「選択的シングルマザー」という言葉をご存じでしょうか?
経済的にも精神的にも自立しており、結婚せず母親になることを選択した女性のことで、結婚せずに子どもを産む女性はアメリカやヨーロッパでは過半数もいるそうです。
実際にシングルで2児の母でもある経沢香保子さん(オンラインベビーシッターサービス・キッズライン代表)と、母、叔母ともにシングルという環境で育ち、キッズラインで、「シングルマザーを応援するプロジェクト」を担当しているやまざきひとみさんに、「選択的シングルマザー」についてお話しいただきました。
結婚は50歳以降でもできる、でも出産は
——「選択的シングルマザー」、まだまだ聞きなれない言葉です。一般的なシングルマザーとはどう違うのでしょうか。
経沢:自分の意志で、結婚せずに母親になることを“主体的に”選んでいる方を選択的シングルマザーと言うそうです。
——経済的な“自立”は具体的に年収どれくらいから?
やまざき:“働ける”という前提でいくと、自分が独身で一人暮らしをしている時に満足していた水準まで稼ぐことができたら、今の時代は子どもも育てられるんじゃないかなって思います。補助もありますし。生きていくための必要経費って、衣食住プラス娯楽と自分への投資なので、衣食や娯楽が占める部分を少なくしていけば、それほど恐れずに産めるんじゃないかと……。
経沢:キッズラインで63人にアンケートをとり、「シングルマザーで大変だと思うことは?」と質問したところ、「子育ての手が足りない」「時間が少ない」など、どちらかというとお金のことより時間がないこと大変と感じている割合が圧倒的でした。
——「シングルマザーはお金が大変なのでは」と考えがちですが、でもそれって20代で妊娠して相手が結婚という選択をしなかったために、やむを得ずに一人で産む……経済的な基盤も整っていないから貧困に陥りがちって側面もあると思うんです。でも、経済的な基盤が整ってくる30代では、また違ってくるのでは。
経沢:そうなんです。なので、30代の働く女性にとって「選択的シングルマザー」は生き方のひとつになると思いました。
もちろん、むやみにシングルマザーを推奨するわけではありません。けれど、日本では結婚してから子どもを産むという風潮のなかで、どんどん出産を先延ばしになってしまって産めない年齢になって後悔しているという相談をたくさん受けるようになっていろいろと調べた時に、先に「出産」を選ぶ女性が増えていると聞いて勇気が出ました。結婚は50歳でも可能性がありますが、妊娠は50歳だと可能性がどうしても低くなる。タイムリミットがあります。
——確かに、「出産のリミット=結婚のリミット」ではありませんよね。
経沢:そうですね。私の周りにはけっこう「子どもを産みたい」といって「まず(結婚するために)マッチングアプリから!」という話が普通でした。
最初はそれで違和感がなかったんですけど、今回のプロジェクトでいろいろと調べていくうちに、「結婚はショートカットして、どうしても産みたいなら先に出産を考えるという選択肢がある」という視点が抜け落ちていたことに気づきました。
——ちなみに、シングルマザーの割合は海外の方が圧倒的に多いとか。
経沢:事実婚っていうカテゴリーの人たちも入っているかもしれないですけど、出生率に占める「婚外子」の割合を調査したところ、フランスやスウェーデンなどの国では50%を超える*という結果も出ています。過半数を超えているなんて、驚きました。出産が結婚した女性しかできないという思い込みを覆されますよね。
「腹が決まる」と生きる力が倍増する
——離婚してシングルになるケースが日本では一般的ですからね。
やまざき:さっき言ったキッズラインのアンケートで、「(シングルになって)いま幸福です」と答えた人が95.8%いたのですが、その理由として目立ったのが、「元旦那から解放された」とか「精神的に自由になった」とか「お金の使い方や育児方針が自由になった」という回答なんです。私は、母と叔母がシングルマザーなんですけど、2人とも楽しそうなんですよね。
——アンケートの結果に納得できる、と?
やまざき:「子どものために」って離婚を我慢している人も多いと思いますが、子ども目線でいうと、それで不幸になっている母を見るほうがつらい。母が幸せかどうかって、子どもにはすごく伝わるんですよ。
私の場合は、「子どものために離婚しない」という選択肢を母にとってほしくなかったので、中学生のときに自分から「離婚してほしい」って頼みました。親が自分のせいで不幸になることを見たい子どもなんていないですし、私のために不幸になったらずっと恨んでしまうと思った。
いま、母に感謝しているのは、楽しそうにしてくれていること。母が自分で幸せかどうかを判断して行動してくれていることです。
——「子どものために」と離婚を我慢してしまう本音には、「子どものために親は2人いたほうがいい」という感覚と、「2人で稼がないと、子どもにかけられるお金が不安」という感覚の2つがあるように思います。
経沢:まず、お金の話ですが、本や資料、ヒアリングの結果、自分自身の経験からいうと、シングルを選択した時点で「腹が決まる」ようです。「腹が決まる」と生きる力が倍増するといいますか、生き方に覚悟が出てくる。
私の場合ですが、育児も仕事もしっかり、“稼ぐ”ということをより主体的に考えられるようになり、実際に収入も上がりました。本などを読むと、最初はパートしか働き口がなかったけど、通信講座で医療事務や介護の資格を取って徐々にキャリアアップをしていて、政治家になった方もいました。
やまざき:シングルマザーになってからジョブチェンジして、そのまま年収が跳ね上がって「家まで買えました」みたいな人もいらっしゃって。
経沢:人生“どちら側面を見るか”ですよね。ポジティブな側面かネガティブな側面か、そして「自分自身を強くしようと思うか」。
ポジティブな人は「自分が成長するきっかけにしよう」とか「子どもとの結束力を強められる」と腹をくくろうとする。でもネガティブな人は「恥ずかしいから」「世間体が」とか言って我慢を重ねるしかなくてどんどん閉じこもっちゃうのかもしれません。
——世間体が、という話が出ましたが、「選択的シングルマザー」に対する身勝手な外野の声って多いですよね。後編ではその点からお話ししていただきたいと思います。
(後編は7月29日(日)公開予定です)
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情報元リンク: watapi 30代、結婚と出産を切り離すという選択肢もある