平成最後の夏、思い思いの夏を過ごしていると思います。もっと記憶に残る時間を過ごしたい! という人は、「女子マンガ」を読んでみるのはいかがでしょうか。
子どもの頃に憧れた王子様が迎えに来てハッピーエンドのような少女漫画よりも、リアルでほろにがい「女子マンガ」は、いろいろな経験を積み重ねてきたオトナ女子だからこそ楽しめる最高の娯楽。
「女子マンガは人生の参考書」だと話す、早稲田大学の助教で少女マンガ研究者のトミヤマユキコさんに、ウートピ読者へオススメの女子マンガを選んでいただきました。
前編は、女子と労働をテーマにした作品を紹介します。
庶民の女子、家を買う
『プリンセスメゾン』(小学館)/池辺 葵
昨今の労働系女子マンガの特徴として、経済状態がわりとリアル、というのがあると思います。80年代のトレンディドラマみたいな「その仕事でそのマンションは住めないだろ!」的な作品が減ってきているのです。
本作の主人公「幸」は、高卒で居酒屋チェーン店に就職した26歳。年収は300万に届きません。住んでいるアパートも本当に慎ましくて泣けてきます。ディテールって大事ですね。
しかし、その幸が自分のマンションを買う、というのがこの作品のキモです。貧乏だから、不動産なんて買えない? いや、そんなことはありません。「努力すればできるかもしれないこと、できないって想像だけで決めつけてやってみもせずに勝手に卑屈になっちゃだめだよ」……幸の言葉は、働きながら身の丈サイズの幸福を追求することの大切さを教えてくれます。
恋愛と仕事のバランスに迷う貴女へ
『&』(祥伝社)/おかざき真里
主人公は、メディカルクラークとネイリストのダブルワークをしている「薫」。
「はじめるなら 今しかないと思ったんです 女子の人生として 優先順位間違ってる かもしれませんが とりあえず 青木薫26歳 ダブルワークはじめます」と心の中で宣言して、仕事優先の人生へとこぎ出してゆきます。
プライベートだと他人に触れない(ゆえにまともに恋愛をしたことがない)薫に、世間は「男と番(つがい)になる方が大事なんじゃないの?」とささやきかけてきますが、果たして本当にそうでしょうか? そして、例外的に触れることができる恋人が現れたとして、人生の優先順位は変わるでしょうか? 愛することと働くことって、どっちも大事で、どっちも難儀。恋愛と仕事のバランスに悩んでいる方にぜひ読んで欲しい作品です。
やっぱり名作!全ての働き女子のバイブル
『働きマン』(講談社)/安野モヨコ
すでに10年以上前の作品であろうとも、やっぱり名作! 女子のみならず、労働に従事するすべての者が読んで損ナシのバイブル的作品です。
主人公の「弘子」は、出版社の週刊誌編集部に勤める28歳。すでに新人と呼ばれる時期は過ぎ、自分のキャリアを自分でマネジメントすべきタイミングにさしかかっています。
弘子がすばらしいのは「上手に立ち回ること」をはなから放棄しているところ。失敗しますし、キレますし、泣きます。「男スイッチ」が入ると「働きマン」に変身し、寝食を忘れて働く彼女を、男並みになっただけじゃないかと批判する向きもありますが、よく読めばそれが男並みになりたい願望ではなく、自分らしく働きたい願望から来ていることがわかるはず。職場でいかに自分を殺さずにやっていくか。その知恵が本作には詰まっています。
女子マンガは人生の参考書
わたしは大学で女子マンガに関する講義を受け持っています。マンガを小説のように読み込み、そこにあらわれる女子の働き方を浮き彫りにしていく講義です。
講義の中では「女子マンガは人生の参考書である」と言い続けています。表向きは恋愛モノっぽくても、よく読むと、労働系女子のなんたるかが描かれているから油断ならない。むしろ、恋愛よりそっちを読む方が楽しかったりもする。娯楽として消費するだけではもったいないのが女子マンガなのです。
今回ご紹介した3作品は、その中でもとくに読みどころの多い作品です。女子ではないあなたにも、普段マンガを読まないあなたにも、必ず刺さる何かがあると思いますよ。
(トミヤマユキコ)
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情報元リンク: ウートピ
「女子マンガは人生の参考書」平成最後の夏に読みたい3選【働き女子編】