夕方になると靴がきつくなり、足首のくびれがなくなり、ふくらはぎがはれて象足に……。毎日の足のむくみが悩ましいという女性の声をよく耳にします。
臨床内科専門医で、女性外来がある正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長によると、「足のむくみには、全身の血流や水分の代謝の悪化が関わります。夏場の場合、『冷房むくみ』の可能性もあり、ときには足が痛むことがあるでしょう」ということです。足がむくむ理由や対処法について、詳しく聞いてみました。
血液が心臓にもどりきれないと、むくみにつながる
ふくらはぎは「第二の心臓」という言葉があります。正木医師は足がむくむ理由としてまず、この「第二の心臓」の役割について説明します。
「血液は、心臓から動脈を通じて全身に送られ、足先や手先の毛細血管まで運ばれます。その後、末端から静脈を通って再び心臓に戻ってくるという循環をくり返しています。
足に運ばれてきた血液を心臓まで戻すには、下から上へ移動させることになるため、重力に逆らわなければなりません。その際、ふくらはぎの筋肉がポンプの役割をして、スムーズに血流を保つように働きます。
この働きが弱まると、血流が滞って血液が足にたまった状態が続きます。すると血液に含まれる水分が毛細血管から細胞と細胞の間の間質(かんしつ)と呼ぶ部分にしみ出します。
しみ出た水分は通常、静脈に再吸収される、あるいは、リンパ液によって流されるなどで処理されますが、血流に支障があると、そのしくみがうまく働かずに、むくみにつながります」
「同じ姿勢」「筋肉量の低下」「塩分のとりすぎ」「冷え」が原因
では、どんなことが、ふくらはぎの働きを妨げたり、血流を滞らせたりするのでしょうか。正木院長はこう説明を続けます。
「立ちっぱなし、座りっぱなしといった長時間の同じ姿勢、運動不足や無理なダイエットによる筋肉量の低下、塩分のとりすぎなどが、血流の低下をまねきます。
立ち仕事、デスクワーク、車の運転、飛行機や長距離バスでの移動などで、同じ姿勢をとっているとき、ふくらはぎが動いていないでしょう。長時間その姿勢が続くと、足の血液が心臓に戻りにくくなります。
それに、日ごろの運動不足でふくらはぎの筋肉量が落ちている、力が弱まっていると、ポンプの働きが十分に果たせないため、むくみが生じやすくなります」
どれも思い当たります。では、塩分のとりすぎとは、どういう状況でむくむのでしょうか。
「塩分は水分を保持する性質があるので、とりすぎると水分をうまく排出することができず、むくみをまねきます。この場合は、食生活を見直す必要があります」と正木医師。
さらに、「特に夏場に注意すべきが、冷房の影響である『冷房むくみ』です」と言う正木医師は、次のように解説をします。
「ヒトの体は、体温を調節するために、自律神経の働きで汗をかく、表面の血管を拡張するなどしています。これには、水分の代謝も関わっています。
ところが、外気温と冷房による屋内の温度差が激しい環境が長く続くと、自律神経の働きが過剰になって疲弊し、体温などの調節機能に混乱をきたします。その結果、水分の代謝が低下して、むくみにつながります。
また、冷気は足元に降りますから、頭は暑くても足もとは冷たく、下半身が冷えるといった経験はだれしもあるでしょう。その冷えで、血流不良となってむくみやすくなります。これは寒い時期の暖房による支障としても同じことが言えます」
日ごろからこまめに動いてふくらはぎの筋肉をアップ
ここで、むくみのケア法、予防法について、「原因となる要素を取り除くようにしましょう」と話す正木医師に挙げてもらいました。
・意識的に、同じ姿勢でいる時間を少なくする。30分に一度は立ち上がる。
・座ったままの場合、30分に1回は足首を回す、つま先立ちとかかと立ちを交互にする、机の下に青竹踏みを置いてリズミカルに踏むなどして、足を動かす。
・けんこう骨の周りを意識して動かすと、普段動きの少ない心臓近くの血流やリンパの流れが促されます。肩をぐるぐる回す、首をそっと左右に動かす、回すなど、座ったままでもできるストレッチをする。
・冷暖房による冷えを防ぐため、肌の露出が多い衣服を避け、膝(ひざ)掛け、カーディガンなどで冷気が体に直接あたるのを防ぐなど、自分に合った体温調節の工夫をする。
・日ごろの食事で良質のタンパク質をはじめ、ビタミンやミネラルが豊富なメニューで栄養バランスを整える。
・日ごろから、筋肉量を維持するためにウォーキングやストレッチ、ヨガ、軽い筋トレなど、運動の習慣をとり入れる。
・長く冷房の中にいると、筋肉や内臓は意外に冷えて血流やリンパ液の流れが悪くなる。入浴はシャワーだけなく、湯船につかる。
・シャワーしかできないときは、下半身の血流を促すために、バスタイムの前に2~5分程度足湯をする。
・余分な水分や老廃物の排出を促すために、体が温まって筋肉がほぐれている入浴後に、足先からふくらはぎ、ふとももと、心臓に向かってソフトに押し上げるようにマッサージをする。ふとももの付け根や膝(ひざ)の裏のリンパ節をソフトに刺激する。
・下半身にたまった血液を心臓に戻すため、寝転んで足を壁などに5分~10分立てかける。
・ストレスや睡眠不足、不規則な生活習慣は体の代謝機能を低下させ、体内に余分な水分や老廃物をため込むので、生活リズムを見直す。
・寝るときには、高さ5~15センチメートルぐらいの足枕を用意し、足を乗せて休む。
さらに正木医師は、「むくみは美脚の敵でもありますが、体温調節や水分代謝など自律神経のバランスのバロメーターでもあります」と話し、次のアドバイスを加えます。
「こうしたケアを続けても、むくみが改善されずにひどくなっていく、足が痛くて立っていられないなど、生活に支障を来す場合や、体重が大きく増えた、尿量が減ったなどの気になる症状がある場合は、何かの病気が隠れている可能性もあります。内科を受診しましょう」
むくみの対策には、ふくらはぎの状態が重要であることがよくわかりました。同じ姿勢が長いと、どうしても、血液は足元に滞りがちになるでしょう。運動や食事、睡眠など日々の習慣を見直して、むくみがないすっきりした足を目指したいものです。
(取材・文 ふくいみちこ・品川 緑 / ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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