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「人生という旅の景色を楽しめ」香港の人々を癒やした歴代1位ヒット映画、監督と出演女優に聞く

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今年1月17日の公開から、異例のロングラン上映を続けている香港映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』。現地・香港では、そんな『トワイライト・ウォリアーズ』を超える大ヒットを記録し、香港映画の歴代最高興行収入を更新した映画がある。まったくテイストの異なる葬儀業界が舞台の映画『ラストダンス』だ。なぜこの映画が、香港でこれほどヒットしたのか?監督の陳茂賀(アンセルム・チャン)さんは、「傷ついた香港の人々に前向きになる力を与えたのではないか」と語る。

息もつかせぬアクション、個性の際立ったキャラクターたちが織りなす熱い人間ドラマに魅せられ、何度も劇場に足を運ぶ人が続出した『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』。日本での好評を受けて監督・キャストがヒット御礼舞台挨拶のために急遽来日したり、そろって雑誌「an・an」の裏表紙に登場したりと、日本で公開された香港映画としては、いまだかつてない盛り上がりを見せた。

しかし、昨年の香港で、この『トワイライト・ウォリアーズ』を超える大ヒットを記録し、香港映画の歴代最高興行収入を更新した映画が、葬儀業界を舞台にした全く趣の異なる『ラストダンス』だ。

今年3月に開催された大阪アジアン映画祭にあわせて来日した本作の陳茂賀(アンセルム・チャン)監督は、ヒットの理由について、「コロナ禍を経て、世界中の人が心に傷を負いました。この映画は、傷ついた香港の人々に前向きになる力を与えたのではないか」と語る。

『ラスト・ダンス <ディレクターズカット>』

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ウェディングプランナーの魏道生は、コロナ禍の影響で経営が立ち行かなくなり、葬儀業界に転職する。そこで出会った郭文は、伝統的な香港の葬儀で儀式を執り行う道士。ビジネスモデルの変革を進めたい道生と、伝統を重んじる郭文。考え方の違いから何度も衝突する2人だが、道生はさまざまな背景を持った死者とその遺族らの人生に触れるうち、葬儀に対する考え方をあらためていく。
一方の郭文は、家業をめぐり、子供たちとの関係がギクシャクしていた。

この社会で生きるには“地獄”破りが必要

この作品は原題を『破・地獄』という。香港の葬儀で行われる道教の儀式のことだ。道教では、死者は死ぬと地獄に下る。そこで道士が地獄の門を破り、死者を救い出す。その儀式の動きがまるで踊っているようなので『ラストダンス』という英題がついている。

郭文には、家業を継がせる予定の息子がいるが、彼とその妻にとって本意ではない。もう1人、救急救命士として働く娘は幼い頃から父親の仕事に憧れを抱いて大きくなるが、郭文は「女は穢れたものであり、破・地獄を執り行うことはできない」という伝統に固執して彼女が継ぐことを認めない。そんな父に、娘は強い不満を抱いている。

陳監督は、「香港は多元的な所です。先進的な面もありますが、伝統的で時代遅れの価値観も数多く残っている」と語る。「私はコロナで身近な人を何人も亡くし、何度も葬儀に出席しました。その時に気づいたのは、香港の社会は進んでいるように見えて、まだまだ伝統的な価値観を内包しているということ。たとえば、葬儀の過程でも、『女性には生理があるから穢れている』などという理由で、女性がしてはいけないと言われている事がたくさんある。それが伝統になっているのです。でも、儀式は生者のために行うもの。女性が儀式を行ったからといって、死者が『お前のせいで魂が救われなかった』と怒りますか? とてもおかしな話だと思いました。ですから、この映画を撮ることで問題提起しようと思ったのです」

「女性はもっと自分を愛さなければいけない」

この映画の原題『破・地獄』は、儀式の名前である他にも、もう1つ、人間社会における地獄を破るという意味がある。そこには「女性たちにも地獄破りが必要」だというメッセージも含んでいると陳監督は言う。「女性たちも黙って伝統を受け入れるのではなく、彼女たち自身の中にもある伝統という問題に立ち向かわなくてはいけないと思います」

劇中、大切な同性パートナーを亡くし、その遺族に葬儀への参列を拒まれる女性が登場する。演じているのは、『白日之下』で香港のアカデミー賞と言われる香港金像奨の最優秀助演女優賞を獲得した実力派の梁雍婷(レイチェル・リョン)さんだ。

「この映画は、生者と死者をめぐる物語であり、同時に生まれ育った家庭の中で傷ついてきた人々の話でもある。実は、私自身も父からよく『女の子は○○してはいけない』と言われて育ちました。でも私は小さい頃から賢い祖母のもとで大きくなったため、祖母の考え方や人生をとおして、反抗心のある女性に育ったと思います。伝統を大切にする観念も分かります。年長者は、それを守り伝えていきたい。でも、伝統が女性にとって不公平なら、捨てるべきだと思うし、自由に、平等に生きられるように変えていくべきだと思います。『ラストダンス』に出演して感じたのは、女性として、私たちはもっと自分を愛さなければいけないということです」

(左から)梁雍婷さんと陳茂賀監督

「初めて『この映画を作ってくれてありがとう』と感謝された」

「世の中には、『さよなら』を言えずに大切な人と別れてしまった人が大勢いる。この映画は観る人に、『もし別れを言えなければ、あなたはどうする?』と問いかけます」とレイチェルさん。「私が演じた役は比較的幸運で、道生たちの計らいにより、葬儀場で愛する人にお別れを言えた。そのおかげで、しっかり生きていこうと思えるのです。この映画を見終わったあとには、観客も登場人物たちと同じく、自分を解き放つ気持ちになれると思います」

「人生は生まれた時からカウントダウンが始まる」「救われるべきは死者だけではなく、生者にもたくさんの地獄がある。生者にも“地獄破り”が必要」「この世に生まれただけで丸儲け。ならば人生という旅の景色を楽しめ」――など、『ラストダンス』には私たちの背中を押してくれるような金言がちりばめられている。

2020年に反政府的な活動を禁じる香港国家安全維持法(国安法)が施行されたあと、中国による統制は一層強化され、そこへさらにコロナ禍が追い打ちをかけた。この映画を観ると、コロナが香港の人々にどれほど大きな傷跡を残したのかが見て取れる。不安定な状況に長く身を置き、疲弊していた香港の観客の心に、“今を生きる”ことについて考えさせてくれる『ラストダンス』は沁みたのだろう。

「傷を癒やしたとまでは言えないまでも、傷口をなだらかにすることは出来たのかなと感じています。私は映画業界で20年以上働いてきましたが、初めて観客から『この映画を作ってくれてありがとう』と感謝されました」と陳監督は言う。

この映画で描いたように、生まれ育った家庭に問題がある場合、人生にもたらされる痛みを癒やすには一生かかるかもしれない。でも、この世に生を受けたからには、しっかり自分を表現して、人生を生きたいですよね。人生というのはカウントダウンです。この世界に生まれてくるかどうかを、私たちは選択できない。でも、生まれてきたからには、時間を無駄にはできません。この映画の最後に描いているのは、この世にやって来られるということ自体が容易ではないということ。誰のそばに生まれるのかも選べない。つまり、この世界が私たちを出会わせてくれたのです。全ての出会いは人生という旅の景色のようなもの。その美しさを大切にしたいですね」

すぐ隣の香港の変化を、映画を通して見てほしい

ブルース・リーやジャッキー・チェンが活躍していた時代から、日本には熱心な香港映画ファンが多い。1990年代にも『恋する惑星』などウォン・カーウァイ作品が火付け役となり、ミニシアター系映画ファンを中心に香港映画ブームが巻き起こった。そして今また、『トワイライト・ウォリアーズ』のヒットで日本でも再び注目されている。映画ゆかりの地を訪ね、香港を訪れる日本人も増えているという。

『トワイライト~』のように外連味があり、二次創作意欲をかき立てるようなキャラのたった登場人物が多い“沼る”エンターテインメント大作は簡単に生まれるものではない。筆者は、日本におけるこの香港映画のブームは1作限りではないかと予想しているのだが、できることなら続いて欲しいとも願っている。

TwilightWarriors場面写真

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エンターテインメント性の高い作品ばかりでなく、市井の人々の暮らしや社会を描いた良作も続々と生まれている。主人公が少年時代の苦しみに向き合っていく『年少日記』、民主化を求めた若者と香港警察当局の残虐性を映像に残したドキュメンタリー映画『灰になっても』など、今年に入ってからもさまざまな作品が日本で公開されている。大阪アジアン映画祭にも、聴覚障害のある若者たちの青春を描いた『私たちの話し方』、60代レズビアンカップルの死別とその後の相続等に関する問題を描いた『從今以後』(原題)など、多様な生き方を肯定する粒ぞろいの映画が集まっていた。『ラストダンス』の公開は公式に発表されていないが、日本で観られる日も遠くはないと期待している。

香港では30 代、40代にかつての“香港らしい香港”を懐古する風潮が強いという。『トワイライト・ウォリアーズ』がヒットしたのも、見応えのあるドラマやアクションはもちろん、今はない九龍城砦に観客がノスタルジーを覚えたからだと、筆者の香港人の友人が語っていた。映画の舞台になっている九龍城砦とは、中国返還前の1984年に取り壊された“無法地帯”。映画ではその中で暮らす人たちが築いていた香港の縮図のような社会が描かれる。

今、香港に行くと、往年の香港映画で見たような、雑然とした街並みやギラギラしたネオンサインは姿を消し、随分整然としていることに気づくと思う。民主化デモや国安法の施行などを機に、多くの人が英国などの外国に移住するなど、香港は大きく様変わりした。当時は日本でも、人権問題に関わるこれらのニュースが頻繁に報じられたが、今はウクライナや中東などでも紛争が勃発し、まるで忘れられたかのように私たちが“その後”を知る機会は減っている。

6月30日には、国安法の施行から約5年の節目を迎えた。日本のすぐ隣で、民主化のために闘った人々に何が起きて、これからどうなっていくのか。映画はその国や地域を知る入り口だ。決して他人事ではない民主主義の危機。映画への注目の延長線上に、香港の変化にも再び関心が向けられることを願っている。

※香港国家安全維持法(国安法)
中国が反政府的な活動を取り締まるために制定した法律。「国家分裂」「政権転覆」「テロ活動」「外国勢力と結託して国家安全に危害を加える」の四つを国家の安全を脅かす犯罪と定め、最高で終身刑を科す。これにより民主派の弾圧が進み、多くの逮捕者が出ている。

(映画ライター:新田理恵)

情報元リンク: ウートピ
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