NHKの人気料理番組『平野レミの早わざレシピ』など、テレビや雑誌を通じて数々のアイデア料理を発信している料理愛好家の平野レミさんによるエッセイ集『家族の味』(ポプラ社)が3月9日に発売されました。
同書は2007年に筑摩書房から刊行された新書『笑ってお料理』に加筆・修正して単行本化。レミさんが初めて料理を作った思い出から、和田誠さんとのなれそめや子育て方針まで家族と料理についてつづっているほか、29品のオリジナルレシピに加え、亡き夫・和田誠さんとの対談、阿川佐和子さん、清水ミチコさんとの鼎談(ていだん)も収録しています。
レミさんに夫・和田さんとの結婚生活で大事にしていたことや「自分らしさ」を貫くことについてお話を伺いました。前後編。
和田誠さんとの結婚生活で大事にしていたこと
——本では2019年10月に亡くなった夫の和田誠さんとの思い出もたっぷりつづられています。レミさんが、和田さんとの結婚生活で大事にしていたことはどんなことですか?
平野レミさん(以下、平野):和田さんのことを、とっても尊敬してたのよね。新婚のころ、一緒に朝ご飯を食べるじゃない? それで、靴を履いて玄関を出て行くときに、もう仕事の顔になっちゃってるのよ。「ああ、私の和田さんじゃなくなっちゃった」って思うんだけど、それが嫌じゃない。家庭とは違うキリッとした和田さんがいて、それも格好いいなって。和田さんにはいろいろな面があって、その全部を尊敬できたの。
——お互いの世界観を大事にしていたんですね。
平野:でも、そうやって尊敬できたのは、私に対しての和田さんの優しさがあったから。みんなにとっても優しい人だったし、大きな気持ちを持っている人だったのね。私はもともと自由に育ったけど、結婚しても、和田さんの手の平の上で自由にやっていて。両親のところから和田さんのところへそのままスーッと行けたのが、とっても良かったんだと思う。
「ちゃんとつかめる思い出があったんだ」上野樹里から言われたこと
——今のレミさんは、和田さんの影響を受けている部分もあるんですね。
平野:私は和田さんよ。和田さんに育てられたの。だから、今は大変よ。和田さんがいなくなっちゃったんだから! 人生の中で、初めての大事件よ! こんなに思いがけないことがあったんだなって。
和田さんが死んじゃって、心の支えがなくなっちゃって……。和田さんとすごい仲良しだった黒柳徹子さんに、「私はどうしたらいいんでしょう?」って相談したら、「和田さんに愛されたこと、レミちゃんが和田さんを愛したことをずっと思ってればいいじゃないの」って言ってくれたの。でもやっぱり私、思い出がつかめなくて……。「何もつかむものがなくて嫌だ」って言ってたら、知り合いの人が「2人の息子がいるでしょう」って。
そのあと、息子(「TRICERATOPS」の和田唱さん)と(上野)樹里ちゃんと一緒にご飯を食べに行ったの。「思い出を大事にしろって言ったって、つかむものがなくて悲しいし、本当に心の支えがない」ってつぶやいたら、樹里ちゃんが、「唱さん、手を出して。ほら、レミさんとしっかり握って」って。それで、息子と手を握らされちゃったの。息子となんて、何十年もこれから先も手を握ることなんてないと思っていたのに息子が私の手をグッと握ってくれたのよ。あの紅葉みたいな小さくやわらい手だった息子が今はギターを弾いてるガッチリした手になってて……。
そのときに、ちゃんとつかめる思い出があったんだと思ってうれしくなっちゃって。とっても自信が出てきて、明るい気持ちになれたの。和田さんはいなくなっちゃったけど、息子の半分は夫だし、その手が私の手をグッと握ってくれたときに、今まで落ち着かない気持ちだったのが、スッと取れちゃったの、心のつかえがストンと取れた感じかな~樹里ちゃん、良いこと言ってくれたな~と思って。
——なんだかドラマのシーンみたいですね……。
平野:でもね、とっても好きな人と結婚しないほうがいいわよ。だって、悲しくて寂しくて、会いたくて会いたくて、ますます好きになっちゃって……。だから、あんまり好きな人とは絶対に結婚しちゃダメだって、本当に思ったのね。あとがつらいから。もし、嫌なジジイだったら、「あの野郎! あんなこともあったな。こんなこともあったな」って思って、諦めが早いけどさ(笑)。
——本当に愛してらっしゃったんですね。結婚したときは、「この人だ!」と思ったんですか?
平野:思っちゃったわよ。私だって、モテないわけじゃなかったけど、どの男性もみんな違うから、「私は一生結婚できないのかな……」って思ってたの。そうしたら、和田さんが、私のことを見つけてくれて。和田さんと会って、一緒にご飯を食べることになったのよ。
でも、久米宏さんに、「和田さんから『僕んち来ない?』って言われても、絶対行っちゃダメだよ」ってクギを刺されてて。当時は、久米さんの言うことを無視してやろうと思ってたから、和田さんが「僕んち来ない?」って言った途端に、「行きます! 行きます!」って二つ返事で行っちゃったわよ(笑)。
それで、会って10日後に、「結婚しよう」って言うから、「しましょう! しましょう!」って。そしたら、次の会話から、「レミちゃん」じゃなくて、「レミ」になっちゃってさ。「ずいぶん現金な人だな」って思ったけどね(笑)。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘)
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情報元リンク: ウートピ
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