一般社団法人渋谷未来デザインで事務局次長を務める長田新子(おさだ しんこ)さん。渋谷という街の未来とそこで夢を実現しようとする人をつなぐプロジェクト「渋谷未来デザイン」へ、まったくの異業種から飛び込んだ長田さんに、「流されてみるキャリア」について聞きました。
3回シリーズの最終回は、AT&T→ノキア→レッドブル→行政のプロジェクトという転身を通じて見えてきた、キャリアに対する「ものさし=判断基準」がテーマです。
【第1回】マーケ畑でレッドブルから渋谷区へ 「必要とされる方向」に流されてみた
【第2回】「何の会社?大丈夫?」と周囲に言われた転職 30代のキャリアチェンジ
また“素人”からの出発でも、人とつながれば大丈夫
——前回は、「自分が何かを与えられるようになりたい」という思いが生まれたとうかがいましたが、それがフィールドの異なる行政関係の仕事「渋谷未来デザイン」への転職につながったのでしょうか?
長田新子さん(以下、長田):レッドブルに転職して10年が経ち、そろそろ次のステップを考えはじめたときに、ひとつ思ったのが「もっと社会に貢献できる仕事がしたい」ということでした。そんなとき、偶然「渋谷未来デザイン」のお話を聞きました。
自分が行政関係の仕事をするなんて想像もしていませんでしたが、「イベントづくりのノウハウ」や「企業とのパートナーの組み方」、「マスコミとの上手なつきあい方」など、これまでの経験を活かして貢献できることがあるかもしれないと思いました。
——これまでの外資系企業での経験が背中を押してくれたんですね。
長田:とくに大きかったのが、どんな活動も「人とのつながり」、最終的には「人の役に立てるかどうか」が大切という、レッドブルでの学びでした。ただ、企業のマーケティング活動としてできることには限界がありました。どうしても会社のため、お金のためが目的になってしまう。
イベント開催にあたり、開催地域の行政や警察、住民の方々とも多くの議論を交わし、サポートしていただきましたが、金銭的な問題で実現できなかったことはたくさんあります。企業では、公平な視点というのは難しいと感じましていました。
——それを行政の立場でなら実現できるかもしれないと。
長田:「渋谷未来デザイン」は完全な行政ではなく渋谷区の外郭団体です。渋谷区と賛同企業の間で渋谷の未来を生み出すプロジェクトを産官学民と連携しながら実現していくという位置づけです。
新たな挑戦なので、覚えなくてはいけないことはたくさんあるし、これまでの経験が100%活かせるわけではありません。多くのイベントをつくってきたけれど、街づくりに関しては素人。でもイベントづくりも街づくりも、結局は「人」とのつながりです。これまでの経験と新たな学びのなかで、組織や人の連携をうまく回していける潤滑油になれればと思っています。
キャリアは縦に積み上げるのではなく、横に広げる
——現在、キャリアについてどうお考えですか?
長田:行政関係の仕事に転職したと話すと、「なぜ?」という反応がほとんどです。たしかに、これまでの経歴から考えると、転職するなら別の企業でCMO(最高マーケティング責任者)をするというのが一般的なキャリアの積み方なのかもしれません。
私はちょっと人とは違うのかもしれません。もっと違う視点で物事を見たいとか、学びが多いのはどっちだろうとか、さらには企業の人間ではなく、人としてどういうことをしたいのかとかについて大切に考えています。自分の意思で転職を考えるようになってからは、そんなことを基準に選択をするようになりました。だから、私にとっては「渋谷未来デザイン」を転職先に選んだのは自然な流れだったんです。
——やはり「経験」が大切だと。
長田:やりたいことを貫き通す、この道に進みたいという確固たるものがあったとしても、ひとつのことを積み上げるだけでなく、幅はあったほうがいいと思いませんか?
「キャリアは縦に積み上げるのではなく、横に広げる」、そのほうが人間的にも豊かになれる気がします。
(塚本佳子)
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情報元リンク: ウートピ
「キャリアの積み上げ、やめました」レッドブルCMOから渋谷区へ