外出自粛中のストレスケアについて、連載にて、臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長にお尋ねしています。
第1回「リフレッシュできずストレスがたまってつらい…原因は?」の記事では、ストレスの正体、ストレスによる具体的な心身の不調、またその原因について、第2回「ストレスがたまったときの対処法と予防法は?」では、会話、睡眠、食事、運動、音楽について、その重要性と具体的な実践法について紹介しました。今回の第3回は、ストレスがつのって心身に不調が現れたときのセルフケアについて聞いてみました。
「深い呼吸」と「紙に書き出し」
はじめに正木医師は、「第2回の予防法でお伝えした、会話、睡眠、食事、運動、音楽の方法はそのまま、ストレスが強いときに実践してほしいことです。ただし、憂うつ感や不安感が強くなると、体のケアがしづらくなります。誰かと会話する気力もない、寝つけない、食欲がないなどです。できればそうなる前に、次のストレスコントロール法を実践してみてください」と話し、次の方法を挙げます。
(1)ゆっくり深く腹式呼吸を実践
いつでもどこででもできる方法として、呼吸に意識を向けましょう。ゆっくりとした呼吸をくり返すことは、自律神経のバランスを整えるという報告があります。
椅子に座ってでも、あお向けに寝転んでもOKです。全身の力を抜いてから、腹式呼吸をしましょう。とくに息を吐くことを重視しながら深くゆっくりと呼吸をすると、自律神経のバランスを整える効果が得られるとされています。
まず、おなかをへこませるように意識をして、8秒から10秒ぐらいかけてイヤなものを吐き切るような気持ちで、口からゆっくり深く息を吐きます。吐き切ったら2・3秒ほど息を止めましょう。次に4秒から5秒ぐらいかけておなかをふくらませるようにして鼻から息を吸います。「体が温まってきた」と意識をしながら行うと、さらによいでしょう。
5~10回ほどくり返すうちに、こわばった全身の力が抜けてきて、リラックスすることができるでしょう
(2)ストレスのもとや悩みを紙に書き出す
仕事や人間関係の悩みで煮詰まっている、解決策が見えずに苦しいといったときに、自分のストレスや悩みのタネを紙に書き出しましょう。うつの症状の改善のために、精神医学の療法としても取り入れられることがある方法です。
自分はいったい何にストレスを感じているのか、書き出すと客観視することができて、原因が明確になります。すると、どう解決すればいいのかという道筋が見えるでしょう。
「何をどう書けばいいのかもわからない」という患者さんもいらっしゃいます。その場合は、次のポイントごとに箇条書きにしてみてください。
1.ストレスの状況――何が、いつ、どこで、どうなってストレスなのか。
2.そのストレスに対する自分の感情――どうつらいのか。何がしんどいのか。
3.そのストレスによる体の不調――ときどきめまいがするようになった、頭痛がひどい、下痢が続く、やせた、胃の痛みが断続的にあるなど、不意に現れた不調や日ごろの不調の悪化など。
4.そのストレスにどう行動できそうか――これはしんどいときは思い浮かばない場合もあるでしょう。わからない場合は、上の3まででOKです。
3までは「自分の状況の事実情報」なので、書き出しやすいでしょう。4は、3までを整理すると、いまは書き出しが難しくても、数日経つとはっと思いつくことがあります。3までを書き出すことでストレスを自覚し、冷静に自分の状況を見つけることができるからです。
もちろん、このポイントどおりに書かなくても、今の気分を紙に書き綴ることもストレスの吐き出しになって有用です。例えば、「〇〇〇〇(ストレスの原因を記す)がつらい、しんどい、つらい、しんどい、頭が痛い、胃が痛い、めまいがする……」などでもいいのです。
ストレスが危険を回避することも
さらに正木医師は、ストレスとの向き合いかたについて、こうアドバイスをします。
「ヒトは生きている限り、何らかのストレスにさらされ続けます。そのストレスによって、実は危険を回避していることも多いのです。例えば、『感染症にかかるのではないか』と不安に思うストレスは、手や顔を洗う、歯を磨く、うがいをして予防をするための原動力となります。
人間関係で悩んだ場合は、その相手を危険と察し、遠ざかろうという心の声でしょう。
ストレスを抱えていると自覚できた場合は、自分の体の声に耳をすまし、自分の心と向き合う機会でもあります。そのストレスの軽減や改善のコツは、日ごろから予防法とケアを実践しておくこと、また、いち早く自覚をして早めにストレスの芽を取り除くことです」
また、ストレスが高じてつらい場合の受診のタイミングについて、
「メンタルや体の不調が2週間以上も続く場合は、不調の種類によって内科や心療内科、精神科などを早めに受診しましょう。一歩も二歩も早めの行動が悪化を防ぎます」
そういえば、ストレスが強いときは呼吸も浅く短くなっているように思います。腹式呼吸をくり返すと、体の硬直がほぐれていく感覚があります。また、紙に現状を書き出すことは、もやもやした気分の原因や不調の実態が見えてきて、解決への一歩が踏み出せるかも、と思えます。試してみてはいかがでしょうか。
次回は、ストレスを緩和するための食事について紹介します。
(構成・取材・文 藤原 椋/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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