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「気持ち良くなったら終わり」私たちは誰かを罰することはできない【西加奈子×ブレイディみかこ】

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【ニュース】11月6日、ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』がヤフーニュースと本屋大賞が連携して運営する第2回「ノンフィクション本大賞」を受賞しました!

作家の西加奈子さんの小説『i(アイ)』(ポプラ社)の文庫版が11月6日に発売されたことを記念して、西さんとイギリス在住のライター・コラムニストのブレイディみかこさんが対談を行いました。

西さんは、ブレイディさんの最新エッセイ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)の帯に「絶対に忘れたくない、友達みたいな本」とコメントを寄せ、ブレイディさんとの対談を熱望していたと言います。

西さんとブレイディさんの対談の模様を3回に分けてお届けします。

【第1回】「偽善だね」と言われるのが怖い…それでも自分を発信していくこと

「正しさ」で解決できないことを書く

西加奈子さん(以下、西):『ぼくイエ』で、息子さんが貧困家庭の友達に制服をあげる話がありますよね。

ブレイディみかこさん(以下、ブレイディ):ティム君のエピソードですね。

西:ブレイディさんも息子さんも、彼に気持ち良く制服を受け取ってもらうためにどう言えばいいのかをあれこれ考えるんだけど、いざ制服を渡したときに「どうして僕にくれるの?」と言うティム君に息子さんが「君は僕の友達だからだよ」って答えるっていう……。

「私なら何て言うかな?」「ティム君を傷つけない“正しい”言い方って何かな?」とハラハラしながら読んでいたのですが、息子さんの言葉に「それやん!」とハッとしました。愛を感じたし、めちゃくちゃ勇気をいただきました。

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ブレイディ:私も息子の「Because you’re my friend!」という言葉が衝撃だったから書いたのですが、本当にそうですよね。逆に複雑な世の中になっていくと、例えばイギリスの私立の学校が「ベスト・フレンドをつくってはいけない」というルールを作ったんですよ。親友をつくったら、親友になれなかった子がかわいそうだからって。「あの子は私のベスト・フレンド」って言うのはやめて、「みんな私のグッド・フレンズ」って言いなさいって。

西:ポリティカルコレクトネス(ポリコレ)的には「正しい」のかもしれないけれど……。

ブレイディ:そう、でも人間ってそうじゃないんですよね。もちろんポリコレはあったほうがいいと思うけれど、誤った運用の仕方をしたら人間である理由の根本をなくすような気がするんですよ。

この調子でポリコレが進んでいくと、「親友はダメ」という世の中が本当にくるかもしれない。でも、そういう「正しさ」で解決できないことを書いていくのがおそらく文学の役割だと思います。

「愛」という言葉だって、いろいろな愛があるけれど、愛は「わがまま」でもあるわけですよね。「なぜあの人だけ愛するの?」「なぜ私じゃないの?」って。「親友をつくってはいけない」理屈で言うと、最終的に恋愛もしてはダメなことになる。

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西:そうですよね、恋愛はあの人とこの人を区別することでもあるから……。

ブレイディ:愛というのは表裏一体なんですね。キリスト教は「みんなを隣人のように愛しなさい、それが愛です」と説くけれど、それだと究極的には「ベスト・フレンド」はいてはいけないことにもなる。もしかしたら、ものすごく暗くてドロドロしたものや正しくないものもあるかもしれないけど、それも含んだのが愛であり、「i」でもあり、それを恐れちゃいけないし、それをないものにしちゃいけないんじゃないかなと思います。

自分自身のままで相手にぶつかっていく

西:私はブレイディさんの本を読むまでは、誰かのために何かをなそうとするというのは、誰かを自分のスペースに入れる行為だと思っていたんです。「自分の中の何かをひとつずつ、その人のために明け渡していかなあかんのちゃうか」と思っていた。最終的に人間ならざる美しいものみたいになっていくようなイメージがありました。

でも、『ぼくイエ』を読んで思ったのが、ブレイディさんがやってらっしゃることは本当に「i」(愛)なんだなって。自分自身のままで相手にガンガンにぶつかっているだけだし、「それでいいんや」と思いました。

「これは偽善なのでは?」と悩みながらも近くにいる子から手を差し伸べて、近くにいるところから解決していくしかないし、その大切さを朗らかに教えてくれる。この作品に漂う、フットワークの軽さというか明るさの秘密はそこにあるのではないかなと思いました。

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ブレイディ:そう言ってくださって光栄です。迷いながらも毎日を何とかこなしているだけなんですけど……。人間て多分、対処しなければいけない場面にきたらそうするんですよ。そういう場面に遭遇する前は、つい頭でいろいろ考えてしまいますけれど……。

息子を見ていても、「今は何をしたらいいのかな?」と頭で考える前にその場で動いている。もちろん、うちの子はうちの子でこれからいろいろ身に付けなければいけないこともたくさんあると思います。イギリスの、特に労働者階級の社会で生きていくには彼は繊細すぎると思う部分もあるので。連れ合いは息子のことを「ナイスすぎ」とよく言ってますし。

でも、自分を振り返ってみても、本当に人間って土壇場に追い込まれたときに意外に一番正しい決断を下す力があるんじゃないかなと思います。余計なことに目や頭を曇らしている余裕がないので。

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私たちは誰かを罰することはできない

西:息子さんの「人間は人をいじめるのが好きなんじゃないと思う。……罰するのが好きなんだ」という言葉も心に残りました。本当にそうだなと思いました。私も、「#Me Too」のムーブメントで自分自身に似たものを感じたことがあって。

ブレイディ:どういうことですか?

西:あの運動自体はめちゃくちゃ素晴らしいと思って興奮しました。でも、私が積極的に参加しなかったのはまさにその自身の興奮が怖くて。「みんなで声を上げる、ということに参加すると、私のような人間は気持ち良くなってしまうな」と思ったんです。高校のときの体育祭とか、応援団でめっちゃ頑張ったタイプで、危ないんですよね。

ブレイディ:なんか分かります(笑)。

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西:応援しない人に「なんで応援せんの?」ってズケズケ突っ込むくらいヤバい奴だったんですよ(笑)。だから、例えばデモなんかに参加したら、自分が異常に高揚してしまうと思った。もちろんセクハラも性犯罪も許せないけれど、多分私たちはその罪を罰する立場にはないんです。罰するのは法で、私たちは声を上げることができるだけだから。

ブレイディ:そこで勘違いしちゃうんですよね。

西:自分は絶対に罰する側に回ってしまうと思いました。揚げ句にみんなで声を上げることができたら、その高揚で何かを成し遂げた気になってしまうと思ったんです。そこで、私の中の運動が終わるなと。

ブレイディ:「胸のすく感じ」がしちゃう。

西:そうなんです。一方、小説は、自分にとって一番面倒くさくて考えなあかんくて、スッキリしない作業なんです。書き上げても、全然快楽がない。「終わった……」という感じで、ワーッという高揚がないんですよね。私にとっては、ある意味、小説が「危険な気持ち良さ」のストッパーになっているのかもしれない。だから書いているんだなと思います。

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しんどいから小説を書いている

ブレイディ:私は逆に、西さんが小説で自分を書いてらっしゃるんだろうなと思ったときに、ここまで書くのがすごいなと思ったんですよ。

私は身の回りに起こっていることや、そこから目を社会に広げて、自分自身のことはそれほど掘り下げてないから。ここまでやるというのは本当に大変だろうなと思いました。キツイし、疲れませんか?

西:うーん。でも、私は本当に小説がなかったらツルッツルの人生だったと思います。何も考えへんと思うんですよ。つらいニュースも自分の目や耳に入れないと思います。考え出すとしんどくなるから。

でも、高校生のとき、トニ・モリスンというアメリカの作家の作品を読んで、初めて「考えなさい」とどつかれた感じがしたんです。世の中の出来事や自分の身に起こったことにちょっとでもおかしいと思ったら、生きるのもつらくなるから、全部シャットダウンして過ごしていたんです。でも、彼女に「『なぜ?』を大切にしなさい」と言われた気がした。

結果、「何で?」と考え続けるツールは、今の自分にとっての小説だと思うんです。「しんどくないとあかん」と言ったら変ですし、もちろん書くことは幸せではあるのですが……。

でも、小説すら完全に楽しく、気持ち良くなってしまったら、ほんまにあらゆることにツルツル滑っていくだけの人生になっちゃう。自分はそんな人生は嫌だから、小説というものに一生関わっていこうというのは思います。ちょっと疲れるけど。

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(構成:ウートピ編集部、堀池沙知子)

情報元リンク: ウートピ
「気持ち良くなったら終わり」私たちは誰かを罰することはできない【西加奈子×ブレイディみかこ】

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