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「君は一人じゃない」と伝えたい…『愚か者の身分』永田監督 が若者の貧困と孤立を描いたワケ

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若者たちが闇ビジネスから抜け出そうともがく姿を描いた映画『愚か者の身分』が10月24日に公開されました。戸籍売買に手を染めるタクヤ(北村匠海さん)、弟分のマモル(林裕太さん)、兄貴分の梶谷(綾野剛さん)の逃走劇を通し、現代の若者の孤立を浮き彫りにするサスペンス。

「闇バイト」や「トー横キッズ」など若者の貧困が問題になるなか、「社会の中で孤立している若者たちに、『君は一人じゃない』」と伝えたい。そして彼らの親世代にこの映画を届けたい」と話す永田琴監督にお話を伺いました。

永田琴監督

永田琴監督

「なぜ若者が“闇バイト”に手を染めるのか?」の背景を知りたい

――原作は西尾潤さんによる同名小説ですが、映画化したいと思われた経緯を教えてください。

永田琴監督:すぐに映画化を決めたわけではなく、少し時間をかけてのことでした。もともと西尾さんとは知り合いで、「小説を書いたんだ」と聞いたのが最初です。50ページほどの原稿を読ませてもらって、主人公のマモルがアジサバを手に入れるところまでが描かれていました。その時点でとても映画的だと感じましたが、当時は自分とはまったく違う世界の話に思えて、少し距離を置いていました。

その後、世の中がコロナ禍になり、北京で進めていたドラマの企画が全部止まってしまった。日本に戻らざるを得なくなり、環境ががらりと変わったんです。その頃、たまたま知り合いが警察にお世話になることがあって、今まで知らなかった世界――犯罪やその現場に関わる人たち――に興味を持つようになりました。いろんな本を読むうちに「なぜ人は犯罪に手を染めてしまうのか」と考えるようになり、自分の中で映画づくりとその関心が少しずつ重なっていきました。

――それが西尾さんの小説につながったということでしょうか。

永田:自分のオリジナル企画を動かすのは難しい時期だったので、改めて「いい原作がないかな」と探していたときに、潤さんの作品には続きがあることを知って、読んだらものすごく面白かった。自分の中で扱いたいテーマと重なる部分もあり、「これならうまく行く」と思いました。

――そこから企画はどのように進んでいったのでしょうか。

永田:最初に声をかけたのは、今回のプロデューサーの木幡久美さんでした。とはいえ、そこからうまく動き出すまで1年以上かかりました。2021年に話し始めて、実際に制作会社(THE SEVEN)に持ち込んだのは翌年。最初のうちは「なぜこの監督がこのテーマを?」という反応ばかりで、なかなか受け入れてもらえませんでした。

でもある日、昔からの知人だった(プロデューサーの)森井輝さんがTHE SEVENという会社に入ったと知ってとりあえず遊びに行ったんです。「今、映画の企画を考えている」と話したら、「トー横キッズのテーマ、興味あるんだよね」と言われて。それで木幡さんを紹介して、話が一気に動き出しました。あのときは本当に神様が降りてきたと思いました(笑)。

――企画が通るまでって本当に大変なのですね。

永田:本当に大変です。映画づくりって“お見合い”みたいなもので、監督が撮りたいものと、プロデューサーが求めるテーマが合わないと成立しないんです。当時はドラマの仕事もやめて、ひたすら企画書づくりとアポ取りの日々でした。アポを取って会うまで1ヶ月、企画への返事が来るまで2か月、単純計算で1年で4回しか企画提出できない。それで返事を待たずに次のアポを取ったりして…気が遠くなりましたね。

日本では企画段階でお金が出ないので、収入ゼロで動くしかない。師匠である岩井俊二監督に「好きでやってるなら、(収入がなくても)自分で動くしかないよね」と言われた言葉が支えでした。画家が「売れないから絵を描かない」と言わないのと同じで、好きならやるしかない。そう腹をくくって、1年間は他の仕事をしないと決めました。

――1年間は他の仕事をしないというのは相当な覚悟だったのですね。

永田:何か別の仕事を始めると、結局どっちつかずになってしまう。だから「ドラマもやらない」と決めました。生活が苦しくなっても、一度腰を据えてやらないとダメだと思ったんです。

――それでもこの映画を撮りたかった理由は?

永田:当時、「闇バイト」のニュースが社会問題になっていました。若い子たちが脅されて犯罪に加担してしまう。どうして彼らがそんな道に行ってしまうのか――その背景を知りたかったんです。

ある事件で、が毎日LINEしていた息子さんが闇バイトに関わり、逃走中に亡くなってしまうというニュースがありました。お父さんは「毎日やりとりしていたのに気づけなかった」と。「うちの子に限って」と思う家庭でも、今は誰もが危うさと隣り合わせ。そう感じて、この映画は若者だけでなく親世代にも届けたいと思いました。

「愚か者の身分」場面写真

(C)2025映画「愚か者の身分」製作委員会

「君は一人じゃない」と伝えたい

――もともと、子どもや若者と関わる活動もされていたと伺いました。

永田:40歳の頃から「えいがっこ!」という子どものための映画ワークショップを主宰してきました。映画を通して子どもの“考える力”を育てる取り組みで、Appleさんの協力の元、子どもたちにiPadを貸し出して、自分の意見を形にするプログラムです。デジタルを悪とするのではなく、むしろそれを道具に友達と話し合う力を育てたいと考えました。映画って、人をつなげたり、対話を生んだりする力があると思うんです。

今回の作品でも、登場人物たちがぶつかり合いながらもつながっていく姿を描きたかった。社会の中で孤立している若者たちに、「君は一人じゃない」と伝えたい。そんな気持ちでこの映画を作りました。

3人の視点を交差させることで浮かび上がるもの

――今回の作品でも、タクヤ、マモル、梶谷の3人の関係性が印象的でした。「男の友情」のような言葉ではまとめたくないのですが、それぞれが互いを思いやっている様子が丁寧に描かれていて印象的でした。

永田:実は3人が一緒に出てくるシーンってほぼないのですが、この3人を選んだ時点で、「それぞれの人生を通して、ひとりの人間の生き様のようにも見える構成」にしたいと思っていました。たとえば、閉じた世界から抜け出せるかどうか……。そうしたテーマを、3人それぞれの姿を通して描きたかったんです。

ひとりの人物の物語にしても成立するかもしれないけれど、3人にすることで「似たような道をたどってしまう若者たち」「後輩に同じことを繰り返す構造」みたいな社会的な広がりを出したかった。人間関係を通して見えてくるものを描きたかったんです。

結果的に3人それぞれ別の人生を歩んでいるけれど、マモルがそのまま進めばタクヤのようになっていたかもしれないし、梶谷のような存在になっていたかもしれない。そんな“途中経過”としての多層的な視点を入れることで、映画的な深みを出せたらと思いました。

「愚か者の身分」場面写真

(C)2025映画「愚か者の身分」製作委員会

――最後に、この作品を観る読者にメッセージをお願いします。

もしご自身が親の立場なら、「もし自分の子がこの立場だったら」と想像しながら見てほしいです。若い男性たちの物語だからと目を背けずに、彼らの中にある“人間らしさ”や“切実さ”を感じ取ってもらえたらうれしいです。

現場では、あるシーンで「ここはラブストーリーだと思って演じてほしい」と伝えていました。作品全体としても、ある種の“愛の物語”として撮っている部分があります。そういう目線で見てもらえると、また違う解釈ができると思います。どうか目を背けずに、登場人物たちの思いに寄り添って見ていただけたら嬉しいです。

■映画情報
映画『愚か者の身分』
公開日:10月24日(金)全国公開
配給会社:THE SEVEN ショウゲート

情報元リンク: ウートピ
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