10月4日(金)から公開される『蜜蜂と遠雷』(石川慶監督)の主要キャラクターとして出演する森崎ウィンさん(29)。森崎さんは、ミャンマー出身で、10歳の時に家族で日本に移り住み、18歳で俳優としてのキャリアをスタートします。
昨年、スティーブン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』でトシロウ役に抜擢されハリウッドデビューを果たしました。また、ダンスボーカルユニット「PRIZMAX」のメインボーカルを務めるほか、ミャンマーのテレビ局で冠番組を持つなど多彩な輝きを放ちます。
「森崎さんにぴったりな役でしたね」と感想を伝えると、「実は、僕がマサルを演じるのはちょっと難しいと思っていたんです」と意外な反応が。その理由と、作品が完成した今思うことについて話を聞きました。
「森崎ウィンのマサルを表現してほしい」
——今回、マサル・カルロス・レヴィ・アナトールを演じていかがでしたか?
森崎ウィンさん(以下、森崎):マサルのフルネーム! 長いのにありがとうございます! 実は僕、もともと原作のファンで「映画化したら面白いだろうな」って思っていたんです。でも、まさか自分がマサルを演じるなんてまったく想像していなくて。オーディションの場でも監督に「原作のイメージがあるので、僕にはちょっと難しい」と伝えたくらいです。
——原作では高身長で、美男子で、天才で音楽学校の王子様。森崎さんにぴったりでは?
森崎:いやいやいや。あんなに魅力的に描かれていたら「全然、俺じゃない!」って思ってしまいますよ。原作の描写が素晴らしくて、僕の中で理想のマサル像ができあがっていたんですよね……。でも、監督が「原作の再現VTRを作るわけではないよ。映画は映画として別物だと思って捉えてもらっていいから。森崎ウィンが表現するマサルを求めているんだよ」と言ってくださって。
——完成した作品を見て、森崎ウィンのマサルはできていたと思いますか?
森崎:そうですね。やっぱり「原作ではこうだったけど、僕のマサルはどうかな」と思うところもあったのですが、監督がOKと言えば、映画版のマサルはこうなんだと信じて監督について行きました。
原作は「分厚いな」と思った
——原作のどんなところに惹かれて「映画化されたらいいのに」と思ったんですか?
森崎:原作を読んでいて、音が聴こえてきたんですよね。活字から音が流れてくる感覚って、子どものころにもらったバースデーカード以来の衝撃でした。ほら、あるじゃないですか。開くと音楽が流れるカード。
——懐かしい。
森崎:クラシックをほとんど知らない僕でさえもその音を感じられた。人間の想像力を刺激してくれる恩田先生の豊かな表現力に感動したんです。だから、映画化されたらきっと面白いだろうなと。それに、音楽家の話とはいえ、登場人物がアスリートのように戦っている。そういう意味でも、誰が観てもそれぞれに感じるところがあるはずだと思いました。
——もともと恩田さんの小説が好きだったんですか?
森崎:いえ。実はあまり読書をするタイプではなくて。『蜜蜂と遠雷』を手に取ったのも偶然でした。役者仲間と話をしているときに「もっと本を読んだほうがいい」という話になって。でもどんな本を読めばいいか決められなくて、賞を取っているものにしようと。調べたら、直木賞と本屋大賞を受賞しているので「これだ!」って。あらすじを読むと、音楽がテーマになっているし、僕と重なるところもあるかなって。
——かなり厚い本ですけど、本を読まないのによく選びましたね。
森崎:ネットで頼んだので、こんなに分厚いなんて知らなかったんです。届いたとき「嘘でしょ!」って思いました(笑)。でも僕、決めたら絶対にやらないと気が済まなくて。気合いを入れて、ページをめくったんです。そしたら、すいすい読める。あっという間にストーリーに引き込まれてファンになっていました。
決められたルールを壊したい
——自分だったら誰を演じたいみたいな想像はしませんでしたか?
森崎:読みながら考えたんですけど……。映画化したら自分はどのキャラクターになるだろうって。かつて天才少女として名を馳せた栄伝亜夜、ない。養蜂家の息子で自宅にピアノすらないのに有名ピアニストに見出された未知数の風間塵、ない。サラリーマンとして妻と息子を養いながら生活者の音楽に挑戦する高島明石、ない。
「ジュリアード王子」と呼ばれるエリートのマサル……ない。うん、僕ができそうな役はいないから、映画化されたら観客として観に行こうって思っていたんですよ。そしたら、一番ないと思っていたマサルで。
——いやいや。マサルは日本語で「勝」だし、森崎さんのウィンも——ミャンマー語では「明るい」という意味だそうですが——英語では「勝」だし。共通点も多いですよ。そんなに違うとおっしゃるのがよくわからない。
森崎:……僕、アニメがすごく好きなんですよ。
——アニメ?
森崎:はい。アニメが実写化されて、観に行くときの気持ちがすごくわかるので、原作がある作品を前にするとすごく慎重になるというか……。原作ファンだからこそ、イメージを大切にしたいという気持ちがあるから、マサルを演じるのはやっぱり勇気が要りました。
——挑戦してみてどうでしたか?
森崎:マサルを通じて学んだり、勇気をもらったりしました。僕にはマサルのようなコンクールの経験はありませんが、音楽を通じて何かを実現したい、決められたレールやルールを良い意味でぶち破って新しいものを作りたいと思う気持ちは似ていると思います。そのためにどう動けばいいのか、どれほどのエネルギーが必要なのか。それはマサルと所属している「PRIZMAX」で音楽活動をしている僕に重なる部分だと感じました。
それから、好きになるものにジャンルは関係ないんだということにも気づきましたね。僕は普段あまりクラシックを聴かないし、ちょっと硬いなっていうイメージを持っていたんですけど、(劇中で演奏する)プロコの2番*を何度も聞くうちに「ここいいな!」って思うようになって。それって、大好きなブルーノ・マーズの「このメロディー上がる!」って気持ちと同じなんですよ。
*プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番。通称、プロコの2番。
クラシックだからちゃんと勉強が必要なのかなと構えていたんですけど、好きっていう気持ちの前ではどうでもよくなるんですよね。この曲が好きだから知りたい、弾きたいって。垣根を超えたというか、境界線が消えたというか。それを知ることができたのは、すごくいい経験でした。
『蜜蜂と遠雷』
10月4日(金)全国公開
キャスト:松岡茉優 松坂桃李 森崎ウィン 鈴鹿央士(新人)
原作:恩田陸「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎文庫)
監督・脚本・編集:石川慶
配給:東宝
©2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会
オフィシャルHP:https://mitsubachi-enrai-movie.jp/
(ヘアメイク:KEIKO(Sublimation)、スタイリスト:森田晃嘉、取材・文:安次富陽子、撮影:面川雄大)
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情報元リンク: ウートピ
「好き!」の力を知った。森崎ウィン『蜜蜂と遠雷』に出演