聞き上手」についておうかがいします。「聞き上手」と言われると、たとえ褒められている文脈でも、「おとなしい人」「自己主張しない人」と言われたようで、モヤモヤしてしまうのですが……。

パックン:「上手」がついているんだから、誉め言葉だと思っていいと思うんですよ。本にも書きましたが、対話においては、コミュニケーションの達人は結局聞き上手なんです。演説とか、ひとり喋りの場であればまた違いますけど、基本的に人と話して盛り上がるのは、自分の話をうまく引き出してもらったとき。引き出し上手はコミュニケーションの達人です。

「うんうん、わかるわかる」という受動的な聞き方も素晴らしいですよ。カウンセリングのプロは、すぐ解決策を出さずに気持ちを繰り返してあげる。「ああ、本当につらかったですね」「悲しかったですね」「がっかりしましたね」「そのときの気持ちは?」って、こういう聞き方もすごく重要なんです。

それでも「聞き上手」と言われることにコンプレックスを抱いてしまうのなら、さらに上を目指して、もっと能動的に引き出す。変な仕掛けをしてみるといいでしょう。

——本の中では、「聞く」→「聴く」→「訊く」→「効く」という4ステップが書かれていましたが、能動的に引き出すというのは「訊く」、つまりいい質問を投げかけるということですね。

パックン:いい質問は、相手も自分も思考を深めるきっかけになるし、刺激にもなる。僕も取材でいい質問がくると、すごくうれしくなります。日常的な会話でも、いつもと違う質問をしてみるといいですよ。「もしも」みたいな感じでもいいし。たとえば、「宝くじ当たったらどうする?」「生まれ変わったら誰になりたい?」「自分の何かをひとつ直すことができたら何を直す?」「配偶者の何かを直せるんだったら何を直す?」……。

いろいろな取材で話していることですが、コミュニケーションはスポーツです。練習してうまくなるんです。だから、スポーツ感覚で挑戦してみるといいと思います。

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30代は「聞くトレ」チャンス

——コミュニケーション能力って、もともと持っている資質みたいなイメージがあるのですが、トレーニングすれば伸びるアビリティだと思えばいいでしょうか?

パックン:もちろん向き不向きはあるし、育った環境から影響を受けるところもあるけれど、練習さえすれば誰もがうまくなるんです。僕、26歳のときにほとんど未経験の状態で卓球を始めて20年くらい経つんですけど、今では高校まで卓球部だった人と対戦してもいい勝負ですよ。育った環境とかは対戦相手のほうが絶対有利なんですけど、僕は真面目に練習して腕を上げていった。同じように、コミュニケーションも練習すれば「慣れるもん」なんですって!

——今、30代だからもう伸びしろがないと思わないで、今が「聞くトレーニング」のチャンス時と思えば……。

パックン:そうそう! 今から練習すれば、50代になったときにどれだけ聞き上手になっているのか! しかも30代は、周りの話がちょうど面白くなる時期です。人生経験が積み重なっているから。いろんな過度期があったり、試練を乗り越えたり、周りの悩みとかもあるし、成功例も失敗例も持つ同世代の話が面白いんですよ。

年下の人に対しても、周りから聞いた情報を使って先輩としてニーズに応えることもできるし、世代の違う人たちが思っていることを聞き出して自分の人生に活かすこともできる。

30代だと家庭を持っている人もいますね。30代のうちに配偶者の気持ちや扶養家族全般の気持ちをちゃんと聞き出せるようになれれば、40歳、50歳のときにより円満な関係を築くことができると思いませんか?

——50代まで20年ありますもんね。

パックン:40代の人も、50代の人も諦めなくて大丈夫です。ふさがっている耳を開けて「聞く」ことをたくさんトライしてみてください。

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このインタビューは3月26日に行われました。
第2回は4月27日(月)公開予定です。
(取材・文:須田奈津妃、撮影:青木勇太、編集:安次富陽子)

情報元リンク: ウートピ
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