長年女性誌を中心に美容記事を担当し、初の単著『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン)を上梓した、ライターの長田杏奈さん。
「全員美人!」をみんなに伝えていきたいと語る長田さんが、書くときに気をつけていることについて聞きました。
「美容は自尊心の筋トレ」とSNSで発信していたら…
——これまでは、誰かに取材をしてその人の言葉を書いてきた長田さんが、「長田杏奈」として自身の考えを発信するのは、勇気が必要だったと思います。
長田杏奈さん(以下、長田):長年、自分の気配を消してきましたからね。取材対象の言葉の中から、究極に純粋なエッセンスをつくる職人みたいな感覚でやっていました。ライターは「ご本人の言いたいことや素敵なところがすべて入っているエキスを抽出する仕事」で、私の思考は不純物だと思っていましたね。
——職人として黒子に徹していたのに、自分の意見を書こうと思ったきっかけは?
長田:友人の雨宮まみさんの存在が大きいです。私を含め、彼女の文章を支えにしていた人はたくさんいるのに、亡くなってしまって……。「まみさんがいなくなったら、ああいう文章を書いてくれる人がいなくなっちゃう」と思ったんですね。
一応、私だってライターとしてずっと文字を書いて生きている。「私はまみさんみたいには到底なれないけど、自分を出さずにお茶を濁し続けるのは無責任なんじゃないか」と思っていたときに、編集者さんが声をかけてくれて。SNSで「美容は自尊心の筋トレ」という言葉をずっと発信していたんですけど、「これをテーマに、書いてみませんか」と言ってくださって。その人が、まみさんの担当編集さんだったんですよ。このご縁を繋がなきゃと思って。
雑誌から学んだ発信術
——長田さんのコラムもSNSを通した発信も、明るいものが多い印象です。
長田:人前で闇を出さない癖がついているのかな? SNS上で発信するときも「一緒に怒ってやっつけようぜ!」というアプローチよりも、「一緒に楽しい方へ行こう!」と言う方が好き。あんまり、ドロドロ重苦しいものを出したくないんです。そういうのって、触れた人に毒がまわるような気がしちゃうんですよね。
雑誌ライターとしてのキャリアが長いことも影響しているかもしれないです。「誰にでもわかりやすく、読みたいと思わせる文章じゃないとダメ」とよく言われていたので、重からず、軽からず。自然とバランスを考えるようになったのかもしれません。
——長田さん自身のルーツになった美容家さんや、ライターさんは?
長田:今でこそ美容誌っていっぱいあるけど、私が小さかった頃は美容専門誌ってあんまりなかったんですよ。でも、齋藤薫さん、嶋田ちあきさん、藤原美智子さんなどの美容の巨匠が一気に世に出てきた、すごい時代があって。季刊の専門誌やファッション誌のメイクページを、一語一句味わいながら読んでいました。
言葉の賞味期限を意識して発信
——そのころに読んでいた美容記事と、今の流れを比較して、変化を感じることはありますか?
長田:みんなが元気だった時代は、「たしなみ」や「お作法」の時代で、高い美意識の下、手をかけることで他と差をつけるテクニックがよく読まれていたように思います。当時はそれでよかったけど、今はちょっと違うんですよね。「みんなバラバラに好きにしたらいい」って。たしなみとか、マナーとか、おもてなしみたいに、女性を型にはめて閉じ込めるのはもう古いなと思います。
——長田さんが以前「言葉にも賞味期限がある」とお話されていたのが印象的でした。
長田:たとえば「女らしい」とか。よく使われている言葉を反射的に使うのって、危ないですよね。最近賞味期限を感じているのは「ご機嫌」です。いつもご機嫌でいられたら本当に素敵だし、私だってそうありたい。けど、「いつもご機嫌」を適用していい場面と、そうじゃない場面ってあると思うんです。
本当は悲しいし、怒っているし、気持ちを伝えなきゃいけない部分で、上っ面だけの「ご機嫌」で感情にふたをしてしまうのって、怖くないですか?
——自分に無理をして「ご機嫌」を使ってはいけない、と。
長田:はい。そのうえ「ご機嫌な女がいいよね」って他者に押し付けるのはよくないと思うんですよね。すでに頑張っている人に対して「我慢」の圧をかけるのはイヤだなって。ご機嫌カツアゲですよね。処世術だとは思うけど、強制の空気をつくるのはよくないです。
(取材・文:小沢あや、撮影:大澤妹、編集:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
「ご機嫌」の押し付けはカツアゲ。私が言葉を使うときに気をつけていること