男性の育児休業(以下、育休)の取得率は約7%のうえ、一週間以内の短期間が7割。しかし、先日には改正育児・介護休業法も成立し、少しずつ男性も育休をとりやすい社会がつくられようとしています。
7月9日に配信・放送開始のWOWOWオリジナルドラマ「男コピーライター、育休をとる。」は、現役会社員の魚返洋介(うがえり・ようすけ)が、半年間の育休を取得する物語。夜間授乳や保活、パパ友づくりなどに奮闘する魚返を、瀬戸康史さんが演じます。
前後編インタビューの後編では、いまだに根強い「男性は育児より仕事を優先すべき」という価値観について、どのように感じているか。結婚や育児だけに限らず、どうやって周りと良好な人間関係を築いていくか。瀬戸さんご自身の価値観にクローズアップしていきます。
なんでも、やれるほうがやればいい
——瀬戸さんが演じたコピーライターの魚返や周りの男性社員の中には、「男は育児より仕事」といった感覚がありました。瀬戸さんご自身はいかがですか?
瀬戸康史さん(以下、瀬戸):「男がやるべきこと、女がやるべきこと」みたいに区別する感覚はないですね。その時々で、やれるほうがやれることをやればいいと思う。僕らの世代はもう、そういう意識の人のほうが多いんじゃないでしょうか。
僕は福岡出身なんですが、親父は九州男児ながらフラットな人で、昔から当たり前に家のことをしていました。母親がいないときは夕食をつくったり、休日には一緒に遊びに行ったり……愛情を持って子育てしてくれたと思います。なので、自分もそれが当たり前だと感じていますね。
——誰もがそう思えればいいけれど、まだ世の中には、性別的役割分担を押しつける価値観が根強く残っていたりします。そういう一昔前の固定観念から抜け出すには、どうすればいいと思いますか?
瀬戸:どうしたらいいんですかね……。誰かに何かを言われて人が変わるって、本当に難しいことだと思います。視野を広げて、いろんな価値観にふれることで、自分から変わりたいと思わなきゃ変われない。だからこそ、今回のドラマみたいな作品がきっかけになったらいいですよね。
——瀬戸さんご自身も、この作品で価値観が変わるような学びはありましたか。
瀬戸:育休は幸せな時間だとばかり思っていたけれど、赤ちゃんに振り回されて自分の思うように事が進まないのって、結構なストレスですよね。なんにせよ、子育てはやっぱり一人じゃ相当大変なんだなと学びました。二人でやってギリギリ、くらいじゃないですか? パートナーだったり、家族や友達だったりと支えてくれる人がいないと本当に辛いだろうな、と思いました。
——妊娠・出産そのものは女性にしかできないけれど、育児や家事は分担できるから、うまく複数でまわせるといいですよね。
瀬戸:現実問題、女性は妊娠をして自由に動けない時間がどうしても多いから、そのぶん自分が動けるときには絶対に動くべきだと思いますね。……まぁ、現実ではどうなるかわからないけど(笑)。ただ、こういう作品を通じて「育児や育休はこういうものだ」ってざっくり分かっているかどうかで、子育てへの向き合い方は全然違うと思う。知っていると知っていないとでは大きな違いがあると感じました。
困っている人がいたら、助けるのが当たり前
——よい育休に大切なものって、ズバリ何だと思われますか?
瀬戸:パートナーへの思いやりは言わずもがなだけど、あとは自分を見失わないことですかね。どんどん余裕がなくなってきちゃうから、そこで自分を見失うと悪循環でしかない。無理なことは背負い込まないで、誰かに助けを求めるのが大事なんじゃないかなと思います。
——思いやりを持って、しんどいときには助け合う。夫婦に限らず友人や同僚などとも、そういうパートナーシップを築くためには何が必要だと思いますか。
瀬戸:まずは、相手の話を聞くことじゃないでしょうか。グチや弱音を聞けたらいいけれど、そこまでいかなくても、最初のうちは日常会話とかでいいと思う。なんというか……僕にとって誰かを助けるのって「話を聞いてあげる」とか「支えてあげる」みたいに、偉そうな感じじゃないんですよ。しんどそうな人がいたら助けるのが当たり前。「お水とって」「はいよ」くらいの軽い感じなんです。だから、周りの大切な人の話は普段から聞きたいし、気軽に頼ってもらえたらうれしいですね。
「かわいい」自分も、受け入れたら楽になった
——そんなご自身は、周りに頼れるタイプですか?
瀬戸:若いときは頼れませんでした。17歳で福岡から出てきて、最初は孤独で毎晩泣いてましたもん。そのつらさを聞いてほしくて親や友達に電話してるのに、いざとなると弱音を吐く自分が恥ずかしくなって、つい「大丈夫、元気だよ」って強がっちゃう。そして電話を切ったあとにまた泣く、みたいな感じでした。でも、20歳くらいからはだんだん強がるのも面倒くさくなってきて、ちょっとずつ弱い部分も見せられるようになったんです。いまは、自分が親しい人やずっと一緒に仕事をしたい人には、自分の気持ちをちゃんと見せるようにしています。想いやグチ、弱いところも全部。
——弱い部分も見せられるようになって、変わりましたか?
瀬戸:変わりました。ラクになりましたよ。そういえば、若いときは「かわいい」って言われるのもすごくいやだったんです。でも、当時はそれしか武器がなかったから、本当は「かっこいい」って言われたい気持ちを抑えてた。そういうモヤモヤも、少し年齢を重ねて「かわいいキャラも自分なんだ」って受け入れられるようになってきてからは、すごく気持ちが軽くなりました。弱音を吐けるようになったのも、その感覚と似ている気がします。
——かっこよさもかわいさも、共存しているのが瀬戸さんだと思います! いまは「かわいい」って言われたら、いかがですか?
瀬戸:いまはうれしいですよ(笑)。それも自分なんだな、って思います。
■番組情報
WOWOWオリジナルドラマ
「男コピーライター、育休をとる。」
7月9日(金)配信・放送スタート
【配信】全12話一挙配信【無料トライアル実施中】[WOWOWオンデマンド]
※第1回放送終了後より配信スタート
【放送】毎週金曜夜11時(全6回)【第1回無料放送】[WOWOWプライム]
いち早くWOWOWオンデマンドで楽しめる!
6月25日(金)午後5時 第1・2話を配信![WOWOWオンデマンド]
(ヘアメイク:須賀 元子 /星野事務所、スタイリスト:小林洋治郎 /Yolken、衣装協力:VIKTOR&ROLF、BARNSTORMER)(取材・文:菅原さくら、撮影:青木勇太、編集:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
「かわいい」に悩んだ日々 吐き出せるようになって変わったこと【瀬戸康史】