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「プチ精神科」ではない…心療内科は何を診察する? 扱う病気は?【専門医に聞く】

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体や心に不調があるけれど、どの診療科を受診すればいいのかわからない…そんな疑問に応えるために、「診療科ナビ」という記事を連載しています。第2回、第4回は精神科について、「うつ病のケアは精神科へ」ということ、また心療内科や神経内科との違いについて紹介しました。

では実際のところ、心療内科とはどういう症状を診察する科なのでしょうか。今回は心身医学専門医で心療内科医、『人に言えない不安やストレスと向き合う方法』(マガジンハウス)の著書がある野崎京子医師に詳しく尋ねます。

野崎京子医師

野崎京子医師

心療内科では「心身症」を診察する

——心療内科ではどのような病気を扱っているのでしょうか。

野崎医師:主に、内科系の「心身症」を診察します。心身症というと心の病気と勘違いされることが多いのですが、実はうつ病や不安障害などの精神の疾患ではありません。心身症とは、体の病気があって、その原因や経過がストレスや悩み、また社会環境などに影響を受ける病状をいいます。

例えば、胃が痛い、重苦しい、下痢や便秘がひどいので、「病院でレントゲンやCTなどの検査をしたけれど異常はないと診断された」という経験がある人は多いでしょう。この場合、内臓に器質的な病変はなくても、ストレスが原因で自律神経の働きのバランスが乱れ、胃や腸に障害が現れている場合があります。この病態が心身症です。

胃の不調はかつては慢性胃炎や神経性胃炎と呼ばれていましたが、現在は「機能性ディスペプシア」という病名になり、薬を始めとする治療法が進んでいます。また、下痢をくり返す「過敏性腸症候群」もよく知られています。

ほかによく見られる身近な病気は、偏頭痛や緊張性頭痛、高血圧、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、慢性腰痛、慢性肩こり、気管支ぜんそく、めまい、円形脱毛症、更年期障害などです。

検査をしても異常なしで、薬を飲んでもいっこうに症状がおさまらない、ストレスが強いと見受けられるケースでは、内科や皮膚科から心療内科を紹介されることはよくあります。

心療内科は「心身医学」に基づく

——体の器質的な病気を追究する医学を「身体医学」といい、心と体の両面から、つまり心身症を診察する医学を「心身医学」といいますね。

野崎医師:そうです。その心身医学に基づいた診療を行うのが心療内科です。心療内科を専門的に診察するのは、心身医学専門医、心療内科専門医です。

日本心身医学会が1991年に定めた「心身症の定義」はこうです。

「心身症とは身体疾患のなかで、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし神経症やうつ病など、ほかの精神障害に伴う身体症状は除外する」

身体的症状があって軽症うつのケースが多い

——うつの症状があるとき、心療内科を訪れる人は多いのではないですか。

野崎医師:うつ病を専門的に診察する科は、心療内科ではなく、精神科です。ただし現実的には、心療内科を訪れる人が多いと思われます。

それには社会的事情があります。現行の法律では、どの診療科を掲げるかは厚生労働省が規定するカテゴリの中から医師が自由に選択できるようになっています。そこで、精神科医が街でクリニックを開業する場合は、心療内科と看板を掲げたほうが患者さんが訪れやすいため、院長は精神科医でも、「心療内科クリニック」と名乗る場合が多いのです。

このケースでは、実質的には精神科なので、ウエブサイトでは「うつ病・不安障害・統合失調症」など、精神科領域の病気を扱っていると表記するでしょう。患者さんが受診先を選ぶにあたり、混乱されるのも無理はありません。

また、心身医学専門医、心療内科専門医の資格を併せ持つ精神科専門医もいます。この場合は心療内科、精神科とも専門的に診察することが可能です。

そして、胃腸の不調など身体的な症状があって軽症うつの患者さんの場合は、心療内科で心身両面から診察します。実のところは、このケースがもっとも多いです。

心療内科は「プチ精神科」ではない

——前回、精神科専門医のドクターに、心療内科は内科の一部だと聞きました。

野崎医師:そうです。内科同様に身体的症状があって、心理・社会的背景によって症状が増減する場合が心療内科の専門です。

ただし、心療内科は精神科と内科の真ん中に存在すると解釈されていることもありますが、それは違います。また、「プチ精神科」や「軽症の精神科」と考えるのも間違いです。心療内科と精神科では医学の源流が異なるのです。

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——心療内科を受診するタイミングの目安は?

野崎医師:例えば、「急に心臓のあたりが重苦しくなるが、検査で正常と診断された」「食事をすると胃重感が続く」「薬を塗ってもアトピー性皮膚炎が治らない」「腰痛がつらいが、X線では異常がない」など、体の不調が目安として10日~2週間ほど続くのに、原因が不明のときです。心身症である可能性が高いでしょう。

——心療内科ではどのように治療をするのでしょうか。

野崎医師:患者さんの症状を心身の両面から問診します。まず身体面から必要に応じて、血液検査やX線検査、CT検査、心電図検査などを行い、状態次第で睡眠、食事、運動の生活習慣、社会環境や人間関係のストレス改善、また考え方のくせを見直す認知行動療法、薬の処方などを行います。

中には、「下痢が続くというと、内科から心療内科を紹介された。なぜ!?」と驚く患者さんもいます。このように、患者さん自身が体の不調の背景にストレスや心の状態があることに気づいておられないケースもよくあります。

どこかが痛い、しんどいのに、原因不明なのはとてもつらいと思います。自分の心身で何が起こっているのかがわからない場合は、心療内科を受診してください。

聞き手によるまとめ

心療内科は、ストレスや軽症うつなど心理的な要因から、体に不調が現れると思う場合に受診したい診療科だということです。適切な知識を持って、事前に医療機関のウエブサイトで調べる、また電話で問い合わせるなどをしたうえで病院を選ぶのが得策でしょう。

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(構成・取材・文 品川 緑/ユンブル)

情報元リンク: ウートピ
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