お笑いコンビ「ハライチ」の岩井勇気(いわい・ゆうき)さんによる初エッセイ『僕の人生には事件が起きない』(新潮社)が9月に発売され、7刷で4万部を突破しました。
30歳で始めた初の一人暮らしや仕事の合間に足を運ぶ美術館、営業で訪れたショッピングモールで遭遇した出来事など自身の何気ない日常をつづった一冊。
「本当に事件なんて起こってないんです」という岩井さんにお話を伺いました。
スイッチは切り替えない
——岩井さんの仕事のルールはありますか?
岩井勇気さん(以下、岩井):仕事のスイッチ切り替える人っていますよね? 仕事の時は明るく振る舞うけど、オフの時は別人みたいな。僕の場合は、そのスタンスでやり始めると後々しんどいなっていう時が来るので、この取材もそうなのですが、そのままやるようにしています。スイッチがない。このままいけたらすごく楽ですね。
——外から見たイメージですが、芸能界って刺激も多いし“ハレの場”だと思うのですが、それでも変わらないですか?
岩井:芸能界は煮詰まってますから。バラエティー番組を見ていても、次の展開が予測できるじゃないですか。ワクワクしないじゃないですか。
——台本があるんだろうなっていうのは思いますね。
岩井:もちろんその安心感というのはあるかもしれないですが、こう来てこう驚いて笑う、というところまでがセットって分かっちゃっている。もう能や狂言のように伝統芸能化してるんじゃないかなと思いますね。
——一つの型のような……。
岩井:客もそれを分かっていて参加するみたいな。能や狂言の途中で、急にラップが入ってくることってないじゃないですか。何が起こるのかというワクワク感はないですけど、別にそれでいいし面白い、みたいな。
そうなったら衰退していくだけだし、客と一緒に心中するだけなので。でも、もう一回、そういうのをやめたほうがいいとは思います。ドキュメント化して何が起こるか分からないワクワク感がほしいなって。
昔は生放送でも「何が起こっちゃうんだろう?」とワクワクしながら見ていたけれど、最近は思わない。台本があって決められているのなら収録と変わらないですよね。
だから大御所の人でも辞めたらいいのにって思いますけどね。面白いこと言ってないヤツ、いっぱいいますから。
——芸能界だけではなくて、いろいろなところでそういうことが起こってるのかなと思いますね。会社の組織もそうだし、世の中も。
岩井:みんなもうすうす気付いていると思いますね。僕は最近、言語化するのにハマっているので言語化しちゃうんですが。
——怖くないですか? それこそ、大御所ににらまれるんじゃないかって思わないですか? 会社員だったら会社をクビになるんじゃないか? って。
岩井:この体制が古いですからね。それを言ったらいいんですよ。それで大御所から何か言われたら、それも言っちゃいますし。すべて明らかにしちゃえばいいんだと思います。
作っちゃってる人のほうが嘘っぽい
——古い体制や組織の中にいると息苦しくなることもあると思うのですが、岩井さんはやりにくいなあとか思ったりしないですか?
岩井:今はいろいろなことや価値観が逆転し始めているので。さっきのスイッチの話じゃないですが、作っちゃってる人間のほうが嘘(うそ)っぽいってなってきてますよね。
——それって世の中の流れですかね?
岩井:流れじゃないですか。だから僕がこうやっていることで、時代が来るんじゃないですか。ただ、流れは絶対にあるので。これがアウトとされる流れに、後々なると思うんですよ。
——揺り戻しが来る? そうしたらどうしますか?
岩井:その時は、いち早くめちゃくちゃ明るくやってやる。それが一番面白いんじゃないかな(笑)。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘)
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「オンとオフは切り替えない」岩井勇気の仕事ルール