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「好きで結婚したんだから困難は乗り越えられる」が通用しなくなった理由

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同級生の友人と長年ルームシェアをし、大学卒業後は所属していたサークルをそのまま会社化。そして現在も桃山商事というユニット活動をしている。これまで個人的に様々なパートナーシップの形を模索してきたが、はたして「結婚」とそれらは具体的に何がどう違うのか──。

前編では、そんな疑問を家族社会学者の永田夏来さんに投げかけてみた。永田さんいわく、「一番の違いは親族が絡んでくるかどうか」とのことだった。そういえば、元カノと結婚に至らなかった最大の理由はそこかも……。

「結婚とは何か」を探るべく、後編も永田さんにお話をうかがっていきます。

永田先生(左)、清田さん(右)

永田先生(左)、清田さん(右)

【前編】僕らの結婚に親族が介入してきた理由とは?

「結婚は個人の問題」と考えることのできた背景

清田:元カノとダメになってしまった当時、僕としては「誰と結婚するかは自分自身で決めること」だと考えていました。だから、彼女が姉や親族の判断を仰いでいるのが理解できなかったんです。でも、永田さんのお話を聞き、家族が「相互扶助」の関係である以上、まわりの判断が入り込んでくるのも仕方ないことかもしれないと思いました。

永田:清田くんの元カノは経済的に裕福な層の娘さんだったんだよね? だとすると、そこには「家産の相続」という視点も入ってきていた可能性が高い。彼女の家はおそらく、伝統的な結婚観(結婚を個人ではなく家族という単位で考える価値観)を持っていたと思うんだけど、そういう人たちって家産(土地や財産など)の相続をとても重視するんですよ。

清田:なるほど……だからわざわざうちの実家の土地まで調べていたのかもしれませんね。僕の家は下町のしがない電器店なので、相続なんて視点は全然なかったです。

永田:逆に言えば、「結婚は個人間の問題だ」と考えられるのは、清田くんが家産相続を考えなくていい家に育ったからかもしれない。親は自営業で電器店をやっているけど、現に清田くんは跡を継いでいないわけで、どこかでお店をたたみ、あとは貯金や年金で暮らしていくわけだよね。息子である清田くんは、正の遺産も負の遺産も気にしないで済むからこそ、「結婚は自分で決めるもの」という風に考えられるという見方もできる。

清田:確かにそうかもしれません。正直に言えば、「食いっぱぐれたら実家に帰ればいっか」というのが心のセーフティネットになっている感覚はありますが、それと結婚を結びつけて考えたことはなかったです。

永田:でも元カノのように、資産の相続の可能性があって、親族の発言権も強かったら、「まわりの反対を押し切ってまで結婚するほどのことなのか」と考えてしまっても不思議ではないよね。

清田:そう考えると、僕と彼女では判断すべきものの重さがまったく違っていたのかもしれませんね。「家族とか関係ないっしょ!」「結婚は俺らで決めるものっしょ!」とか考えてた自分がずいぶんお気楽な人間に思えてきました……。

永田:特に女性の場合、出産や子育てで親の手を借りることもあるかもと想定するから、実家との関係をなるべくいい状態にしておきたいという意識も働いていたかもしれないね。

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「1年同居して嫌じゃなかったら結婚しよう」

永田:清田くんの結婚相手はどういうタイプの人なの?

清田:考え方や価値観が自分とすごく似てる人だなって感じています。映画や演劇が好きという部分も共通しているし、金銭感覚も近しいものがあるし、思想信条や政治的なスタンスも似ています。あと、「同じ教室にいたら似たようなポジションだったかもな」って感覚もあります。もちろん異なる部分も多々あるんですが、自分が重要視している部分で共通項が多いというか。

永田:結婚に至った経緯というのはどういう感じだったの?

清田:彼女は元々、一緒に桃山商事の活動をやってる森田の妹の幼馴染みで、その森田妹が紹介してくれて出会いました。お付き合いして1年半くらいのタイミングで「同棲+ルームシェア(清田+彼女+元桃山商事メンバーの佐藤)」という妙な形の3人暮らしを始めて、そのときには「1年同居して嫌じゃなかったら結婚しよう」という話が出ていました。それで実際に1年経った頃にどうしよっかと話し合いをして結婚に至ったという……なんか言ってて恥ずかしいですね(笑)。

永田:じゃあ、わりとすんなり結婚に至った感じだったんだ。

清田:自分としてはそう思ってますが……向こうはどうなんだろう。今度改めて聞いてみます(笑)。ただ、ちょっと真面目な話をすると、僕は元カノとの一件や、前の会社を離れることになった経験から、今後の生き方についてちゃんと考えないとヤバいなって痛感したんですよ。

まず大きいのは、お金のことですよね。自分は原稿書くのが遅いし、数字に弱く、ビジネスセンスも皆無なので、おそらく稼げる書き手にはなれないだろうということが段々わかってしまった。休みなく働いても年収400万とか450万くらいが限度だろうなって。だとしたら、その中でどうやったら幸福に生きられるか、わりと真剣に考えたんです。

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日本の結婚に多い「同類婚」とは?

永田:お金と生活のことをリアルに見つめるのはとても大事なことだよね。

清田:僕の場合、桃山商事の活動と物書きの仕事を続けていくこと、本や演劇や映画に触れること、友人や知人と会っておしゃべりをすること、というのが人生に欠かせない要素で、それに必要なお金と時間が確保できる働き方や暮らし方を志向していくのがいいだろうという結論に至りました。結婚した相手も似たような考えを持っていて、この人となら、個人の幸福と相手の幸福と二人の幸福がうまく追求していけると感じたんです。

永田:日本における結婚って、基本的には「同類婚」が多いんですよ。つまり、出生階層が同じくらいで、同じような暮らしぶりをしてきていて、同じような学校へ行き、同じような感じの会社に勤めてきた相手と結婚に至るというケースが多かった。恋愛結婚といっても、内実は「職場での出会い」「学校での出会い」「友達の紹介」であり、長いこと同じ階層の人としか出会わない構造になっていたんだよね。

清田:そういう意味では、僕ら夫婦も同類婚に分類されますね。

永田:同じような状況で生まれ育っている人間同士なら、話も合うし、親との考えも合うし、生活に対してビジョンが一致するよねっていうのが同類婚が推される理由なのよ。私は正直この考え方に抵抗感もあるんだけど、確かに同類婚のほうが生活もうまくいくことも多いから、難しいなって感じてます。

ただ、清田くんたちの場合は、出生階層や生育環境という所与のものだけでなく、後天的に獲得していった趣味や価値観も似ているってところがいいよね。特に清田くんはフリーランスだから、暮らすってことと働くってことがかなり近い。だからこそ、価値観のミスマッチが少ない相手を選んだのかもしれない。

清田:あまり比較することじゃないかもしれませんが、前の恋人とはつくづくミスマッチが多かったなって感じます。やはり出生階層が違ってて、例えば彼女の友人の誕生日会に招かれたとき、一人2万円の中華料理屋さんに連れていかれてビビったし、逆に彼女は、出版業界で働く僕に文化的なコンプレックスをおそらく抱いていて、同業仲間に紹介しても会話があまり盛り上がらなかった。彼女は高校時代から片想いをしていた人で、25歳のときに縁あって交際したという、恋愛的には美しい感じのストーリーなんですが、結婚相手としての相性はまた別の問題だったってことですよね。

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「ときめき」重視から「やすらぎ」重視へ

永田:今の話はとても興味深いね。というのも、清田くんの体験は時代性とも関連していて、1990年代から2010年代にかけて、若者の変化を追った青少年研究会の調査をまとめた木村絵里子さんによれば*、かつては「ドラマティックな恋愛、そして結婚=幸せ」という理想が掲げられていたけれど、次第に現実とのギャップが生まれ、2010年代になると「やすらぎ」とか「居心地の良さ」を求めるように変わってきたらしいよ。これは社会的な変化と言っていいと思う。

*(参考文献)『現代若者の幸福―不安感社会を生きる』(恒星社厚生閣)

清田:なるほど。感受性が似ているとか、思想信条が近しいとかも、やすらぎの一部ですよね。僕も結婚した相手とは、最初はまさに恋愛って感じの気持ちでしたが、付き合う中でやすらぎ要素がいろいろ発見できたからこそ、躊躇なく結婚に進めたような気がします。

永田:今結婚を考えている人たちの親世代って、「好きだったら多少の困難は乗り越えられる」って考えで結婚しているケースが多い。「性」「生殖」「愛情」が三位一体となった考え方が支配的だったわけです。だからどれだけ価値観がすれ違っていようが、旦那が靴下をその辺に脱ぎ捨てようが、いいじゃん好きで結婚したんだから、乗り越えられるよ、それが平気になるくらい好きな相手と結婚しようよという感覚だった。でも、今はそれが段々なくなってきています。なぜなら、人々が「失恋」を経験するようになってきているからです。

清田:それってどういうことですか?

永田:これはイギリスの社会学者アンソニー・ギデンズが『親密性の変容』(而立書房)という本で指摘した状況なんだけど、若い内からセックス込みの恋愛をするようになると、10代のときの恋愛は性欲も恋愛感情もごちゃ混ぜになってるから、「超尊い!」「これが一生続けばいい!」とか思うけど、大体うまくいかないわけじゃないですか。そこで「あれ?」って思うんだよね。

恋愛ってすごく盛り上がったりするものだけど、人々がたくさんの失恋を経験するようになり、それが必ずしも幸福なゴールに結びつかないことに気づいていった。そして今や人々はあまり恋愛に期待しなくなっていますよね。「親しさ」というものに対する価値観が変わってきていて、恋愛感情だけじゃない、もっと多様で自由な親密性の形があるだろうというところに来ている。

清田:その感覚、すごくわかるような気がします。

永田:そこを両方経験した清田くんが、自分の体験を踏まえて粘り強く言語化しようとしているのがこの連載であり、そこが桃山商事の活動おもしろいところだと思う。これからも楽しみにしています。

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清田:個人的な体験は社会の変化とつながっているんですね。引き続き「結婚とは何か」を考えていこうと思います。どうもありがとうございました!

*次回は漫画家・渡辺ペコさんをゲストに迎えてお送りします。
(清田隆之/桃山商事)

情報元リンク: ウートピ
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