小説家やエッセイストとして活躍中の燃え殻さんの文春オンラインの人気連載「燃え殻さんに聞いてみた。」を書籍化した『相談の森』(ネコノス)が12月1日(火)に発売されます。書籍の発売を記念して、人気声優の江口拓也さんに書評を寄稿いただきました。
僕と燃え殻さんの出会いは、Twitterでした。
僕のTwitterの使い方は、なんとなく気が合うなあという人をとりあえずフォローして、その人のRTで回ってくるこれまた気が合いそうな人をフォロー、そうしてできあがるTLが、なんとなく気が合う人たちで埋め尽くされて楽しくなる、というものである。
燃え殻さんは、そんなTLに突如現れ、僕の心を鷲掴んでいった。ポジティブなのかネガティブなのかわからない。なんだったら時々めちゃくちゃネガティブ。でもたぶん優しい人で、なんだか落ち着く、という印象の方だった。
燃え殻さんのことを一方的にフォローし、しばらくたったある日、相互フォローになっていることに気がついた。いつの間に! 光栄な気持ちとなんだか申し訳ない気持ちになりながらも、恥ずかしくて特に絡みにいくことはしなかったと思う。
そして何ヶ月かして、燃え殻さんからDMをいただいた。
「はじめまして
江口さま
実はもうすぐ新しい書籍が発売されるのですが、もしよろしければ献本させていただくことは、可能でしょうか?
夜分に突然すみません
燃え殻」
なんて丁寧な方なのだろう、、、! 感動でテンパった返信をしてしまったのを覚えている。
その本のタイトルは『すべて忘れてしまうから』。
読み終わった後、興奮冷めやらぬ僕はこんなDMを送ってしまった。
「ご時世的に気軽にお誘いしていいものかわかりませんが、いただいたお礼にご飯ご馳走させてください」
失礼なやつだ。まだ実際にお会いしたことのない方に送るような文章じゃない。でも、我慢ができなかった。こんな素敵な文章を書く方は、一体どんな人なんだろう。知りたかった。
二度と返信はこないんじゃないか。心配はあったが、後悔はなかった。
すると「ぜひよろしくお願いします。こんな嬉しい感想ありません」と返ってきた。
なんて良い人なんだ!!! 僕の心は、ますます鷲掴みにされた。
そしてお食事会当日。コロナ対策も万全なお店を予約し、先に到着。シラフでは初対面の方と恥ずかしくてうまくいかない僕は、先に一杯ひっかけて待っていた。どんな方なんだろう。失礼のないように対応できるかな。気をつけなきゃ、楽しみだな、などとぐるぐる考えていたそのとき
「お待たせしましたー」
いらっしゃった!
「は、はじめまして! よろしくお願いします! 先に飲んでてすいません、奥へどうぞ!」
「いやいや、僕トイレ近いので端っこで」
き、きたー! 小説に書いてあったやつ!
「ぼ、僕もトイレ近いので、何度も立たせてしまったらすいません、、、」
「いえいえ! おきになさらず」
ス、スマートな方だあ。落ち着け自分。興奮しすぎると変なやつだと思われるぞ。冷静に過ごすんだ。
それぞれ一杯頼み、乾杯して自己紹介からスタート。
そこからはもう、止まらなかった。冷静な自分は何処(いずこ)。
いろんな話をした。小説がとにかく素敵だったこと。そのまま『ボクたちはみんな大人になれなかった』を買って読んだこと。燃え殻さんの人生観。僕の人生観。エンタメのこと。これまでのこと。これからのこと。
いつも人との会話では聞き側に回る僕も、思わずいっぱい喋(しゃべ)ってしまった。燃え殻さんは人生の先輩であり、懐が広いことはもちろんだけど、それ以上の何かが、僕をそうさせていた。
あの日初めてお会いした燃え殻さんと、まるで何年も飲み友だったような感覚で、とてもとても楽しい夜を過ごした。
こうして正式に連絡先を交換させていただき、何度かやりとりをしていたある日、またまたこんな連絡が届いた。
「実はご相談が、、
今度。人生相談本を出すんですが、
ウートピというサイトで、書評といいますか、自分との話といいますか、、
自由で構わないのですが、書いてもらうこと可能でしょうか?」
え!?!? 僕が!?!?
びっくりして文章を3度見くらいした。
自信満々に言うと、僕は文章を書くのがとても苦手だ。小学生の頃、読書感想文がとにかく苦手で、原稿用紙3枚分の文字がどうしても書けなくて
「ぼくはそのとき、とーーーーーーーーーーーーーーーーーーーってもびっくりしました。」
などと棒線でマスを埋めに埋め、先生にめちゃくちゃ怒られたくらいだ。
「書評みたいなものを全然書いたことないのですが、大丈夫ですか、、、?」
とお送りすると
「パッションで書いてください」
とのこと。
パッションならまかせろ! ということで、今に至るわけでございます。
燃え殻さんにだから、相談できること
燃え殻さんの新刊、タイトルは『相談の森』
すべて読ませていただき、なるほどなあ、と思った。
燃え殻さんと初めてお会いしたあの日。
なんだかよくわからないけど、とにかくたくさんの話を聞いていただいた。次から次へといろいろな話題を、臆することなく発することができた。
みんなそうなんだな。
燃え殻さんにだから、相談できる。話を聞いてほしいと思える。
ポジティブなのかネガティブなのかよくわからない人で、でもたぶん、とても優しい人。真剣さと適当さのバランス。でもちゃんと、耳を傾けてくれている。
夜が更けるまで、話していたい。聞いていたい。
答えを出すのはあくまで自分自身なんだ。
という答えを、話し合いながら、わかりあっていく。
燃え殻さんという人間に出会えて、本当に良かった。
『相談の森』という本を通じて、たくさんの人がそう思うのだろうなと、たくさんの中の1人である僕は、感じるのでした。
このような光栄な機会をいただき、ありがとうございました。
燃え殻さん、今度また、ご飯ご馳走させてください。
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情報元リンク: ウートピ
「答えを出すのはあくまで自分自身なんだ」僕と燃え殻さんのこと【江口拓也】