メディアで見聞きするビジネスやIT、医療分野などの用語について、その意味や使用例を「ニュースを読み解く用語集」と題し、連載で紹介しています。これまでの「ホールディングス」「エビデンス」「ダイバーシティ」「人新世(ひとしんせい・じんしんせい)」「パブリシティ」については文末のリンクを参照してください。
今回・第6回は、「コンプライアンス」という用語について、大正大学表現学部の教授で情報文化表現が専門の大島一夫(おおしま・かずお)さんに、編集スタッフの藤原椋(ふじわら・むく)が尋ねました。
法だけでなく社会的ルールも守るコンプライアンス
コンプライアンスは英語の「compliance」で、直訳すると「法令遵守(じゅんしゅ)」、「要求や命令に応じる、追従、承諾」を意味します。
メディアなどで取り上げられるコンプライアンスは、法令だけでなく社会的規範や倫理、企業内の規定や規則を守るという意味でとらえられ、「企業コンプライアンス」とも表現されます。
法令、社会的規範や倫理、規定、規則とは、具体的にどういうことを指すのでしょうか。
法令は、国民が守るべき国が定めた法律や命令のことですが、社会では法令だけを守ればいいというわけにはいきません。たとえば、企業が経営にあたり、守るべき法律は数多くありますが、それ以上に、顧客や社会全体からの信頼を損なわないために実践する社会的ルールや道徳観、倫理観、規則があります。
これらを守らなかった場合に「コンプライアンス違反」となります。
コンプライアンス違反の具体例は?
メディアで、コンプライアンス違反として不祥事や事件が取り上げられることがありますね。
法に触れるものでは、企業が財政の状態を事実とは異なった金額を記載する粉飾決算、資金使途不正、業法違反、脱税、消費者への不適切な情報開示、ハラスメント行為、著作権侵害などです。こうした問題の発覚で倒産する企業も少なくはありません。
具体的にどのような例がありますか。
ここ数年では、大手生命保険会社による顧客への不正契約や、バーコード決済サービスの会社での情報漏洩(ろうえい)、振り袖の販売やレンタルの会社による粉飾決算などが報道によって知られるところとなりました。
法には触れていないけれど、会社や社員が重大な責任を問われるケースも多いようです。
サービス残業や過重労働、会社の備品の持ち帰り、顧客の個人情報や進行中のプロジェクトの機密情報の漏洩などが挙げられます。
情報漏洩は、私的なSNSでの発信や会話、仕事の持ち帰りなどの日常の行為でも起こりうることです。そうしたことにならないように、コンプライアンスは重要なのです。
「あの会社はコンプライアンスを徹底している」
コンプライアンスを会話で使う場合、どのような例がありますか。
「A社はコンプライアンス意識が高い」「コンプライアンスを徹底するB社を見習いたい」「コンプライアンス違反を防ぐため、社内でコンプライアンス研修やコンプライアンス教育を実施する会社が増えている」などと言えるでしょう。
企業のコンプライアンスの取り組みやありようは、就活や転職時はもちろん、新規の取引時やちょっとした付き合いでもその企業を知る大きな要素になりますね。言葉の意味を理解することで、社会や企業の動き、なにより自分のコンプライアンスに対する意識を見つめ直すきっかけとなりました。
次回・第7回は「SDGs」についてお尋ねします。
(構成・取材・文・イラスト 藤原 椋/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
「コンプライアンス」って何? ニュースがわかるビジネス用語
最近よくテレビ番組や新聞、ネット記事で「コンプライアンスに準じて」とか、「コンプライアンス違反」などの文言を見聞きします。どういう意味なのでしょうか。