日々心に巻き起こるいろいろな感情の中でも、特に向き合うのが難しいのが「嫉妬」です。嫉妬している自分に気づくと、誰でも嫌な気持ちになって目を背けたくなるもの。でも、『マッキンゼーで学んだ感情コントロールの技術』(青春出版社)の著者で人材コンサルタントの大嶋祥誉(おおしま・さちよ)さんによると、「嫉妬」こそ、自分の感情をコントロールする上で大きな鍵となるそうです。その理由とは?
嫉妬してるのに、平気な顔はしない
——これまで、女性が感情コントロールが苦手な理由についてお聞きしてきましたが、上手に感情コントロールするためのコツはありますか?
大嶋祥誉さん(以下、大嶋):まずはネガティブな感情が自分の中にあることを認めることです。怒りや嫉妬、妬みなど、例外なく誰もが持っているものなのに、情動感染やバイアス、自己肯定感の欠如によって、気づかない、認めない、感じまいとしてしまう人が少なくありません。でも、実は「嫉妬してる自分」を認められることは大したもんなんですよ。認められたら、自分を褒めてあげてください。
——ネガティブ感情を認識し、受け入れることから、感情コントロールは始まると。
大嶋:怒っているのに怒っていないふりをする、嫉妬しているのに嫉妬していないふりをするなど、感情を飲み込むことがクセになると、怒っていても、傷ついていても、平気な態度をとってしまいます。大多数の人が無意識にやっていることなので、まずは素直な自分の感情を感じることが重要です。
いつも冷静でいることが感情コントロールではありません。めちゃくちゃ怒っているとか、もの凄く嫉妬しているとか、表に出さずとも自分の感情をきちんと認めて、受け止めてください。
デキる人は感情のキャッチ&リリースが上手
——感情を受け止めたら、その次はどうすればいいのでしょう。
大嶋:さっさと受け流します。つまり、感情のキャッチ&リリースです。できるビジネスパーソンほど、負の感情をダラダラと引きずりません。
認めれば手放せるし、体から抜ければ、感情は終了します。人間は一生怒り続けることはできません。本当に怒っている瞬間は、実はほんの数秒です。しかし、そこに理由をつけるから手放せずに長引いて、こじらせてしまうのです。
——受け流すための具体的な方法はありますか?
大嶋:手放す方法はいろいろあります。例えば、犬がぶるぶると体を震わせるように体を小刻みに揺らしたり、1分〜1分30秒程度「あー」と声を出したり、感情を紙に書いて転写したりする方法です。また、家族や友人に話すのもおすすめです、とにかく体の外に吐き出すことが重要。躊躇したり、言葉を選んだりせずに、ドロドロとした感情を汚い言葉で口に出す自分もよしとしてください。書いた紙を燃やして捨てれば、よりすっきり流れます。
ネガティブな感情を認められない人ほど、書き出したり、話したりすると気分が悪くなってきます。そんな感情が私の中にあったのかとショックを受けるからです。好転反応なので、認められるようになれば、気分が悪くなることはなくなっていきます。
——キャッチ&リリースをスムーズにするコツは?
大嶋:家族と住んでいる人のほうが自然とできるような気がします。例えば、彼氏とケンカをした、ふられたというネガティブな出来事があっても、家に帰れば家族の対応をしなくてはいけないので、勝手にリリースされることも多い。すぐに吐き出せる相手がいるし、たとえ吐き出さなくても、うるさいなと思いつつ家族と話すことでリリースされていきます。
「どうせ私なんて」という思考回路を強化しない
——ひとり暮らしのほうが、感情に振り回されやすいということでしょうか。
大嶋:その傾向はあると思います。誰にでも当てはまることではありますが、とくにひとり暮らしの人がしてはいけないのは、嫌なことを忘れるためにSNSを見ることです。SNSは負の感情を増長させるだけ。例えば、ふられたあとにたまたま見たのがハッピーウェディングの報告なんていったら最悪ですよね。そこで、勝手にストーリーを作って、悲劇のヒロインになってしまう。
——SNSにあげられる内容は「ハレ」部分ばかりですからね。
大嶋:そうなんですよ。わかっていても影響されるのが人間です。そうして、悲劇のヒロインにばかりなっていたら、どんどんネガティブな思考が習慣化してしまいます。同じことを繰り返し考えることで、脳のなかのシナプスは反復練習をし回路を強化していきます。スポーツがいい例ですが、何度も練習していくうちに、無意識に体が動くようになっていきますよね。
つまり、「どうせ私なんて」とネガティブなことばかり考えていると、その回路が強くなってしまう。払拭するには、意識的にポジティブな思考を習慣化し、思考を上書きしていくしかありません。
前進と後退を繰り返して、性格は変わっていく
−—必要以上にSNSを見ないというのも、感情コントロールを鍛えるコツというわけですね。
大嶋:はい。とはいえ、上書きには時間がかかります。ポジティブ思考に変わったと思っても、揺り戻しは必ずあります。前進・後退しながら少しずつ変わっていくのが人間です。例えば、昨日は0から10まで進んだけど、今日は2まで戻ってしまった。そのとき、多くの人は10と2を比較してマイナス8と思ってしまいがちだけど、0から比べれば2は前進している。つまり、マイナス8ではなく、プラス2なのです。
——でも、その2に気づけない人が多いんですよね。
大嶋:その通りです。2に気づけない人が、インポスター症候群の予備軍。でも人間とは理屈抜きに、前進・後退しながら進化していくものです。前進し続けるということはあり得ない。人間はそういう論理で動いているんだと認識すれば、「昨日はポジティブだったけど、今日はなんだかネガティブ。揺り戻しね」と、いちいち自分の感情に一喜一憂しなくなります。
*次回は最終回!11月29日(木)公開予定です。
(取材・文:塚本佳子、撮影:面川雄大)
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情報元リンク: ウートピ
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