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キャリアと子育てのはざまで…“成長教”から降りきれない「ぼくたち」のリアル【レジー×稲田豊史】

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「子育てはキャリアのハンデ」「子どもができた瞬間、妻への愛情はゼロになった」「人間は子どもを作って当然」──。令和を生きる父親たちの“不都合な本音”を記録した、ライター・稲田豊史さんの新刊『ぼくたち、親になる』(太田出版)が10月8日に発売。匿名取材だからこそ語られた『子あり』12人の声はWeb連載時から大きな反響を呼びました。本書ではさらに『子なし』3人の声を新たに書き下ろしています。

今回、その刊行を記念して、ビジネスパーソンを追い立てる“成長教”について鮮やかにあぶり出した『東大生はなぜコンサルを目指すのか』(集英社新書)の著者・レジーさんと稲田さんの対談をお届けします。テーマは「子育てと成長」。仕事で結果を出したい気持ちと、親になる現実のはざまで揺れる「ぼくたち」のリアルに迫ります。

『ぼくたち、親になる』の著者・稲田豊史さん

子育てとみずからの成長は、ときにトレードオフである

稲田豊史さん(以下、稲田):レジーさんの『東大生はなぜコンサルを目指すのか』を読んで、ジャンルは違えども、拙書『ぼくたち、親になる』とは切っても切り離せないテーマだなと強く感じ、ぜひ対談させていただきたいとオファーしました。『東大コンサル』では成長に追い立てられるビジネスパーソンの姿が嫌というほど描かれていて、『ファスト教養10分で答えが欲しい人たち』では現代社会の歪みが嫌というほど言語化されています。

レジーさん(以下、レジー):ありがとうございます。『ぼくたち、親になる』のゲラを拝読し、よくここまで多種多様な父親になった男性たち(あるいは父親になることをやめた男性たち)のサンプルを集められたなと感心しました。身につまされるようなエピソードから、「正直、俺はここまで苦しんではいないな……」と感じるものまでさまざまでした。

そんな中で印象的だったのは、インタビュイーの男性の多くが二項対立で物事を考えているな、ということでした。僕自身は二項対立をどう乗り越えるかを常に考えるよう意識しているのですが、その発想自体が「気をつけないとなんでも二項対立的な構造でとらえてしまう」という難しさの表れなのだと気づかされました。

稲田:たしかに。「子育てと仕事」、「子育てと趣味」、「子育てと妻との関係」……。なかでも今回言及したいのが「子育てと成長」です。『東大コンサル』のなかでも、「時間を使わなければ成長はできない」とはっきり書かれていますが、そう考えると成長と子を持ち育てることってなかなか……。

レジー:どうしてもトレードオフになってしまうんですよね。僕自身、小学生の子どもが3人いるんですが、子どもたちが成長する局面、局面でその感覚はありました。どういう時間の使い方が最適なのかは今でも答えは出ていません。ただ一つ言えることは、上の子の中学受験も始まったいま、経済的な面も考えると、仕事の手を緩めることは非常に難しい……。

稲田:僕は3歳の子どもがいますが、「あと2時間あれば資料をもっと読み込めるのに!」「企画をもっと磨き上げられるのに!」と口惜しい気持ちになることも多々あります。本当に、子育てしながら成長なんてできない、というジレンマはいかんともしがたい。『東大コンサル』で言えば、それこそ成長教信者にはとても耐えられる状況じゃないだろうなと。

レジー:子どもの調子と自分の調子ってどうしても連動しがちなので、仕事がのってきたタイミングで子どもの寝室から咳なんかが聞こえてくると、それだけでパフォーマンスが下がっちゃいますよね。そんな経験を積み重ねながら、最近はようやく少しずつ、仕事と子育てのバランスを取れるようになってきたところです。子どもがいるとどうしてもさまざまな制限は出てくるけれど、最初から諦めるというよりは、「何事もやってみて、それでダメだったらしょうがない」と気持ちを切り替えられるようになってきました。

10月8日に発売された『ぼくたち、親になる』(太田出版)

「子どもがいてこそ一人前」論に苦しめられる男たち

レジー:稲田さんは、子どもを授かることには積極的だったんですか。

稲田:妻も僕も子どもは欲しかったです。僕に関しては、あえて不遜な言い方をするなら、「子どもを持つことで人生の局面を変えたい」という気持ちが薄々ありました。人生後半、これまでとは別の展開が見てみたかったんです。ちなみに僕の場合、47歳と遅めの子どもでしたけど、世間一般的には、30代前半で第一子というケースが多いですよね。

レジー:『東大コンサル』でも中心となってくる、中堅ビジネスパーソンに当たる年齢ですね。

稲田:仕事で一番脂が乗ってくる時期で、まさにライフステージの変化とキャリアが衝突することに悩むタイミング。それこそ、女性はずっと昔からこの種のジレンマと向き合ってきたわけですが。『東大コンサル』を読んでいると、子育てと成長欲とのはざまに立たされたビジネスパーソン、特に男性たちの葛藤をリアルに想像してしまって、この先いっそう少子化は進むだろうな、と暗澹(あんたん)たる気持ちにならざるを得ません。

レジー:なるほど。ただし一方で、身も蓋もないことを言うようですが、うまくやれる人はうまくやれています。僕が書籍のなかでインタビューしたうちの一人は、もともと官僚だったんですが、職場のサポート体制的にこのままでは子育てにコミットできないと判断し、リモート勤務が可能でハードワークだけど時間の融通が利きやすいコンサルに転職しているんです。なかなかフレキシブルですよね。

稲田:そうか、一部のエリート男性のなかにはうまくやれちゃう人もいて、彼らはなんだかんだ、子どもを持ちながらでも成長できるのかもしれない。だけどそれって、強い言葉を使うなら「一部の上級国民に限る」という印象も拭えないんですよ。自分で時間の都合を調整できるエリートだけが持てる“持ち物”、それが子どもなんじゃないかと。……自分で言っていて、すごく嫌ですけど。

そんななかで、『ぼくたち、親になる』の取材を通して見えてきたのが、どこまで行っても「子どもがいてこそ一人前」という、ある種の男性たちの間にはびこる自意識でした。女性の一部にもそういう自意識はあると思いますが、男性の場合は子供を「育てる」というよりは「養う」みたいな感じ。

レジー:マッチョイズム、男らしさですね。

稲田:そう、それが男らしさ的な議論と結びついているところがあります。「子どもがいてこそ一人前」という言い方なんてとっくに絶滅したかと思いきや、全然絶滅してなくて、過去から連綿と続く価値観でもある。それを取材で目の当たりにしました。「子どもを持つことで初めて人は成長する、子どもを持てない者は成長できない」。これって何なんでしょうね?

レジー:これって、「会社や仕事での成長」というでかい軸が一つあって、でも子供が産まれると一時的にブレーキをかけなければいけない瞬間がある。だから「子どもを持って初めて成長する論」って、そのジレンマを正当化するための理屈であるような気もするんですよ。「子育てをしている俺は、不確実なものに対してのマネジメントスキルまで高まった!」というように、子どもを持った自分の道は間違っていないと自分に言い聞かせたいんだろうな、と僕は捉えていますね。

『東大生はなぜコンサルを目指すのか』(集英社新書)

文化系男子が父親になることの矛盾と葛藤

稲田:自分の選んだ道を正当化しようとする気持ちの延長線上に、子どものいないコミュニティから子どものいるコミュニティに移行したときに沸き起こる、「あ、まだそのステージにいるんだ?」みたいな上から目線がある気がします。「へ〜、まだアニメとか見てるんだ? 俺は子どものサッカーの送り迎えで忙しいけどね」とか。

レジー:ありますね。あとはだんだん、子どもがいるグループだけで集まるようになっていったり……。

稲田:自分の中に、そうした意識がまったくゼロだとは言い切れません。でもその意識って、仕事を子育てに“邪魔”されていない人たちへの羨ましさと表裏一体でもあって。毎週大量のドラマやアニメを視聴してはSNSに感想を書き連ねている中年男性を見て、「どこからその時間が捻出されているんだろう?」「俺だってオンタイムで大河ドラマを見て、8時46分に感想を書き込みたいよ」と僻んでみたりする……。

レジー:わかります。僕も「思い立った当日にライブを見に行くような生活をしていたな…」と思うこともあります。ただ、僕はあるときから、あまり羨ましくなくなったんですよ。子どもの趣味に合わせて『プリキュア』を一緒に見るようなったりして、従来とは別の世界に触れたことがきっかけだったのかな? 「本来自分がやりたかったことがやれていない」という感覚に悩まされる時期は、案外すぐに過ぎ去りましたね。

稲田:それはどうしてなんですかね? 子どもが生まれるまで、浴びるようにサブカルをはじめとするコンテンツを摂取してきた我々のような「文化系男子」としては、かなりのアイデンティティクライシスじゃないですか。

レジー:たしかにそうなんですが、なんでなんだろうな……。なんだかんだで妻が理解を示してくれる中で自分の時間をとっているというのも大きいのかもしれませんが、もしかしたら良くも悪くも「文化系」の空間が相対化されたのかもしれないです。世界はここだけじゃないと気づいたというか。そういう意味では、さっき稲田さんがおっしゃっていた<「あ、まだそのステージにいるんだ?」みたいな上から目線>を内在化しているのかもしれない。

稲田:なるほど。一方で僕のようなライターや編集者など、文化系的な世界で生業を営んでいる人間からすると、やっぱりコンテンツ摂取が思うようにできなくなるのは辛いんです。子どもができておしゃれなレストランに行けなくなることは覚悟していたけど、これほどまでに映画館に足を運べないこと、本を読む時間がなくなることは、正直予想できていなかった。その程度の受難、女性はずっと前から被っていたわけですが、ひとえに自分の想像力がまったく足りていなかったとしか言いようがない。

レジー:妻に子どもを預けてまで行くとなると、それもまた、ですよね。

稲田:妻に「ジークアクス? ガンダム? それって、仕事で見に行くの?」なんて訝しがられて、「いや、同世代の知り合いがみんな見てるし、仕事上でも必要で……」とかモゴモゴ言う羽目になる。まあ、無理ですよ(苦笑)。

(聞き手:波多野友子)

情報元リンク: ウートピ
キャリアと子育てのはざまで…“成長教”から降りきれない「ぼくたち」のリアル【レジー×稲田豊史】

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