ワーキングマザーの割合が増える中、まだまだ家事育児の負担は女性に偏りがち。内閣府が発表した「男女共同参画白書(概要版) 平成30年版」によると、6歳未満の子どもを持つ夫婦のうち、女性が家事育児にかける時間は7時間34分なのに対し、男性は1時間23分という結果も出ています。
いつになったら自分の時間が持てるようになるのか……。ところが、株式会社ジョイゾーで役員を務める四宮琴絵(しのみや・ことえ)さんは、3人の子育てをしながら、仕事も複業もパワフルにこなしています。
その生活はどうして実現できたの? 全3回にわたってお届けするインタビューの第2回では現在の働き方についてお話を聞きました。
「元・銀座のママ」の義母に支えられて
——前回、同居している旦那さんのお母さんが仕事を引退したことを機に、10年間の専業主婦生活を終えたと伺いました。働くことに対して家族の反応はいかがでしたか?
四宮琴絵さん(以下、四宮):夫は「べつにいいんじゃない?」という感じでした。義母は、銀座で「四宮」というクラブを40年間も経営していました。女性が働くことにも前向きな人です。なので、義母も「家事は任せて」と背中を押してくれています。
——義理のお母さんと関係がいいのは助かりますね。
四宮:本当に。義母はすごく理解のある人です。たとえば、行きたくないけどどうしても行かなきゃいけない仕事関係の飲み会もあるじゃないですか。私が沈んだ空気を出していると「行きたくない気持ちもわかる。でも、今が頑張り時だもんね」と励ましてくれる。きっとお店でさんざん会社員の悩みやグチを聞いてきたから、私の悩みも理解してくれるんですよね。私の仕事はもちろん、釧路での活動も応援してくれています。
爪を噛むようになった末っ子
——子育てで悩むことはありますか?
四宮:寂しい思いをさせているのではないかという不安はありますね。たとえば、一番下の子がある時期、爪を噛むようになってしまったんです。上の子たちは生まれたときからずっとそばにいられましたが、一番下の子は保育園に預けました。夜も会食が多くて一緒に寝てあげる時間も少ないし、「爪を噛むのは、寂しいからなんじゃないか」と自分を責めたこともあります。
いろいろ考えて、保育園を休ませて一緒に出張に行ったり、釧路に戻るときも地元の預かり保育にお願いしたりするようにしました。都会と比べると雰囲気がのんびりしているし、日によっては保育士の先生と1対1なんてこともありました。子どももそれが楽しかったようで、次第に落ち着いて行きました。
——四宮さんの場合は専業主婦だったわけですから、当時の自分と比較してしまうと葛藤も大きくなりそうです。
四宮:そうですね。「これをやってあげたかったのにできない!」ということは日々あります。たとえば今日(編集部註:取材日)は娘の誕生日なのですが、午後の現時点で何の準備も出来ていません。
専業主婦時代はリビングの壁に「ハッピーバースデー!」とか書いて、凝った装飾をしていました。でも今はそれができません。誰かが私を責めるわけではないですが、私自身がツラくなることは多々あります。でも、そこでくよくよしても仕方ありません。どう頑張っても専業主婦の頃のようにはできないと悟ってからは気持ちを切り替えて、「運動会のお弁当だけはすごい!」とか、「これだけはやりたい!」というものを決めてメリハリをつけるようにしています。
家にも仕事にも「任せられる人」を
——家庭と仕事と地域おこし。ご自身の中に優先順位などがあるのでしょうか?
四宮:必要なときに、必要な場所にちゃんとコミットできるように、いつも代わりに任せられる人がいるようにしています。家庭で私にしか解決できないことがあれば、仕事を調整し、会社でどうしても私が必要になったら、家庭は私がいなくても回るようにチーム編成を変えます。
釧路でのイベントも、これまでは自分中心で回していたところを、地元の大学生にお願いするようになりました。自分たちで運営できるようになれば、私がいなくても困らない。自分ひとりで全部やろうなんて無理です。「お願い、助けて!」と頼れる人を見つけておくこと、自分がいなくても回る仕組みを作ることをしておけば優先すべきことに対応できる環境を作れると思っているんです。
——真面目な人ほどつい自分でやらなきゃと抱えがちです。任せることに罪悪感はありませんでしたか?
四宮:もうだいぶ吹っ切れました。私自身が選んで仕事も地域おこしのこともしているのに、もし私が「ママが家にいなくてごめんね」と言っちゃったら、子どもたちは「謝るくらいなら行かなきゃいいじゃん」ってなると思うんですよね。だから仕事でも地域おこしでも、心から楽しむようにしています。
会社のメンバーにとってもメリットがあると思っています。うちはクラウドサービスやweb会議などをフル活用してリモートワークに対応して、「海外でリゾートワークしたい!」とか、「子どもの夏休みにゆっくり遊びに出たい!」とか、私だけじゃなく社員全員が気軽にできる環境を作っています。取締役である私が自由に働くことで、他の社員も「私もやっていいんだ!」と思えるかな、と。
「仕事ってつまらないと思ってた」
四宮:それから、多くの人に支えてもらっていることを、子どもたちにはいい影響として返していきたいなと思っているんです。以前、地元の小学校に講師として呼ばれて仕事について話したことがあって。
「働くってすごく楽しいんだよ」と子どもたちに伝えたら、「仕事ってつまらないと思っていた」「うちのお父さんは毎晩くたくたになって帰ってきます」ってフィードバックが多くて。
子どもですら「働き方改革が必要!」とか「セクハラ・パワハラをなくさなきゃ!」とか言ってくるんです。仕事には、ツラいとか、大変とか、働くママは大変とか、そういう面もありますが、それだけじゃないですよね。子どもたちには、働く楽しさを伝えられる大人でありたいなと思っています。
最終回は3月20日(金)公開予定です。
(構成:落合絵美、撮影:面川雄大、聞き手・編集:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
「専業主婦時代の自分と比べても仕方がない」母も仕事も複業も楽しくやると決めた