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中国映画『来し方 行く末』で描かれる40代からの“静かな再出発” …80年代生まれ、リウ・ジアイン監督に聞く

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“40代で14年ぶりに新作映画を完成

就職氷河期に就職活動をし、キャリアの形成に苦労した人の多い40代。さまざまな身体的な衰えや今後への不安が強まる時期でもあり、「このままでいいのか?」「やり直すなら今が最後のチャンスでは?」と考えがちな節目の年齢層でもある。

それはお隣の中国でも同じ。公開中の中国映画『来し方 行く末』(4月25日公開・リウ・ジアイン監督)の主人公・聞善(ウェン・シャン)も、40歳目前の男性だ。大学院を出たあと、脚本家を目指すも芽が出ず、弔辞の執筆で生計を立てている物書き。夢を捨てることもできず、かといって再び物語を書き始めることもできないまま、日々をやり過ごしている。ただ、彼の書く弔辞は評判がよく、執筆の依頼は絶えない。このままの暮らしを続けていていいのか?  いや、むしろ続けるべきなのか……?  故人の関係者に取材し、それぞれの人生に触れていく中で、聞善の人生も再び動き出していく。

急速に変化する中国社会で育った「80後」(バーリンホウ)と呼ばれる1980年代生まれも、今は40代前半。この映画の監督・脚本を務めた劉伽茵(リウ・ジアイン)さんも81年生まれの80後だ。中国の名門映画大学・北京電影学院を卒業。2002年長編映画デビュー作『牛皮』(原題)が第55回ベルリン国際映画祭で授賞するなど、中国インディペンデント映画界の期待の若手として注目されるも、その後は創作から離れて母校で教鞭を執るように。現在も脚本制作を教えながら、2009年『牛皮2』(原題)以来、14年ぶりにこの『来(こ)し方 行(ゆ)く末』を完成させた。どんな思いから人生の再出発の物語を描くに至ったのか? 劉監督にお話を聞いた。

リウ・ジアイン監督

弔辞の執筆を生業とする男の物語

--弔辞の執筆を生業にしている人という主人公・聞善(ウェン・シャン)の設定が面白いと思いました。弔辞を書くことで人の生き死にと向き合いながら、彼自身も慰めを得ていきます。この設定を思いついたきっかけは?

劉伽茵監督(以下、劉):この映画の脚本は2020年、つまりもう5年も前に執筆したものです。聞善のキャラクターは、そのもっと前、2016年頃には構想がありました。1人で八宝山(北京市の地名。大きな墓地があり、地元の人は八宝山=墓地のイメージを持っている)の葬儀場にいた時、「私もここで働けるかな?」と思ったのです。もし働けるとすれば、何ができるだろうと考えたとき、私は文章に敏感で、書くことが得意だったので、自然と「弔辞なら書ける」と思ったことが始まり。その考えがずっと記憶に残っていました。それから何年もかけて、この映画の聞善というキャラクターに発展していったのだと思います。

――弔辞を執筆するという仕事は、中国で本当にあるのですか?

劉:自分の家族や友人のために弔辞を書いたことのある人は多いと思いますが、職業としては、ありません。でも、すごく少数ですが、書いて対価をもらっている人はいます。

――監督は『牛皮2』(2009年)を制作したあと、北京電影(映画)学院文学系(文学部)で教鞭を執ってきましたね。 “創作”と“教える仕事”の間にはギャップがあると思いますが、ジレンマに陥ったことはなかったですか?

劉:創作というのは、ある種特別な行為で、生活は不安定的ですし、消耗します。楽しくもあり、つらく苦しいことでもある。いろんなことと相容れないものだと思います。私は大学で映画の脚本制作を教えていますが、 “創作”と“創作を教える”の間に、そもそも矛盾がありますよね。創作は明確である必要がありません。曖昧なものであり、曖昧であっていいものですから。でも、創作について教えるときは、物語をどう処理すればいいか、はっきり伝えなければいけない。創作についての問題を、学生に分かるようにはっきり語ることが求められる。思考する時、それぞれ脳の別の領域を使っている感覚があります。

だけど、時間はかかりましたが、2つの違う領域が両方鍛えられた気がします。もっと若かった頃は、どちらか一方を選ばなくてはいけないと思っていました。でも、ここ10年くらいでしょうか。ゆっくりですが、折り合いをつけられるようになりましたね。抱えていた葛藤を強みに変えることができたと思います。

©Beijing Benchmark Pictures Co.,Ltd

自分の心地よい生き方を見つけていく

――中国メディアのインタビューに、監督は主人公の聞善によく似ていて、内向的な性格だと語っていましたね。声が小さく、届きにくいというだけで、世の中には聞善のようなタイプが大勢います。私もフリーランスで文章を書く仕事をしていますが、内向的な性格で、自分をアピールしたり、考えを述べるたりすることが苦手なので、聞善に共感しました。

劉:聞善は身の処し方や人との接し方という点で、この映画の脚本を書いていた頃の私にかなりよく似ています。自己表現したがらない人は大勢いますし、そういう人々の声は世の中に届きにくい。存在感が薄いとも言えますが、この世界にはさまざまなタイプの人がいて、最終的にそれぞれが自分の心地よい生き方を見つけていくのだと思います。

でも、私はもう少し積極的でアグレッシブなタイプの内向型人間かもしれません。人は年齢を重ねるにつれて、付き合う人や取り組む事が変わります。そうなると目標も変化し始め、新しいことにトライしたくなる。私個人について言えば、この映画の脚本を書き始めた頃から、人生の新しい段階に入ったのかもしれないと感じているんです。新しい目標ができたので、実現に向けて行動していきたい。仕事の時はむしろコミュニケーション能力が高いほうかもしれません。最近知り合った人は「内向的なんて信じられない」と言うでしょうね。

こんな風に変わったのは、「時間は有限だ」と強く実感するようになったからです。この世界にとっては無限にあるものかもしれませんが、私にとっては有限なのです。限られた時間の中で、やりたいことをして、言いたいことを言いたい。

時々、自分は変わらなければいけないと思うことがあるんです。なぜだかよく分からないのですが、ここ数年は、これまで全然してこなかったことにトライしたり、口にしたことがないような話をしたりしていて、そんな経験をとても気に入っています。「変化する」ということに対しては積極的なタイプかもしれません。少しでも心残りを減らしたいですからね。

でも、内向的って、とてもいい特質だと思うんですよ。

――どういうことでしょう?

劉:内向的な人は、人の話を聞くことに長けていると思うのです。この世界でうまく生きていくにはどうすればいいか、そのチャンスを見つける力を持っている。存在感が薄いとネガティブにとらえるのはちょっと違うと思っています。できるだけ自分の居場所を勝ち取りたい。自分の性格を変えるのではなく、内向的なら内向的なまま自分のために闘うのです。

©Beijing Benchmark Pictures Co.,Ltd

「80後」と呼ばれた世代

――あなたは1981年生まれ、いわゆる「80後」と呼ばれた世代で、40歳目前という設定の聞善もだいたい同世代でしょう。働き盛りの20代、30代の間に、中国経済の急速な発展、失速、さらに不景気という激しい変化の波を経験されてきたわけですが、そんな社会的な背景も聞善のキャラクターに投影されていますか?

劉:意識はしていませんでしたが、客観的に見れば影響はあるでしょうね。聞善の年齢は私より少し若い設定なのですが、同じ時代を生きた人間です。暮らし方、物事の善し悪し、正解か否か、成功か失敗か。私には私の、他人には他人の基準があります。それと同様、社会には社会の基準がある。強大で統一された外的な基準です。

 

聞善にとって、その外的な基準は、彼の内面の基準と異なるものだった。そのギャップにプレッシャーを感じながらも、彼は迎合しませんでした。でも、そうは言いつつ、悩み、傷つき、自虐的な気持ちになったはず。それは聞善の性格に影響を及ぼし、彼の20代、30代を形成していたのかもしれません。この映画の終盤、彼はある答えを見つけますが、そこに至るまでの10年間、そのプレッシャーを感じてきたのだと思います。

©Beijing Benchmark Pictures Co.,Ltd

死と病気について考える機会が増える40代

――聞善が弔辞で故人を送り出すように、年を重ねるにつれて、私たちも大事な人に別れを告げる場面が増えていきます。そんな場面にどう向き合っていくのか、漠然と未来に不安を感じている人も多いと思うのですが、監督がこの映画の制作を通して考えたことはありますか?

劉:40代にさしかかると、死と病気について考える機会が増えます。この2つに対して思うのは、できる限り心残りは減らしておきたいということ。死や重い病気は突然訪れます。1年前に予告されるわけではないのですから、何事も思う存分、やっておきたいですね。

死という相手は大きすぎて、もはや考えることも無意味です。最期のときが来たら、受け入れるしかない。問題は、その時までにどれだけ心残りを減らせるか、自由にできる時間を使えるかということ。20代、30代の頃は「このプロジェクトは実現しないかも……。まあ、それでもいいや」と思うこともありましたが、今は違います。

私自身の話をすると、体調があまりよくないので、もう人生の大半を生きたと感じているんです。これは冗談でも比喩でもなく、急がなければと思っています。今年予定しているプロジェクトや来年の撮影計画は着実にやり遂げたい。始めたからには、全力でやりきるんだという想いが、若い頃より強くなったと感じます。

■作品情報
『来(こ)し方 行(ゆ)く末』
全国公開中
配給:ミモザフィルムズ
公式サイト:https://mimosafilms.com/koshikata/

情報元リンク: ウートピ
中国映画『来し方 行く末』で描かれる40代からの“静かな再出発” …80年代生まれ、リウ・ジアイン監督に聞く

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