30歳で結婚(法律婚)したものの33歳で離婚。36歳のときに仕事仲間の男性(通称”ノダD)と事実婚で再婚したマンガ家の水谷さるころさんによるコミックエッセイ最新刊『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が発売中です。
「女ばかりが家事と育児を背負いすぎない」「男だからって大黒柱にならなくていい」——。世間の「普通」や「こうするべき」に縛られないで、自分たちにとって一番心地がよい結婚生活を送るために試行錯誤を続ける日々が描かれています。
家事、子育て、ケンカ、親との関係をテーマに、4回にわたってさるころさんに話を伺いました。第2回目のテーマは「スマホ育児」です。
【前回は…】「タスクではなく気持ちのシェア」家事分担するときに大事なこと
子どもが「楽しい」と思うことをやらせてあげる
——第2章は育児シェアがテーマですが「スマホ育児」の部分が新鮮でした。「スマホ育児」と言うと、世間では「子どもに悪影響を与える」と悪いイメージで語られることも多いので、さるころさんが「スマホが悪いんじゃなくて使い方の問題」「『なんとなく不安』とかで取り上げるより、私は親も子もちゃんとした使い方を目指したい」という部分にハッとしました。
水谷さるころさん(以下、さるころ):やっぱりバランスですよね。スマホも四六時中与えているわけではないし、中身が管理されていればおもちゃやテレビと同じかなあって。
——社会のルールや歩きスマホはダメだよというのも教えられるわけですもんね。
さるころ:そうですね、やっぱりうちは「抑圧しない」というのがテーマなので、子どもが「楽しい」と思うことをさせればいいと思うんですよね。でも実は最近、タブレットとスマホの時間がすごく減ったんです。
——あら、なぜですか?
さるころ:息子は今、4歳半なんですが、愛読書が小学生向けの漢字辞典で文字はすごく読めるんだけれど、書かないんですね。私が鉛筆を使うことをあまりさせてなかったのもあって、タブレットに指で漢字を書くことはできるけれど鉛筆の握り方がわからない。
あと、この前保育参観に行ったらハサミが使えなかったんです。子どもってハサミブームが1回くるらしいんですよ。何でも切りたがって困る時期が……。うちはそういう機会がなくて、「やってないことに偏りがあるな」と思っていたら、彼もそう感じたらしくて「ハサミの練習がしたい」と自分から言い出したんです。
彼はアナログのドリルもやらせてみたら好きだったんです。ハサミの使い方を練習するドリルがあるのを自分で見つけて「買って」って言ってきて、買ってあげたらめちゃくちゃ面白がってやるんです。
2〜4歳対象のドリルなのですが、早い子で2歳くらいでもできるけど、うちの子の感じだと4歳でちょうどよかった。発育的にだいぶできるようになっているので、すごく楽しそうにやってて今はハサミブームと工作ブームの真っ最中ですね。
字を書くドリルもやろうよ、と促して鉛筆の握り方もちゃんと教えたら、楽しくなっちゃってタブレットを触る時間が必然的に減りましたね。やっぱり「できること」は楽しいんですよね。
やっぱり「これをやっちゃダメ」とか、「○歳なんだからこれくらいできないとダメ」とか言ってやらせるよりは、本人が向上心を持ってるときによいタイミングで出すことが、無理なく伸びるのかなと思いました。
——楽しくてしょうがないんでしょうね。
さるころ:うちの子は勝手にやりたいって言ってくれるからラクしているとは思うんですが、ベースとしては子どもが楽しいものは伸びると思っています。
ピアノの練習が苦痛だった子ども時代
——さるころさんが「子どもが楽しいものは伸びる」と思ったきっかけはあるんですか?
さるころ:私は幼稚園の年長さんから小学校6年生までピアノをやらされてたんですが、弾けないんですよ。なぜなら、親から「練習しろ!」「自分がやりたいって言ったんでしょ!」とずーっと言われて、練習も苦痛でしょうがなかったんですよね。「幼稚園のときに言ったことの責任なんか取れないよ!」って小学生のときにずっと思ってました。
つまらないバイエルの練習曲をひたすら1時間練習させられる。もしかしたらバイエルだって「この曲はこういう曲だよ」とか「この辺がいいでしょ」と楽しい気持ちを育んでくれればよかったけれど、昭和はそうじゃなかった。1回か2回、先生がポロポロンって弾いて「やってみて」っていう状態なんで……。
——私も10年間ピアノをやってもバイエルが終わらなかったクチなので、よくわかります。ピアノもそうですが、私は体育の時間が苦痛でしょうがなかったです。でも、大人になってジムに行ったら、ちゃんとやり方を教えてくれるし、競争しなくていいし、「体育ってこんなに楽しかったの?」って思いました。努力と根性でひたすらやらせたり、どこか「楽しいは悪」と思わされちゃったりしているのは、日本の旧来的な教育の特徴かもしれないですね。
さるころ:そうそう、小学校の時に逆上がりができないと地獄じゃないですか。ダメ人間みたいな。あんなふうにやってできるようになるわけないじゃないですか。嫌いになるばっかりですよね。だから褒めるのは本当に大事だなって思いますね。
だから、子どもには自分で発見して「これをやりたい」という気持ちになるように意識していますね。「興味持ったな」と思ったら、「やってみる?」というふうに。たまたまうちはお勉強っぽいことが好きなので、字を読んだりとか。スマホやタブレットでやりたいなら、タブレットにお勉強っぽいアプリを入れてあげるとか。
スマホ育児も、スマホ自体が悪いわけじゃなくて、使いようによっては能力が伸びるわけだから、いい具合に誘導する。見せたくないものは見せないようにと、ちゃんと管理するようにしています。
——「なんとなく不安だから」「みんながダメって言うから」という理由でただ禁止するのではなくて自分で判断するのが大事なんですね。
さるころ:管理の部分で不安だったり、自信がなかったりすると、「子どもには見せたくない」と思うのかもしれないのですが、わからなくて嫌だったら、ちゃんと勉強すればいい。
私たちが育った時代と比べたら、今はネットで情報がすぐに手に入りやすいからある程度調べれば利用法もわかると思います。それが、自分が少し工夫したり、意識したりできたらみんなポジティブな結果が得られるという能動的な意思の表れのような気がします。
【第1回】「タスクではなく気持ちのシェア」家事分担するときに大事なこと
※次回(4月22日公開)のテーマは「ケンカ」です。
(取材・文:ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)
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情報元リンク: ウートピ
「なんとなく不安」で判断したくない…私がスマホ育児を選んだ理由【水谷さるころ】