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「こういう私がいたんだ」47歳でデビューした小説家が思う仕事の醍醐味とは? 

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仕事や生き方に行き詰まりを感じている人々が図書室を訪れたことをきっかけに次の一歩を踏み出す様子を短編の連作で綴(つづ)った青山美智子(あおやま・みちこ)さんの小説『お探し物は図書室まで』(ポプラ社)が11月に発売されました。

年齢も職業もバラバラの5人が探していた物とは? そして一歩踏み出した先に見えたものは? 

前編のインタビューで「私も47歳で小説家デビューするまで転職が多かったので『仕事をテーマにするのは面白いな』と思った」と語った青山さんに、仕事や自分の居場所をテーマにお話を伺いました。

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自分をダメと感じるのは合わないことをやっているから?

——「仕事がテーマ」の小説ということですが、自分の居場所を見つける、あるいは居場所を作っていく物語でもあるなあと思いました。

青山美智子さん(以下、青山):まさに4章に登場するニートの浩弥君がそうなのですが、というか私自身がそうだったのですが、自分をダメだと思い込んでしまっているときって実は合わないことをやっているだけだったりするんですよね。もちろん自分に合ったものを見つけるのって難しいし、運やタイミングもある。自分にはこれが向いていると思っていてもそういう場がないこともあるのですが……。

でも、自分の中にある光を見いだせれば自分らしくいられる。浩弥君の物語は自分が自分らしくいられる場所にたどり着くまでの話で、彼が一番探し物を見つけたんじゃないかなと思います。

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——青山さん自身もそうだったのですか?

青山:謙遜でも何でもなくて、実際に私は人より苦手なことが多いと感じてきました。免許は持っているけれど、車の運転が下手だったり、方向音痴だったり、なくし物がやたら多かったりとかたくさんあるんです。そう考えるとダメだなと感じることも多いのですが、その代わりに自分が得意なことや好きなことに敏感なんです。

小説家デビューは47歳のときだったのですが、今は好きで好きでたまらないことをやらせていただいて、仕事につながったりしているのは幸せだと思うし、ダメなんだけれどダメじゃない自分もいるのかなと思えるんです。開き直りもあるのかもしれないですが、苦手なことを全部できなくていいんだとやっと気づいたのが、40歳過ぎだったかもしれないです。

「自分は天才じゃない」と気づいて楽になった

——青山さんは小説家としてデビューされるまでずっと投稿を続けてきたと伺いました。

青山:14歳から書き始めたので33年間書き続けてきたのですが、大学を卒業して新聞記者をやったり編集者をやったりしながら小説の投稿を続けてきました。日の目を浴びるまでは長かったですが、ずっと書いてはいました。

ただ、それは「根性で」とか「あきらめないで」という感じでは全然なくてやめるきっかけがなかっただけなんです。書くこと自体は年齢制限もないしパソコンがあればできる。書きたいものがずっとあったというだけなので努力してないとは言いませんけれど、努力に努力を重ねてという感じではないんですよね。

——書かずにはいられない感じでしょうか?

青山:本当にその通りです。書かずにはいられないという衝動でここまできたというか、逆にそれがなかったら続けられなかったと思います。きっと書いちゃう性分なのだと思います。

——性分っていい言葉ですね。才能とも言い換えられると思うのですが……。

青山:才能というか、自分が天才じゃないというのは早いうちに気づいたので、それはすごいラッキーだったなと思います。天才の苦悩は知らないで済むというか。天才じゃなくて良かったって思います。

——自分は天才じゃないと思っても、やめなかったんですね。

青山:自分は天才じゃないと気づいたら楽になりました。高校生の時に、同人誌のサークルに入っていたのですがすごくちやほやされていたんです。「うまいね!」「面白いね!」と褒められて「小説の新人賞に応募してみなよ」と言われたのですが、規定の95枚以上の小説が書けない。その時点で「あ、私天才じゃないじゃん」って気がついて楽になりました(笑)。だったら、好きなように書けばいいじゃんと思って投稿を始めたのは、25歳のときなので結構たっていますね。

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誰でもあって誰でもないような人たちの話を書いていきたい

——次に書きたいテーマはありますか?

青山:テーマというか、私はまだ無名の新人なので、まずは覚えてもらいたいという気持ちのほうが強いです。「青山美智子ってどんなの書くの?」と言われたときに、すごく言いにくいんです。SFでもないし、ミステリーでもないし、いろんな人が出てくるいろんな話としか表現できなくて(笑)。なので、まずは私のスタイルを定着させたいという気持ちがあります。

——それが短編の連作というスタイルなのでしょうか?

青山:そうですね、市井の人たちの話、誰でもあって誰でもないような人たちの“靴の中の小石”のようなことを書きたいですね。今年はこんな状況でみんな頑張っているじゃないですか。ちゃんとマスクして手を洗って外出も自粛して……。私が言うことではないのですが、みんなよくやっていると思うんです。だから、「あなたはそこにいるだけで頑張ってるよ」というのを伝えていけたら。

デビューしてからは、編集さんと一緒に作品を作っていくのがすごく面白いんです。33年間、ずっと一人で書いていたので(笑)。『お探し物は図書室まで』は(担当編集の)三枝さんとではないとできなかった作品ですし、誰かとチームで仕事をするのを楽しんでいきたいと思っています。

小説で小町さんが編んでいる羊毛フェルトも三枝さんとお話ししている中で出てきたアイデアです。最初は小町さんが選書して出てきた紙にオススメの本のタイトルと付録の言葉が書いてある設定にしようと思ったのですが、三枝さんに「付録なので実際にモノとしてあったほうがいいです」と言われて「じゃあ何がいいだろう?」と考えて出てきたアイデアが羊毛フェルトでした。針一本で作れるし、手も汚れないし、温かみもある。地球のような丸いものから精巧なカニや生き物も作れるのでこれしかないと思いました。

——表紙にもなっていますね!

青山:まさに編集者との化学反応だなと。一人では絶対浮かんでこないアイデアでした。「こういう私がいたんだ」と気づかせてくれるのが誰かと一緒に仕事をするということなんだな、と改めて思いました。

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(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)

情報元リンク: ウートピ
「こういう私がいたんだ」47歳でデビューした小説家が思う仕事の醍醐味とは? 

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