恋愛リアリティー番組『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン3への出演で知られる武井亜樹さん。東大卒で元経産省の官僚などという経歴を持つ武井さんですが、現在はフリーランスとして宇宙関連プロジェクトに関わりながら、執筆や情報発信の仕事にも携わっています。そんな武井さんが、自身の半生を綴(つづ)ったエッセイ『自分だけの輝く人生のつくり方』(Gakken)を出版しました。第3回目は「スラッシュワーカー」という働き方について聞きました。
「変わってる」のは狭い世界の中での話
──今はフリーランスとして、宇宙関連のプロジェクトに関わったり、メディアでの仕事も増えたりしているということですが、海外にも頻繁に行かれているんですか?
武井亜樹さん(以下、武井):出張が多くて、だいたい1週間くらいで行ったり来たりしています。
──経産省時代は女性活躍の仕事に携わっていたと伺いましたが、日本のジェンダーギャップ指数は148カ国中118位(2025年)という状況です。海外と日本を頻繁に行き来していて思うことなどはありますか?
武井:正直、海外に行くと、日本の社会がまだ少し遅れている部分に気づかされることがあります。もちろん良いところもたくさんありますが、たとえばジェンダーの平等などは特にそう感じます。
自分の話になりますが、私は昔から「ちょっと変わってる」と言われることが多くて、周りの暗黙のルールに合わせるのがすごく苦しかったんです。でも、高校生のときにアメリカへ留学してみたら、そういう小さなルールはほとんど通用しませんでした。足を組むことも、髪型やメイク、服装も自由で、「自分をわざわざ閉じ込めなくていいんだ」と実感したんです。
もちろん、日本のルールは安全や秩序を守るために大切だし、その恩恵を受け続けたいとも思っています。でも、そのルールによって自分の可能性を狭めたり、苦しむ必要はない。だから今では、「変わってる」と言われても、それはあくまで“狭い世界の中での話”だと思えるようになりました。 自分はその中で、自分の意思で生き方を選んでいる——そんな感覚を大切にしています。
──自分の選択で生きているという実感ですね。
武井:海外に行くと、日本のインフラや治安、食事の便利さを実感します。そういう意味で、日本にベースがあるのはやっぱりいいなと思います。そして、そんな経験を通して、自分の中で「どこに自分の基盤を置くか」はすでに腹落ちしています。
Gakken提供
「スラッシュワーカー」という働き方
──複数の職業を掛け持ちする「スラッシュワーカー」についても書かれています。武井さん自身もスラッシュワーカーで、台湾の初代デジタル発展部部長(大臣)を務めたオードリー・タンさんも推奨している働き方ですね。
武井:私は、宇宙の仕事にも関わりながら、女性の活躍を支援する活動をしたり、メディアに出演したり、ビジネスにも取り組んでいます。 つまり、いろいろなことを同時にやっているんですよね。
そうすることで、自分の好きなことをさまざまな形で表現できるし、人生が「ゼロか100か」の二択ではなくなる感覚があります。「この会社だけ」「この仕事だけ」と自分を縛らない生き方ができるのが、今はとても心地いいんです。
──武井さんに合った働き方だったのですね。
武井:もちろん不安がなかったといえば嘘になります。公務員という安定した立場からフリーランスになるのは勇気が必要でした。でも、オードリー・タンさんも同じことを言ってくれていると知って嬉しかったんです。
それに、私はこれまで伝記をたくさん読んできて、逆境を乗り越えた偉人たちの人生から勇気をもらってきました。
例えば、アメリカに生まれていたら違う人生になっていたかもしれない、とか思うこともありますが、偉人たちは小学校を中退していたり、困難な状況からスタートしたりしていたのに、それでも結果を出している。そういう話を読むと、「私もこのまま大丈夫、もっと挑戦しよう」と思えるんです。
サン=テグジュペリも作家とパイロットを両立していた。つまり、一つの道だけに縛られる必要はなく、複数の夢ややりたいことを同時に叶える、という世界線が存在するんだと思えました。
──「スラッシュワーカー」という働き方については広めていきたいと考えていますか?
武井:そうですね。今、やりたいことを複数叶えつつ生活も成り立っているので、この「スラッシュワーカー」という概念を通して、例えば「大企業にいるからやりたいことを諦めなきゃいけない」とか「配属が決まったからもう無理」と思い込む必要はないんだ、ということを著書を通じて伝えられればと。
もちろん、どちらかが絶対にいいとかは全然ないと思うのですが、こういう働き方でうまくいっている人もいるし、「こういう人もいるんだ」「それでいいんだ」と思えることが大事かなと。私自身も、誰かの伝記を読んで「あ、こういう道もアリなんだ」と思った経験があるので、他の人もそうやって「こういう生き方をしている人がいるんだ」と感じてもらえたらいいなと思います。
──ロールモデルという言い方になるんでしょうか。
武井:言葉にはあまりこだわりはないのですが、実際にこういうスタイルで働いている人がいるというだけで、考え方や選択肢の幅が全然違ってくると思います。
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──宇宙関連のプロジェクトにも関わっているということですが、具体的にはどんなことを考えているんですか?
武井:一番は宇宙飛行士になりたいんです。そのために、今は宇宙のスタートアップに関わり続けています。加えて、自分にもっと必要な知識として、AIやテクノロジー、防衛分野なども勉強したいと思っています。
──経産省時代に携わっていた女性活躍については?
武井:今は理系の分野にいるので、理系に来る女性を増やしたり、理系で活躍する女性の魅力を高めたりしたいと思っています。
自分を幸せにする勇気を持って
──最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
武井:私が本にも書いたことですが、自分の人生の主人公は自分です。人生という物語を良くするか、楽しくするか、最終的にハッピーエンドにするかも全部自分次第です。幸せになりたいなら、幸せになれるような自分の一歩を踏み出すことが必要です。周りのためではなく、自分のために行動しないと、自分の人生は幸せになりません。だから、自分を輝かせる、幸せにする勇気を持ってほしいなと思います。
Gakken提供
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情報元リンク: ウートピ
宇宙プロジェクト、執筆活動…武井亜樹が選んだ「スラッシュワーカー」という働き方