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「キラキラかこじらせ」にしたくない。フォトエッセイ『じみけも』に込めた想い

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動物園といえば、パンダ、ゾウ、キリン……などスター動物たちが思い浮かぶ人が多いはず。しかし、スポットライトに当たらない地味な動物たちもいます。なんだか、特別誰かに注目されなくても毎日会社で頑張る私たちにちょっと似ている——?

そんな地味な動物たちの生態と“私たち”の日常を重ね合わせたフォトエッセイ・シリーズ『じみけも』。クォッカ、マヌルネコ、ナマケモノと第3弾まで刊行され、お疲れ気味な日常のひとときにホッとさせてくれる言葉の数々が共感を呼んでいます。

画像提供

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どうしてこんなに親近感が湧いてくるの? じみけものプロジェクトメンバーから、発起人である編集者の小野寺志穂さん、マーケティングの吉江小穂さんに話を聞きました。

マヌルネコを担当した小野寺さん

マヌルネコを担当した小野寺さん

「思ったよりかわいくない」が面白い

──『じみけも』の誕生のきっかけを教えてください。

小野寺志穂さん(以下、小野寺):『じみけも』自体は、想定外から誕生したんですよ。はじめは動物の写真集を作ろうと思っていた私が声をかけて、私を含めた編集者が3人、経理からひとり、営業部からひとり、そしてマーケティングの吉江の6人でスタートしました。ところが、海外のエージェントから購入した動物の写真が「あれ?思っていたよりかわいくないぞ」と(笑)。

例えばクォッカは世界一幸せな動物なんて言われていて、Googleで検索したらかわいい写真がいっぱいで、人間とのセルフィー写真がキュートなんですけど……写真を見たら普通の茶色いネズミとあんまり変わらないね、と(笑)

──普通の茶色いネズミ!(苦笑) それは想定外ですね。

小野寺:そう。リアルなクォッカってこんなに地味なの? インスタ映えするけど実際は……って話から、人間でもおんなじかも、もしかしたら私たちに似てるんじゃない? と会議で話したのが始まりで、そこから3種類の動物に絞り動物ごとにチームに分けてそれぞれの動物に合ったストーリーを構成していきました。

そこからさらにマーケティングから1人加わって、部署横断の女性だけのチームが誕生しました。このように部署をミックスしてプロジェクトを進めるのは社内でも初めてで、異例のことでしたが、上司が「やれ!」と背中を押してくれました。

吉江小穂さん(以下、吉江):会議では「この子たちはかわいいのか、かわいくないのか」と議論が盛り上がりましたよね。動物園でも地味な部類の子たちのことを想像して膨らませると、共感ポイントが次々と出てきて。キラキラじゃない部分って実はすごく面白くて、キラキラしてない部分に焦点を当ててみたいね、と盛り上がりました。

——その会議、とても楽しそうです。

小野寺:じわじわくるんですよね。でも私は断言できます。この子たちはかわいい!(笑)

吉江:私は哺乳類が苦手なので……ナマケモノなんて見れば見るほど「かわいい……のかな?」って今でも疑っています(笑)。

小野寺:そこも良かったですよね、「かわいい〜!」と同調意見だけで作らない。私からすると「この子たちはかわいい!」としか思えないんだけれど、「本当にそうか?」と思って見ているメンバーの目線が入ることで、バランスが良くなったと思っています。

クオッカを担当した吉江さん

クオッカを担当した吉江さん

女性にある根っこは同じ

──マヌルネコ、クォッカ、ナマケモノにはとても細かくキャラクター設定がされていますよね。「私はどの動物に似ているかな」と考えるのも楽しそう。私たちに似ているかもしれないというのはどこから生まれたんですか?

吉江:動物園ではスポットライトは当たらないけれど、それでも毎日を一生懸命生きている……というところですね。本のなかで動物たちがつぶやくセリフは動物学者の先生にも見ていただいて、実際の生態から離れすぎないよう注意しましたが、『じみけも』のコンセプトとしては、インスタ女子だけど実は疲れているクォッカ、嫌だと言えないナマケモノ、ムスッと怒っていると思われちゃうマヌルネコみたいな裏キャラ設定があるんです。

小野寺:企画会議のなかで、都心で働いている30代女性が、仕事終わりに地元の立川ルミネで書店や雑貨店をブラブラ見ながら「今日も疲れたなぁ」と思っている……そんな時に『じみけも』が目に入って手に取る……ってところまで想像していました(笑)。

──「都心で働いていて立川に帰る」のがまた絶妙ですね。日中はバリバリ働いてベッドタウンに帰っていく、それなりに安定した働く女性のイメージが浮かびます。

吉江:そうなんです。メディアに取り上げられる女性ってキラキラして見えることがありませんか? でも実際は本人だってキラキラしているばかりではないと思うんです。「今日はキラキラしていられない!」という日もあるだろうし。でもそれは悪いことではなくて。誰かと比べたくなるときでも、『じみけも』を読んだら、「私はこれでいいんだ」と思ってもらいたいんです。

小野寺:そうですね。それに、もし「私はちっともキラキラではない」と思う人がいたとして。その対局が「こじらせ」という構図にはしたくないという思いがありました。キラキラ女子、こじらせ女子……と「◯◯女子」って名前が巷に溢れていますけれども、ラベリングして女性を分断するんじゃなくて、子育て中の専業主婦でも、シングルの働く女性でも、SNSでどれほどキラキラした女性でも、ふと素になった瞬間に聞こえる声がある。それを拾いたかったんです。

──「キラキラとそうじゃない」をわけるのではなく、誰もが持っている気持ち。

小野寺:とはいえ、『じみけも』の裏キャラもマヌルネコ女子、ナマケモノ女子、クオッカ女子と呼んでたりるすのですが…(苦笑)。ただ、ラベリングして対立構造を作るのではなく、みんな根っこは同じで、その根っこを拾うことで誰もがどこかに共感できる本にしたい、という部分はチーム全員で一致していました。

(編集:ウートピ編集部 安次富陽子)

情報元リンク: ウートピ
「キラキラかこじらせ」にしたくない。フォトエッセイ『じみけも』に込めた想い

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